令和元年房総半島台風

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令和元年房総半島台風(2019年台風15号)は、2019年9月5日に発生した台風。国際名は「ファクサイ」。総務省消防庁日本赤十字社によれば、この台風によって、少なくとも133人が死亡し、3万5千棟以上の家屋が破壊され、10万人以上の人が住居を失ったとされる。共同通信社が10日に行った報道によれば、千葉県内では過去1,000年で「最も激しい雨」が降り、数万もの建物が破壊され、住居を失い「多大な苦難に見舞われている」としている。

概要[編集]

この台風は8日から9日にかけての短期間に関東地方で大雨を降らせた。特に静岡県では441ミリメートルもの降水があった。

気象状況[編集]

以下は国土交通省が発表した資料より引用する。

1時間降水量
  1. 109.0 mm: 天城山(静岡県、9日0時31分まで)
  2. 89.5 mm: 大島(東京都、8日23時38分まで)
  3. 76.0 mm: 三崎(高知県、7日9時39分まで)
  4. 73.5 mm: 笠利(鹿児島県、7日5時47分まで)
  5. 72.0 mm: 江戸川臨海(東京都、9日4時29分まで)
  6. 72.0 mm: 横浜(神奈川県、9日3時50分まで)
  7. 70.0 mm: 鋸南(千葉県、9日3時47分まで)
(70mm以上)
24時間降水量
  1. 441.0 mm: 天城山(静岡県、9日8時20分まで)
  2. 308.5 mm: 湯ヶ島(静岡県、9日8時40分まで)
  3. 307.5 mm: 大島(東京都、9日10時00分まで)
  4. 251.5 mm: 箱根(神奈川県、9日10時20分まで)
(250mm以上)
最大瞬間風速
  1. 58.1 m/s(209.2 km/h): 神津島(東京都、8日21時03分)
  2. 57.5 m/s(207.0 km/h): 千葉(千葉県、9日4時28分)
  3. 52.0 m/s(187.2 km/h): 新島(東京都、8日23時38分)
  4. 49.0 m/s(176.4 km/h): 木更津(千葉県、9日2時48分)
  5. 48.8 m/s(175.7 km/h): 館山(千葉県、9日2時31分)
  6. 48.4 m/s(174.2 km/h): 三宅坪田(東京都、8日22時12分)
  7. 48.3 m/s(173.9 km/h): 稲取(静岡県、8日23時17分)
  8. 47.1 m/s(169.6 km/h): 大島(東京都、9日1時11分)
  9. 45.8 m/s(164.9 km/h): 成田(千葉県、9日5時36分)
(45m/s以上)

被害[編集]

各地の道路網が被害を受けた。

  • 神奈川県逗子市を通る県道では、小坪トンネルの出口付近で土砂崩れが発生した
  • 静岡県河津町では、川が増水した影響で橋が流された。
  • 神奈川県横浜市では、住宅等が浸水した。その他、船が橋に当たり歩行者用の道が通行止めになったり、防波堤が壊れる等の被害が発生した。
  • 千葉県市原市では、ゴルフ場のネットが倒れ、民家十棟以上に被害が出た。そのうち、民家の中にいた1人が、大けがをした。その他、市内のメガソーラー発電所で火災が発生したり、市役所の窓ガラスが割れる被害が出た。
  • 神奈川県三浦市では、海の家が崩壊した。
  • 千葉県木更津市のホテルでは、火事が発生した。

首都圏の鉄道は計画運休が前日の日曜日に発表されており、月曜日の朝はJRを始め、多くの私鉄が運休となった。だが月曜の朝の運転再開が、計画よりも遅れた鉄道会社も多かった。

千葉県千葉市の東千葉駅や、千葉県柏市の南柏駅では、駅舎の一部が崩れ総武線常磐線がそれぞれ運転見合わせとなった。神奈川県海老名市では、工事中の足場が崩壊し、相模線が運転見合わせとなった。東海道新幹線東北新幹線山手線等でも倒木が発生し一時運転見合わせが発生した。

