体育会と文化会
体育会(たいいくかい)と文化会(ぶんかかい)はいずれも大学などにおいて課外活動を行う団体による連合組織である。体育会の場合、特に、その部員を体育会系という。
概説[編集]
体育会は運動部などが連合した大学内の団体であり、文化会は文化部などが連合した大学内の団体である。一般的に、文化会に比べて体育会の方が組織率が高い。
事業としては、加入する各団体やその構成者にとって相互扶助的な活動、各加入団体の多数で行うことが適切である行事の主催や行事への参加などが行われる。なお、このような事業を行う課外活動団体による連合組織を総称して、サークル自治会、クラブ自治会、部活自治会などということもある。さらに、より多くの権能を有する組織には、学友会という名称が使われることもある(なお、一般的に学友会という名称の組織は、活動が課外活動に限られていない)。
日本では、伝統的に体育会や文化会の名称を有するものが多いが、これらの名称以外を用いることもある(例えば東京大学では、他大学でいうところの運動部などの団体連合の名称は「運動会」である。他の大学では、「体育局」「文化局」と称するところもある)。また、この2つの組織は、課外活動を運動系と文化系の2つに分類する方法に準拠したものであるが、近年ではこのような分類によらない形態も多い。(例えば、音楽系部活動のみで連合団体を作るなどの例がある。筑波大学では、「文化系サークル連合会」「体育会」「芸術系サークル連合会」の三つに分類される)
現代では、このような体育会・文化会などの課外活動を対象とする自治組織は、学生自治会(学友会)の下部組織や、学生自治会(学友会)そのものを構成する組織として設けられていることが多い。また、学生数が少なく、比較的小規模な大学などでは、課外活動団体の活動分類ごとに団体連合を設けるという形態がとられず、体育会・文化会などの代わりに、統一して作られた団体連合が全課外活動団体について処理したり、学生自治会(学友会)の中央機関が直接に全課外活動団体について処理したりする。
歴史[編集]
第二次世界大戦前、日本の各学校では運動部の発達ともに、まず体育会が組織され、その後に文化会が組織されていった。現在でも文化会に比べて体育会の方が組織率が高いのは、このためである。
戦後は、学生自治会とともに課外活動を担い、元々が部活動を中心として組織されたものだったので、1980年代までは、部活動などの公益性の高い活動を中心として組織されてきた。1980年代から、学生の自治会離れ、課外活動離れを理由として、学生自治会と合わせて徐々に改革が行われた。近年では、活動の類型を運動系(体育系)と文化系に2分せず、各学校の実情に合わせた類型を設けるところも増えてきている。これに合わせて、加入対象となる団体の種類が広げられたところもあり、各人の人間関係を深めることを中心とするサークル団体なども加入しているところがある。
なお、以前は、このような課外活動に関する団体は、学生自治会と別個に組織され、組織的にまったく関係ないものも多かったが、最近では、学生自治会の一部であることや、そうでなくても学生自治会と密接な関係をもっていることが多い。
加入団体[編集]
各加入団体の自治権と団体連合の権限[編集]
体育会、文化会をはじめとする団体連合の組織については、各団体によって異なるが、課外活動を行う各団体が集結した分権型の組織であることは、どこも共通している。
加入する各団体は通例、自治権を有するが、その範囲については、各学校や各団体連合によって異なっている。一般的に、各加盟団体内の人事や日常活動については、各加盟団体が固有の権限を持っている。予算、行事参加、事業計画の策定については、それぞれについて各加盟団体が権限を有するときと団体連合が有するときがある。
団体連合と加入団体との間で、団体連合の力の権限が強いと行事などの大規模な事業が実施できるが、各加入団体の負担は多くなる。反対に加入団体の権限の方が強いとほとんど大規模な事業は実施できないが、各加入団体の負担は少なくなる。一般的に大会運営などの関係から、運動系(体育系)の団体連合は、団体連合側の権限が強く、文化系の団体連合は、加入団体側の権限が強いといわれている。
加入対象となる団体[編集]
加入対象となる団体種は、以前は、課外活動のうち公益性の高い部活動を行う部やそれに準じる同好会などの団体に限られていたが、近年は、人間関係の深化を重視するサークル団体も加入できることがある。
また、以前は、公益性を重視したことから、加入団体の中に活動が重複する団体があってはならないとされたところも多いが、1980年代以後は、活動が重複する団体があっても構わないとされるところが増えている。
このような対象となる団体種の増加や団体間の活動内容の重複を規制しないことは、課外活動を自由化して多くの学生の参加を促すものであるが、一方、これまでの活動が完全に同じようには保護されなくなるという側面もあり、伝統ある団体の減衰が課外活動の魅力を低下させるのではないかと心配する声もある。
階級・種別による区分制度[編集]
団体連合によっては、部・同好会・愛好会などの団体を種類や階級別に区分する制度が敷かれ、各団体種別・階級によって、各種の権限や責任、資金配分額などに違いがあることがある。一般的に区分制度は、各学校や校地から大会に参加できる団体数に制限があることから、体育会などに多く見られる。
