井出洋

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井出 洋(いで ひろし、1923年 - 1998年[1])は、ジャーナリスト[2]、平和運動家[3]。元・日本共産党中央委員会国際委員会委員。妻は翻訳家の井出弘子[4]

経歴[編集]

東京都立第一中学校[5]旧制第一高等学校を経て[6]東京大学経済学部経済学科卒業[7]。同期に渡辺洋三(法学者)、石島泰(弁護士)、岡垣勲(裁判官)、香川保一(裁判官)などがいる[6]。戦後いち早く日本共産党に入党し、学生運動を始めた[8]。敗戦直後の東大の学生運動の中心にいた[4]。1945年10月に東大学生社会科学研究会(学生社研)を薄信一(経営学者)、邱炳南(邱永漢、作家)らと設立した[9]。学友会組織「経友会」幹事を務め、矢内原忠雄教授ら自由主義者の追放を主張した[10]

大河内一男教授のもとで労働組合論を学び、大学卒業と同時に産別会議の書記となった。政策作りやオルグ活動をしたり[11]斎藤一郎大谷徹太郎三戸信人らとともに産別会議の幹事会や執行委員会が発表する声明書や運動方針書の原案を執筆したりした[12]。産別会議と共産党の間で対立が起き、1947年12月に党政治局が細谷松太の産別会議書記辞任を決定すると、政治局の決定に賛成した[13]。政治局の決定に賛成しなかったため事務局細胞のキャップを解任され、1948年2月に党を出た三戸信人に替わり、事務局細胞のキャップとなった[12]。その後、プラハ世界労連事務局に移り、1961年末まで勤務した[14][15]

世界労連日本出版協会常任理事[7]日本平和委員会常任理事[16][17]日本原水協国際部員[18][17]日本AA連帯委員会常任理事[18][17][19]、日本共産党中央委員会国際部副部長[20]、『世界政治資料』編集長[21]赤旗外信部長[22][23]ジャパン・プレス・サービス社長、非核の政府を求める会常任世話人などを歴任[1]。1987年時点で日本共産党中央委員会国際委員会委員、日本平和委員会常任理事、世界平和評議会会員[15]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『核軍縮交渉史』(新日本出版社、1987年)
  • 『外国映画を読む』(シネ・フロント社[シネ・フロント新書]、1988年)

共編著[編集]

  • 『講座現代日本とマルクス主義 第3巻 労働組合運動』(辻岡靖仁、塩田庄兵衛、向笠良一、大木一訓、黒川俊雄共著、青木書店、1966年)
  • 『核言集』(塩田庄兵衛、安斎育郎共編著、大月書店、1989年)
  • 『労働運動に未来はある』(木下武男高橋祐吉共著、大月書店、1994年)

訳書[編集]

  • W.Z. フォスター『世界労働組合運動史 下』(塩田庄兵衛、佐野健治共訳、大月書店、1957年)
  • フランス労働総同盟『ドゴール体制下の労働運動と五月ゼネスト――国家独占資本主義下の政治闘争と経済闘争』(中林賢二郎、小森良夫、坂本満枝共編訳、労働旬報社、1969年)

出典[編集]

  1. a b 『しんぶん赤旗縮刷版 1998年10月』(第38巻第10号 通巻第454号)
  2. 日外アソシエーツ編『現代日本人名録 上』日外アソシエーツ、1987年
  3. 岩井忠正、岩井忠熊『特攻――自殺兵器となった学徒兵兄弟の証言』新日本出版社、2002年
  4. a b 真船和夫『戦後理科教育研究運動史――科教協の軌跡』新生出版、1979年
  5. 植村甲午郎伝記編集室編集『人間植村甲午郎――戦後経済発展の軌跡』サンケイ出版、1979年
  6. a b 渡辺洋三「わが研究生活をふりかえる」『社會科學研究』第33巻第5号、1981年12月
  7. a b 荒瀬豊ほか『岩波講座現代 11 現代の民衆』岩波書店、1964年
  8. 山口啓二「戦争に体張ってたたかいぬいた党」『前衛』第816号、2007年4月
  9. 大河内演習同窓会編『戦前戦後――大河内演習の二十五年』東京大学出版会、1979年
  10. 大林宣彦『ぼくの青春映画物語』集英社新書、2000年
  11. 法政大学大原社会問題研究所編『証言産別会議の誕生』総合労働研究所、1996年
  12. a b 三戸信人「産別民同がめざしたもの(2)三戸信人氏に聞く」『大原社会問題研究所雑誌』第490号、1999年9月
  13. 三戸信人「証言:日本の社会運動 産別民同がめざしたもの(3・完)三戸信人氏に聞く」『大原社会問題研究所雑誌』第492号、1999年11月
  14. 松尾洋、佐藤茂久次「証言:日本の社会運動 『労働戦線』の創刊と編集事情(2)松尾洋・佐藤茂久次氏に聞く」『大原社会問題研究所雑誌』No.515、2001年10月
  15. a b 井出洋『核軍縮交渉史』新日本出版社、1987年
  16. 井出洋「ハバナからジュネーブまで--国際民主運動の最近の諸問題」『労働運動史研究』第45号、1966年10月
  17. a b c 極東事情研究会編『70年代にのぞむ左翼団体』極東出版社、1970年
  18. a b 『内外情勢の回顧と展望』公安調査庁、1969年
  19. 碓田のぼる「遥かなる信濃--ナイル河(14)」『民主文学』第517号、2008年11月
  20. 『日本共産党決議決定集 21 (1969年7月-1970年2月)』日本共産党中央委員会出版局、1970年
  21. 中島正郎ほか『議員ハンドブック』ぎょうせい、1974年
  22. 飯塚繁太郎『評伝 宮本顕治』国際商業出版、1976年
  23. 内藤功『国会からの証言――憲法の今日的課題』白石書店、1980年

関連文献[編集]

  • 氏原正治郎編者代表『薄信一 人と憶い出』(東京大学出版会、1969年)
  • 碓井正久編『講座・現代社会教育 2 日本社会教育発達史』(亜紀書房、1980年)
  • 大河内演習同窓会編『わが師大河内一男』(大河内演習同窓会、1986年)
  • 河内光治『戦後帝大新聞の歴史』(不二出版、1988年)
  • 渡辺洋三『社会と法の戦後史』(青木書店、2001年)