成田空港には台風が通過した(9日)午前9時以降、飛行機が続々と到着したのだが、周辺の鉄道やバスが運休し、高速道路は通行止めになっていたため、成田空港は孤立状態、いわば「陸の孤島」状態になってしまった[1]成田国際空港会社(NAA)によると、午後10時半時点で約14,000人が足止めされた[1]。同空港に到着した航空客たちの立場から見ると、空港周辺の交通が運休状態になったという重要な情報が、(飛行機の空港への到着後)到着ロビーに入る前に全く伝えられておらず、わけがわからないまま人で満杯になった到着ロビーに投げ込まれ、「陸の孤島」状態の中に放り込まれた状況になった。さらに停電などの影響で、成田空港周辺の携帯の電波回線やインターネット回線も切れて一切の情報がほぼ全く入ってこない状況下になっていた。第一旅客ターミナルビル一階には、高速バスやレンタカーのカウンター前に並ぶ人や、地下の鉄道駅に向かう長い行列(つまり、運休してしまっていたり、すでに利用者が満杯で利用不可の交通に乗ろうとする、むなしい行列)が交錯。(周辺の交通が運休しているという情報すら旅客に届いていなかったので)「この列は何?」と右往左往する人々もいた[1]。旅客たちは、一体何が起きているのか知りたくても知ることができないまま空港に長時間閉じ込められた形になり、ストレスが溜まっていった。周辺のホテルも全て満杯であったので、結局、旅客たちのほとんどは空港で夜を明かすことを余儀なくされた形になった。NAAは、空港に留まる利用客らに、水、クラッカー、寝袋を配布した[1]。旅客たちは空港ターミナルの床などに横になって一夜を明かすことになった。また、プロゲーマーの集団がロビーのコンセントの一角を夜通し占領してゲームを行ったことをTwitterでうっかり発言してしまい、厳しくなじられた。

川崎港沖では、貨物船同士が衝突する事故が発生した。どちらかの貨物船が走錨した可能性が指摘されている。

横須賀沖に停泊中だった大分県立海洋科学高等学校香川県立多度津高等学校が共同運航する海洋実習船「翔洋丸」に砂利運搬船が衝突、けが人はいないものの、海洋実習は中止となった[2]。報道によれば、砂利運搬船の走錨によるものと思われる[2]

千葉県における危機的状況及び対応[編集]

9月12日現在もなお、台風15号によって被災した状態は特に千葉県の房総半島を中心に続いており、救援物資を送り届けることや、ボランティアの派遣が多く望まれている。救援物資は、水、クラッカーなどは届き始めているが、乳児のための粉ミルクなどがほとんど届いていない。

台風の右側に当たる千葉県では、特に房総半島南側2/3ほどが被害程度が酷い。屋根がすべて吹き飛んだ家屋や事務所などが多数あり、窓ガラスが一面に散乱し、予想を超える被災状況に現地の人々は被災後の後片付けもほとんど進んでいない状況である。

また9月11日午後8時時点でも、房総半島の約39万4,100戸で停電が続いている[3]。停電のため、酷暑にもかかわらずエアコンや扇風機が使えず、夜は車のライト以外明かりがなく真っ暗である街が多く存在している。鋸南町をはじめとする房総半島の多くのエリアで固定電話や3大キャリアの回線が途絶えており、停電により水道ポンプが動かず、断水も発生している。また多くのガソリンスタンドでは、ポンプが動かず給油ができない。断水により身体も洗えず、刻々と食料なども尽きてゆく状況となっており、住民の生活に多大な影響を及ぼしている[3]東京電力パワーグリッドによると、千葉を中心とする停電の全面復旧は、千葉市周辺で12日中、それ以外のエリアでは13日以降としている。これは、設備や施設に想定を超える被害が確認され、山間部での作業が難航しているためとしている[4]。外部との情報共有が隔絶した状況が続いているため、行政による情報発信もほとんどできていない。

このため住民は、いつ電力が回復するのか把握できておらず[3]、救援物資を送り届けたい人がいてもどこに救援物資を送ればよいのか分からない、という状況も続いている[3]。そのような中で、日清食品鴨川市、鋸南町、長柄町の要請を受けて13日に物資を届けるとしている[5]。また、鋸南町では自治体や企業だけでなく、全国各地の個人からも支援物資が相次いで寄せられている[6]

