AI術師
AI絵師(エーアイえし、別名:AI術師、AIイラストレーター)とは、人工知能アート(AIイラスト)を描く(出力する)人のことである。
概要[編集]
AI絵師という名称は期限こそ不明であるものの、NovelAIのサービス開始時2022年10月ごろから増え、同年10月6日には「AI絵師」という言葉がTwitterでトレンド入りを果たした[1]。また、同年11月にはSNS流行語大賞2022にノミネートされた30語にも入った[2]。
AI術師は、AIイラストを出力しTwitterやpixivにその画像を投稿する人自身が"AI絵師"の代わりに使う名称である[3][4][5]'。なお、AIイラストを批判する人や個人のまとめサイトではAI絵師と呼ばれていることがほとんどである[6][7][8][注 1]。AI術師という名称の起源も不明だが、少なくともTwitterでは2022年10月上旬には使われ始めていた。
「絵師」という定義について[編集]
AIでイラストを「描く」のか「出力する」のかについては議論の的となっている。
邪神ちゃんドロップキックの作者として知られる、ユキヲは「AIイラスト」について
「AIを使ってイラストを「描いてる」ってのはちょっと違うよなー。「出力してる」とかになるんじゃないのかな。」[9]
とTwitterで述べており、では大きな議論となった[10]。そのあと、ユキヲは「あれですね。AIの技術を認めてるか認めてないかはあまり関係なく「描いた」という表現に違和感を感じるという意見が気に食わないってことなのか…気に食わなかったのなら申し訳ない。」と上記の8時間後に謝罪ツイートしている[11]。
AIイラストを「出力する」という意見に賛成の人の返信ツイート
「AI絵師を自称してる連中は絵師でもなんでもないんだよ、奴らはAIに絵を発注して『描いてもらってる』クライアント側の人間なんだってば」
「そのAIはちゃんと『描いてきた』絵師のおかげで機能してんだわ」
「絵描きではなく製造ですよね」
AIイラストを「描く」という意見に賛成の人の返信ツイート
「彼等からしたらアレは『私の絵』だから描いてるって言っちゃいのも分かる気します」
「自分としては心で描いてます」
「まーだ『描いてない』とか言われなきゃいけないんですか」
そもそも、絵師の定義が曖昧という意見もある。「絵師」は本来、浮世絵の下絵である原画を描く職業のことを指していた。そして、ライトノベルの挿絵、ゲームのイラストを書く人は元々、「イラストレーター」と呼ばれていた。
しかし、インターネットやアニメ、ゲームの普及により、「イラストレーター」と呼ばれる人の中で、アニメや漫画・ゲーム風のキャラクターを描く人を特に「絵師」と呼ばれることが多くなった[12]。しかし、その「絵師」と呼ばれる呼ばれないの明確な定義及び、何故、「イラストレーター」が「絵師」と呼ばれるようになった詳細な起源は不明である。
そのため、「AI絵師」という呼び方が適切か適切ではないか以前の問題となっている。
AIイラストにおける著作権の議論[編集]
AIと著作権の議論は、開発(学習)と出力物の利用がごっちゃになりがちという意見もある[13]。
JDLA有識者委員、日本データベース学会理事の弁護士の柿沼太一は以下の様に議論した方がいいと述べている。
(1)Aの著作物XがAIの学習に使われているが、著作物Xと同一・類似した著作物は誰も生成・利用していない
(2)Aの著作物XがAIの学習に使われているが、Bがそれを知らずに当該著作物と同一・類似した著作物Yを生成・利用した
(3)Aの著作物Xについて、Bがi2i[注 2]で類似著作物Yを作成・利用した
(4)Aの著作物Xは学習にもi2iにも利用されていないが、BがXと類似している著作物を作成する意図で著作物Yを作成・利用している。
(3)と(4)は普通に著作権侵害になる。
一方で、(2)は著作権法30条の4に違反しない。柿沼はこれに対して、依拠性の有無、著作権侵害に該当するかどうかを司法判断を積み重ねつつ、法律を見直しするべきである。
「危険性」があるというだけでAIを規制するのは行き過ぎであり(技術と文化の発展にマイナスを与えかねない)、(2)は実際に類似著作物が出力・利用されているのに対し、(1)は出力・利用はされていなく、利益状況が異なる。
そのため、AI反対派からの「(2)のケースがあるので(1)のケースに対しても規制すべき」という論調は「AIイラストの全面的な規制」の理由にならない。
AIイラストに対する反応等[編集]
とTwitterで述べている。これは、AI画像生成において、荻poteの画風データ[注 4]を学習させたモデルを使い、荻poteと同じ画風のAIイラストを生成してpixiv等のサイトに公開される行為が後を絶たないことに対するツイートである。
