野田弥三郎
野田 弥三郎(のだ やさぶろう、1905年 - 2002年)は、マルクス主義哲学者[1]。
経歴[編集]
台湾・台北生まれ。1909年満州の奉天(現・瀋陽)に移り、現地の尋常高等小学校を卒業。1919年満鉄従業員養成所を経て、奉天駅(現・瀋陽駅)の電信方として勤務。1922年奉天中学校3年生に編入。1924年甲南高校文科乙類に入学。1927年東京帝国大学経済学部に入学。在学中、新人会で活動[2]。吉山道三・織田二郎の別名でマルクス主義文献の翻訳、哲学論文の発表を行う[3]。1930年東京帝大経済学部卒[2]。1932年日本共産青年同盟(共青)に加盟[3]。日本共産党の非合法活動に参加[1][注 1]。1933年治安維持法違反で検挙・投獄[2]。1936年末[3]に仮出獄[4]。新聞記者、鉄鋼連盟、鉄鋼統制会、瓦斯統制会に勤務[2]。戦後、共産党に再入党[3]。『赤旗』の復刊をはじめとして同党の再建に従事[1]。党本部宣伝教育部に所属、杉並地区委員長となった[5]。
1950年1月のコミンフォルム批判後、党内外に「志賀意見書」を配布し、徳田球一書記長の追放を主張[6]。同年7月に宇田川恵三らと分派組織「日本共産党国際主義者団」を結成[7]。徳田派(主流派)を日和見主義・民族主義、宮本顕治・春日庄次郎ら旧全国統一委員会系を妥協的偏向だと激しく批判し、国際派(反主流派)の最左派の立場をとった。旧全国統一委員会系からは「極左的分派主義者」とみなされた[8]。1950年に共産党を除名されたが[4]、1955年の六全協後に復党し、東京都委員となった[5]。1958年の第7回党大会前後の党刷新運動の過程で党中央と対立し[1]、1961年に再び除名された[4]。1969年に「活動家集団 思想運動」が発足した際にその会員となり、その後は機関紙『思想運動』、機関誌『社会評論』の執筆者・読者として「活動家集団 思想運動」に協力した[1]。
脳出血で倒れた妻のため[4]、杉並区の阿佐ヶ谷駅近くにあった自宅に野草園「一草園」をつくり、一般にも開放した[2]。
著書[編集]
- 『新・哲学教程――マルクス主義の理論的基礎について』(出隆共著、青木書店、1958年)
- 『解放の哲学』(共著、合同出版社[合同新書]、1961年)
- 『共産主義者の責任』(新興出版社、1966年)
- 『一草園雑記・身辺雑記』(野田弥三郎、1979年)
- 『今日におけるマルクス主義の世界観』(小川町企画出版部、1984年)
- 『『資本論』の科学性と革命性』(小川町企画出版部、1987年)
- 『野田弥三郎著作集(全5巻)』(野田弥三郎著作集刊行会編、小川町企画出版部、1988年)
訳書[編集]
- ロゾフスキー『レーニン――階級闘争の大戦略家』(吉山道三訳、共生閣、1927年)
- エンゲルス『史的唯物論に就て』(吉山道三訳、共生閣、1927年)
- エンゲルス『背教者カウツキー』(吉山道三訳、共生閣、1928年)
- ポポフ『同盟軍としての農民』(吉山道三訳、共生閣[共生閣文庫]、1928年)
- ポポフ『同盟軍としての農民』(彰考書院、1946年)
- エンゲルス『フォイエルバッハ論――ルードヴィヒ・フォイエルバッハとドイツ古典哲学の終結』(彰考書院、1948年)
- 『フォイエルバッハ論――L.フォイエルバッハとドイツ古典哲学の終結 全訳解説』(訳・解説、青木書店[青木文庫]、1952年)
- レーニン『プロレタリア革命と背教者カウツキー』(訳編、社会書房[マルクス・レーニン主義選書]、1950年)
- イー・スミルノフ『レーニン、スターリンの文化革命論』(青木書店[青木文庫]、1954年)
脚注[編集]
注釈[編集]
- ↑ 『現代革命運動事典』では新人会から共青同・共産党に入党。『20世紀日本人名事典』では大学時代に共産党に入党。『平和人物大事典』には戦前の入党歴は記載されていないが、戦後に再入党したとある。
出典[編集]
- ↑ a b c d e 『社会評論』2017秋(190号)
- ↑ a b c d e 野田弥三郎『一草園雑記・身辺雑記』野田弥三郎、1979年
- ↑ a b c d 「平和人物大事典」刊行会編著『平和人物大事典』日本図書センター、2006年、430頁
- ↑ a b c d 日外アソシエーツ編『20世紀日本人名事典 そ-わ』日外アソシエーツ、2004年、1948頁
- ↑ a b 高木知明「野田弥三郎」、現代革命運動事典編集委員会編『現代革命運動事典』流動出版、1981年、228頁
- ↑ 小山弘健著、津田道夫編・解説『戦後日本共産党史――党内闘争の歴史』こぶし書房(こぶし文庫 戦後日本思想の原点)、2008年、88-89頁
- ↑ 『戦後日本共産党史――党内闘争の歴史』112頁
- ↑ 『戦後日本共産党史――党内闘争の歴史』126-127頁
関連文献[編集]
- 日本出版センター編『日本共産党史――私の証言』(日本出版センター、1970年)
- 安東仁兵衛『戦後日本共産党私記』(正・続、現代の理論社、1976年・1980年/合本、文春文庫、1995年)