区分制度は、伝統や実績のある優れた団体を保護したり、公益的な団体と互助的な団体双方の衝突を避ける意味がある。なお、自由な活動や団体設立を重視し、団体の区分制度がまったく敷かれない場合もあり、区分制度は、各学校の課外活動の実情に合わせて実施されている。
なお、各加入団体の階級昇格・階級降格・種別変更などがまったく行われないなど、適切な区分制度の運用が妨げられると、既存団体に対して意味なく閉鎖的に特権を与える構造となり、課外活動全体に支障が生じることもあるので、注意が必要である。
全体に関する組織[編集]
団体連合全体の活動に関する組織は、おおむね次のようになっている。なお、学生自治会の下部組織である場合は、学生自治会の議事機関・監査機関との関係により、議事機関・監査機関の一部または全てがない場合もある。
議事機関[編集]
- 総会
- 加入する部などの各課外活動団体の構成員(部員など)全員によって構成され、基本的な事項の承認、規約の改廃などを行う。総会の運営状況は、各学校、各団体によって大きく異なり、ほぼ全員が出席するものもあれば、ほとんどを委任状に頼っているものもある。総会を定期的に開かれるのが通例であるが、通常時は総会の開催が必要ない団体や総会そのものが存在しない団体もある。
- 加盟団体代表者会議(部長会、主将会など)
- 加入する部などの各課外活動団体の代表者(部長など)で構成されている。代表者会議が処理することは、各団体連合によって異なるが、予算や決算の議決、団体連合の役員の選出や承認、団体の加入・脱退・除名の決定、加盟団体の昇格・降格の決定などのうち総会が処理するものを除いたものを処理する。重要な権限を有する機関であるので、構成者に対しては、厳しく出席が求められるのが通例であるが、一部では形骸化し、ほとんどの意思決定を事務局に頼っているものもある。
執行機関[編集]
- 事務局(本部など)
- 主に加入する部などの各課外活動団体のから派遣された人員で構成され、団体連合や各加入団体共通の業務を行う。会長、副会長、会計などの役員がおかれ、役員の選び方としては、派遣された人員内での選出、代表者会議や総会による選出があるが、たいていは被派遣者同士で役員のおおまかな選考が行われることが多く、その後にほかの機関が決定または承認をするかは各団体連合によって異なる。
- 事務局は、日常的に活動を行うことが必要とされ、その業務の多さと業務に必要とされる知識から、団体連合において強い権限を持つことが多い。特に各加盟団体に資金を分配したり補助したりする場合においては、各加入団体の活動や実績を評価する必要があるので、ほとんどを事務局に依存することも多い。しかし、事務局によっては、各加入団体に対する評価業務を行わずに予算を作成している場合もあり、場合によっては、役員の所属する加入団体に多くの資金が提供されてしまうこともある。
- 各種委員会、各種会議
- 事務局内の組織で実施することが難しかったり、ふさわしくない業務を実施するための組織で、会計委員会・会計者会議、行事実行委員会・行事会議、選挙管理委員会、評価委員会・評価会議などがある。事務局の人員の兼任や、各加入団体からの改めて派遣される人員などによって構成されている。
- 従来は、補助的な執行組織であったが、近年は、各加入団体間で連携を取るために積極的に設けられることも増えている。しかし、団体連合に派遣する人員に余裕がない加入団体とっては大きな負担ともなったり、各加入団体間で足並みをそろえる必要があるなどの注意するべき点もある。
監査機関[編集]
- 監査委員会
- 会計などの監査を行うが、日常的な活動はまず行われず、事務局の一部門であったりすることも多い。その構成は、事務局の役員以外の人員や、加入団体の一部の代表者、各加入団体に所属する任意の人員など各団体連合によって大きく異なる。
体育会系の問題点[編集]
絶対服従の伝統[編集]
下級生は上級生に対して絶対服従の伝統があり、下級生は上級生のどんな理不尽な要求にも従わなければならないとされている。それは犯罪に関することについても同様である。また、大相撲の八百長問題でもこれの延長ではないかとされている。
飲酒問題[編集]
従来から、体育会系の多くの団体で、下級生に女性の前で全裸になることや、性器露出することを強要する伝統的な悪質な行事が行われており、下劣で品性が皆無であると一部メディアに批判されている。特に、昨今、京都大学アメフト部の集団強姦事件、亜細亜大学野球部集団痴漢事件、帝京大学アメフト部集団強姦事件、国士舘大学サッカー部未成年者暴行事件、中央大学アメフト部女子中学生集団強姦事件、日大アイスホッケー部レイプ事件、同志社大学ラグビー部集団わいせつ目的拉致事件などなど、表面化(報道されている)している事件だけでも、相当数の集団性犯罪、集団暴行事件、飲酒強要による死亡事件が続発している。品性や品格、そして性的羞恥心をないがしろにしてきた体育会系の欠点が如実に表面化しており(性的羞恥心の無い男は、性犯罪に対する女性の苦しみを理解できないことが原因だと指摘)、ブログなどで批判が沸き起こっている。中には、体育会系の品の無い「脱ぎ」の伝統を撲滅するため大学側に改善義務化すべきとの意見も散見される。その趣旨は、体育会系に支払われる部費の一部は、助成金であり税金が使われている以上、もはや大学内部だけの問題ではないという意見だ。さらには、体育会系が脱いでいる現場をみつけたら、写メで録画し、ネットで「性犯罪者」リストとして名前を公表し、公然わいせつで逮捕、実刑を科すように、広く訴えかけようという提案をする過激な意見もあり、今後、体育会系の品性を欠く体質がいかに改善されるかが注目される。