また、そのツイートに対して、一人の「AI絵師」を自称する人が(pixivFANBOXにおける明細の画面と共に)「何がとは言わないですがおかげで4月はかなり儲かりました いい餌提供してくれてありがとうございます!!」「絵柄に権利はありませんよw」といった煽りとも見て取れる返信ツイート(リプライ)をした(そのリプライは現存しない)[15]ことにより、Twitterを始めとするSNSでは論争が起こった[注 5]。これを受けて、pixivでは2023年5月2日にサービス共通利用規約・ガイドライン類改定の事前のお知らせを告知し、作品制作過程に関わらず、
・運営者、他のユーザー、その他の第三者になりすます行為、またはそのように誤認されるおそれがあると当社が判断する行為
・特定のクリエイターの画風・作風を模倣した作品発表を、反復・継続して行うことで、当該のクリエイターの利益を不当に害すると当社が判断する行為
・特定のクリエイターの画風・作風を模倣した作品発表を幇助するツール等を配布・販売することで、当該のクリエイターの利益を不当に害すると当社が判断する行為
さらに、pixivからランキング上位の絵をスクレイピング、そこから、絵柄を無断で使用し、量産するといったAI絵師によるツイートが炎上した(正確にはそのツイートに関して、pixivへの投稿を控えるようにと呼びかけたツイートが大きな反響を受けた。なお、どちらのツイートも現存しない)[18]。このツイートが反響を受けてから、イラストレーターのpixivにおける作品の非公開・削除が相次いだ[19][20][21][22]。なお、これに関して「pixivが(スクレイピングの)対応を全くしていない」と言う主のツイートが多くなされたが、pixivはスクレイピングを禁止にしており、過去にも該当ユーザーのアカウント削除をした[23]。
pixivは「pixivではこの先、創作過程におけるAI技術の利用がより普及していくと捉えており、AIが関与した成果物の完全な排斥は考えておりません」とAI生成作品の投稿自体は認めており、2022年10月31日には「事前にAI生成作品と設定する機能」「AI生成作品のみのランキングの提供」「検索時におけるAI生成作品をフィルタリングする機能」を実装した。
しかし、同社が運営する、pixivFANBOXでは2023年5月10日に、AI生成作品の投稿を当面の間禁止とした。
理由としては、現在の『FANBOX』では、生成AI技術により短期間で大量に作成されたコンテンツを販売することのみを目的に利用されることが多く、今後もその傾向はより強まっていくと感じており、「それは本来私たちが目指していたサービスの姿とは異なる」と述べており。AI生成作品を用いた投稿への警告や非公開化、アカウントの停止を行う意向を示した[24]。
pixivFANBOXに続き、とらのあなが運営するFantia、株式会社エイシスが運営するDLsite、Ci-enに関しても、「対策やガイドライン・ポリシーの整備が追い付いていないこと」「既存のクリエイター(イラストレーター)への影響を考慮するため」を理由とし、AI作品の取り扱いを一時停止にした[25][26][27]。
TINAMIは「AIイラストを編集せずにそのまま作品にしたもの」と「AIイラストを僅かな編集のみをして作品にしたもの」「画像生成AIの利用を記述していないもの」の投稿を禁止にした[28]。
ART streetでは、AI生成作品の投稿は投稿禁止にしないとする一方で、ランキングやコンテストに関しては考慮の対象にし、また、AI生成作品が増加した場合に備えて、AI生成作品の除外オプションを用意するなどの対応を検討中としている[29]。
27人(2023年5月19日時点)で構成された団体「クリエイターとAIの未来を考える会」[30]は2023年4月27日に記者会見を行い[31]、画像生成AIの適切な使用や法整備などを求める提言を発表した。
しかし、代表の木目百二理事がpixivFANBOXに芳文社が規約により禁止していたぼっち・ざ・ろっくの成人向けの二次創作作品を投稿していたことにより大きな批判を受けた。木目百二は、この件について後日謝罪をした[32]。
上記の件とは直接的な関係はないが、二次創作について、GANTZの作者、奥浩哉は
と述べている[33]。
関連項目[編集]
- 開拓者 (ウィキ利用者)...AIイラストをよく書いていることで知られる。
- Pixiv百科事典
参考文献[編集]
- ↑ “【One Tech #05】画像生成AI元年である2022年を振り返ってみよう! ー「画像生成AI」流行のきっかけから「AI絵師」が誕生するまでー”. 内海志織.Softbank. 2023年5月2日確認。
