乳児用液体ミルク
乳児用液体ミルク(にゅうじようえきたいミルク)とは、乳児専用の液体のミルクのことである。海外では広く普及しているが、日本では法律が未整備であることが要因となって流通していなかった。しかし、平成28年(2016年)4月14日の熊本地震の際、フィンランドからの援助物資として送られてきた乳児用液体ミルクが一気に注目を集めることになり、平成30年(2018年)3月に江崎グリコが日本で初めて販売を開始した。略称は液体ミルク。英語ではBaby Liquid Formulaと表記される[1][2][3]。
概要[編集]
液体ミルクのメリット[4][5][編集]
- 常温で長期間の保存が可能(未開封に限る)。
- 調乳の手間がかからない。
- 外出時においてもお湯と粉ミルクを別に携行する必要がなく、液体ミルクと哺乳瓶を携行すれば済む。
- 調乳したことがない人でも簡単に授乳することができる。
- 災害時にライフラインが断絶した場合でも常温で保管でき、調乳に必要な水や温めるための燃料を必要としない。
液体ミルクのデメリット[4][5][編集]
- 粉ミルクと比べて割高(3~4倍ほど)な価格。
- 粉ミルクと比べて銘柄が少ない(1メーカー1商品のような展開がされている)。
- 粉ミルクに比べて賞味期限が短い(それでも半年ほど持つ)。
- 調乳されたミルクや母乳と比べて温度が低い常温であるため、乳児によっては飲みたがらない場合もある。
- 液体ミルクの場合、量の調整ができないため無駄が出やすい(残った開封済みミルクは破棄しなければならない)。
- 粉ミルクと比べてより大きな保管スペースを確保する必要があるほか、液体ミルクの使用のたびに空き容器がごみとなる。
日本における動きと広がり[編集]
前述しているように、この液体ミルクは熊本地震をきっかけとして注目を集めるようになった。平成30年(2018年)8月8日、厚生労働省において「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」及び「食品、添加物等の規格基準」を消費者庁において「健康増進法施行令」及び「特別用途食品の表示許可等について」を改正・施行したことで、事業者がこれらの基準に適合していれば乳児用液体ミルクを国内で製造・販売することが可能となった。さらに平成30年(2018年)の西日本豪雨でも液体ミルクが普及されたことにより、また注目を集め、東京都の小池百合子知事が、「災害時にも使える乳児用液体ミルクの普及を図る」ことを公約の1つとして挙げている[6]。
日本では令和年間に入り、地震や台風など災害が相次ぎ、それによりライフラインの途絶が相次いで復旧にも時間がかかっている。その救世主として液体ミルクが注目を集めている。日本では令和4年(2022年)2月時点では3社が市場参入しており、2026年度の国内乳児用液体ミルク市場は16億円となる見込みであるとされる[7]。
海外における液体ミルク[編集]
海外では日本以上に液体ミルクが普及しており、粉ミルクと液体ミルクの販売量をみると、欧州では液体ミルクが3割を上回り、フィンランドでは液体ミルクの使用量が圧倒的に多い。スイスや英国で子育てをする知人にヒアリングしたところ、欧州のスーパーやドラッグストアでは液体ミルクが棚に並んでいるのが一般的であるとされ、価格帯はミネラルウォーターや清涼飲料水と同等で、複数のネットスーパーで取り扱いがある。ドイツでは出産病院では液体ミルクのみが用意されており、液体ミルクを温めて新生児に与えていたとされる[8]。