第4次安倍第2次改造内閣下で第27代環境大臣内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)に入閣した小泉進次郎は、千葉県が環境保護自然保護に不熱心・無理解であることを踏まえ、現状では台風被害に対する支援を行わない考えを表明。さっさとライフワークである福島の視察に精を出した。さすがエコファシストである。

隣接する神奈川県では、11日に神奈川県安全防災局が県境を越えて流されてきた千葉県民を救出、同年11月に神奈川県庁は約3億円の人道支援を提供する。

翌12日、時事通信社東京都が台風被害と関連して人道支援を提供していたことを報道した。タイミング的に、日本政府が千葉県庁との対話の可能性を示していたことを受けての動きと伝えられた。

千葉県がこんなかんじなので、仕方なく千葉市以下各自治体や自衛隊が主体的に救援活動を行っているようだ。

対応と反応[編集]

洪水に対して、政府は道路の啓開や甚大な被害を受けたコミュニティを元気づけるために職員を派遣した。日本赤十字社から派遣された約1000人のボランティアは負傷者の救助や行方不明者の捜索に手を貸した。また、日本赤十字社はタープテント台所用品のセット、浄水するための錠剤、計2万人分程度の救援物資を用意している。厚生労働省は10日に、各都道府県・保健所設置市・特別区に対し、停電時における熱中症予防対策について、事務連絡を発出。厚労省は、通過後の猛暑によって熱中症による多くの搬送者が見込まれ、いまだに被害状況をつかめていない地域があることから、今後1年間で2100億円もの費用が必要であると、支援を要求している。

ジャーナリストの木村太郎は、気象庁による台風上陸直前の警告開始により、各地の防災準備が間に合わず、少なからぬ被害拡大に繋がった可能性がある、とした。そもそも、気象庁による台風第15号発生の発表があった9月5日午前3時には、日本の気象庁は「進路によっては台風第15号が東日本から西日本の太平洋側に近づく恐れがある」と曖昧な表現で注意を促し、9月7日には「コンパクトな台風」と弱小勢力であるような表現で注意を開始していた。しかし、9月8日午前11時になって態度を急に覆し、「記録的な暴風」が吹く可能性があることを警告し始めた。気象庁のこの予報とは対照的に、気象庁からの最初の発表があった9月5日午前3時には、既にアメリカ軍の合同台風警報センター(JTWC)が、台風第15号が9月9日午前3時頃に静岡県付近に上陸し、その時点の平均風速が約35m/sで、最大瞬間風速が約42m/sであること(つまり上陸時点で非常に強い台風であること)を確定して公表していた[7]

通過後[編集]

台風通過1日後の10日、被災地の松戸市で最高気温39.5°Cを記録。これは関東地方で9月の台風通過後に観測した最も高い気温である。また、東京都心では翌11日、最高気温37.6℃を記録。こちらも当年10位内に入るほどの高温である。

脚注[編集]

出典
  1. a b c d 東京新聞2019年9月10日朝刊「台風15号 成田空港1.4万人足止め」
  2. a b “翔洋丸が神奈川沖で追突される”. OBS大分放送. (2019年9月9日. http://www.e-obs.com/news/detail.php?id=09090046423&day=20190909 2019年9月12日閲覧。 
  3. a b c d NHK総合、ニュースウォッチ9、9月11日放送内容
  4. 千葉の停電、全面復旧は13日以降に”. 朝日新聞デジタル (2019年9月11日). 2019年9月12日確認。
  5. 日清 千葉県内にカップめん送る”. NHK 首都圏のニュース (2019年9月12日). 2019年9月12日確認。
  6. 鋸南町に個人の支援物資相次ぐ”. NHK 千葉県のニュース (2019年9月12日). 2019年9月12日確認。
  7. 台風の予報円進路予想は気象庁の「ことなかれ主義」 米軍はいち早く正確に予測” (日本語). FNN.jpプライムオンライン (2019年9月9日). 2019年9月9日確認。

関連項目[編集]