- ↑ “SNS流行語大賞に「AI絵師」「ひろゆきメーカー」ノミネート 11月下旬に発表”. ITmedia. 2023年5月2日確認。
- ↑ “プロフィール/たんま@AI術師初心者Wiki”. Twitter. 2023年5月2日確認。
- ↑ “AI術師の心得(モラル)”. note.有明月アリア. 2023年5月2日確認。
- ↑ “AI術師として初めに仕事や収益を得るには?”. ちちぷい. 2023年5月2日確認。
- ↑ “AI絵師(えーあいえし)”. numan. 2023年5月2日確認。
- ↑ “AI作画とアナログ作画の融合漫画『僕の彼女はAI作画』はどのようにして作られた? 作者に聞く「AIから発想の刺激を受ける」適切な距離感”. 望月悠木.リアルサウンド. 2023年5月2日確認。
- ↑ “ai絵師”. ついラン. 2023年5月2日確認。
- ↑ “ツイート.2023-4-18”. ユキヲ@邪神ちゃん連載中.Twitter. 2023年5月2日確認。
- ↑ “AI絵師はイラストを「描いてる」「出力してる」?漫画家・ユキヲ先生が自論を展開&謝罪まで…”. にじめん. 2023年5月2日確認。
- ↑ “ツイート.2023-4-18”. ユキヲ@邪神ちゃん連載中.Twitter. 2023年5月2日確認。
- ↑ “絵師になるには?仕事内容や必要な資格、年収など|TECH.C 札幌デザイン&テクノロジー専門学校|札幌デザイン&テクノロジー専門学校(テック札幌)”. www.sba.ac.jp. 2023年5月2日確認。
- ↑ “https://twitter.com/tka0120/status/1651751690612404224” (日本語). Twitter. 2023年5月2日確認。
- ↑ “https://twitter.com/ogipote/status/1652896337342636032” (日本語). Twitter. 2023年5月2日確認。
- ↑ “https://twitter.com/SlashandBurn41/status/1653048330744905732” (日本語). Twitter. 2023年5月2日確認。
- ↑ “https://twitter.com/pixiv/status/1653327688554147841” (日本語). Twitter. 2023年5月2日確認。
- ↑ “サービス共通利用規約・ガイドライン類改定の事前のお知らせ” (日本語). pixiv. 2023年5月2日確認。
- ↑ “【大炎上】絵師のpixivイラスト非公開&削除祭が話題に!Pixiv掲載作品を画像生成AI学習に勝手に使用されている!と大問題に発展!著作権は?法律改正は?「スクレイピング対応しろや!」” (日本語). 超絶"厳選"ニュースまとめch (2023年5月7日). 2023年5月19日確認。
- ↑ “https://twitter.com/kuroe16370547/status/1654711925471854593?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1654711925471854593%7Ctwgr%5Ebbb0892a106b7f36dfd27a0a996c601af1a51874%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https://www.menuguildsystem.com/pixiv-ai-illustration-scraping/” (日本語). Twitter. 2023年5月19日確認。
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- ↑ “AI対策が取られていないとして、有名絵師がpixivの作品を一斉に非公開に | スラド” (日本語). srad.jp (2023年5月10日). 2023年5月19日確認。
- ↑ “https://twitter.com/pixiv/status/789276601?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E789276601%7Ctwgr%5Ebbb0892a106b7f36dfd27a0a996c601af1a51874%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https://www.menuguildsystem.com/pixiv-ai-illustration-scraping/” (日本語). Twitter. 2023年5月19日確認。
