臓器移植法
臓器移植法(ぞうきいしょくほう)とは、平成9年(1997年)10月16日に施行された日本の法律である。この法律の施行により、脳死と判定された人からの臓器の提供が可能になった。当初は書面による本人の意思表示と家族による承諾が必要で、15歳未満は提供できなかったが、その要件を緩和した改正法が平成22年(2010年)7月に施行されて本人の意思が不明でも家族の承諾だけで提供が可能とされ、15歳未満からの提供も認められた。日本臓器移植ネットワークによると脳死移植の件数は増加傾向にあるが、心臓の停止後に提供される臓器の移植を含めた移植手術全体の数は法律を施行する前の平成8年(1996年)と大きく変わっていない。
法令の管轄は厚生労働省である。
脳死と臓器移植関連の年表[編集]
- 1968年(昭和43年)
- 1997年(平成9年)
- 10月 - 事前に本人が書面で意思表明すれば脳死での臓器提供ができる臓器移植法が施行される。
- 1999年(平成11年)
- 2010年(平成22年)
- 2011年(平成23年)
- 2012年(平成24年)
問題など[編集]
臓器移植法が施行されて20年がたとうとする現在、提供は増えているものの日本国内ではおよそ1万4000人が移植を待つ状態となっている。複雑な手続きに対応する体制を備えた病院が少なく、申し出を生かせず移植を断念する例が多い。脳死での臓器提供ができるのは高度な医療を行なえる大学病院など5種類の施設に限られる。厚生労働省の調査では平成29年(2017年)3月現在で全国で896施設である。このうち、国が示す脳死判定やその後の提供に関する手順を定めたマニュアルなど、移植実施への態勢を整えているのは全体の約5割であり、提供者が小さな子供を含む18歳未満なら、虐待を受けていないことを確かめる必要もある。これに対応できるのは269施設で全体の約3割である。
また子供の移植は大きさのあった臓器でないと行なえない場合がある。子供からの臓器提供は1年で数例であり、子供の患者が移植を受ける機会は極めて限られている。このため募金などで多額の費用を集めて海外で移植を受ける渡航移植も子供を中心に続いている。
平成27年(2015年)に心臓移植について子供からの提供は子供に優先して移植できるように選定基準を見直している。しかし手術前の虐待チェックについて「どこまで確認すればよいのかわからない」など病院側の不安が強く残されている。