- ↑ “「AI生成作品の取り扱いを禁止」pixivが『FANBOX』でAIを使った支援募集を停止すると発表(篠原修司) - 個人” (日本語). Yahoo!ニュース. 2023年5月19日確認。
- ↑ “AI作品の取り扱い一時停止について” (日本語). ファンティア スポットライト[Fantia Spotlight]. 2023年5月19日確認。
- ↑ “AI作品の取り扱い一時停止について | DLsite|サービスインフォメーション” (日本語). info.eisys.co.jp. 2023年5月19日確認。
- ↑ “AI生成コンテンツの投稿制限について(5/15 17:00更新) | Ci-en|サービスインフォメーション” (日本語). info.eisys.co.jp. 2023年5月19日確認。
- ↑ “TINAMI - 作品投稿ガイドライン(補足事項)”. www.tinami.com. 2023年5月2日確認。
- ↑ “イラスト・マンガの投稿&SNSサイト - アートストリート(ART street) by MediBang” (日本語). イラスト・マンガの投稿&SNSサイト - ART street (アートストリート). 2023年5月2日確認。
- ↑ Human_imagination77 (2023年3月25日). “私たちについて” (日本語). クリエイターとAIの未来を考える会. 2023年5月19日確認。
- ↑ INC, SANKEI DIGITAL (2023年4月27日). “画像AIは「著作権侵害」 イラスト画家ら法規制訴え” (日本語). 産経ニュース. 2023年5月19日確認。
- ↑ “画像生成AIはクリエーターの権利を脅かすと規制訴えた団体の理事、禁止の二次創作イラストで批判され謝罪(篠原修司) - 個人” (日本語). Yahoo!ニュース. 2023年5月19日確認。
- ↑ “https://twitter.com/hiroya_oku/status/1657293875193745408?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1657293875193745408%7Ctwgr%5E594163c028a764a58b96cbedeffc094e3c4d8e50%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=http://blog.esuteru.com/archives/10046394.html” (日本語). Twitter. 2023年5月19日確認。
注釈[編集]
- ↑ Yahooニュースや東京新聞等のメディアではAI絵師やAI術師といった名称は使われていない。
- ↑ i2i(IMAGE TO IMAGEの略)は既存の絵や写真を使い、プロンプトとしてmasterpiece, 1girl等の単語を入力画像をAIに出力させることである。対する言葉にt2i(TEXT TO TEXTの略)があり、これは、既存の絵や写真無しで、masterpiece, 1girl等の構文を入力し画像をAIに出力させることである。
- ↑ 一方で、この乱世でちょい言いにくいけどワイは技術◦ツールとしてのAIは肯定派。変な使い方やモラルでAIの健全な発展を妨げないで欲しい。と荻poteは述べている。
- ↑ この学習データはstable diffusion等にて、本来の学習データセットに追加して使うもので、「Lora」「LoCon」等と呼ばれる(対して、本来の学習データセットは「Checkpoint」等と呼ばれる)。 これは、CIVITAIと呼ばれるサイト等で配布されている。
- ↑ ただし、この返信に関しては「デマではないか」といった指摘がある
関連項目[編集]
- 人工知能アート
- 画像生成AI(人工知能アートのリダイレクト)
- Stable Diffusion、NovelAI、Midjourney、DALL-E 画像生成AI
- chichi-pui 人工知能アート作品専用投稿サイト
- 人工知能、機械学習
- 七瀬葵 漫画家、イラストレーター。現在はAI絵師(本人はAI術師の名を使っている[1])として活動している。
- 贋作、コピー商品、ぱくり、模倣品 人工知能アートにおける問題。
- 二次創作
- イラストレーション、イラストレーター、絵師、クリエイター
- 著作権法(日本、アメリカ)
- ディープフェイク、フェイクポルノ
- ↑ “https://twitter.com/aoi_nanase3” (日本語). Twitter. 2023年5月19日確認。