能川元一
能川 元一(のがわ もとかず、1965年 - )は、哲学者[1]。大阪国際大学非常勤講師、神戸学院大学大学非常勤講師[2][3]。未来のための歴史パネル展制作委員会共同代表[4]。リベラル懇話会委員(歴史認識分科会)[5]。右派の言説や歴史修正主義を研究している[6][7][8]。
経歴[編集]
1965年東京都生まれ[9]。1988年大阪外国語大学外国語学部フランス語学科卒業[10][11]。1996年3月大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。2007年3月まで同研究科助手[12]。2007年4月より大阪国際大学非常勤講師[13]。
研究・主張[編集]
歴史修正主義と保守の関係の研究で知られ[14]、歴史認識問題において、南京大虐殺や従軍慰安婦の否定論を歴史修正主義であるとして厳しく批判している[15][16]。現象学の研究から出発したが、インターネットで歴史修正主義やヘイトスピーチに接し、これらを哲学の延長線上で扱えると思ったと述べている[17]。
編集者・作家の早川タダノリとの共著『憎悪の広告』(2015年)では、保守・右派論壇誌の新聞広告の変遷を分析し、中国や韓国への論調が激しくなっていることを明らかにした[14]。山口智美、テッサ・モーリス=スズキ、小山エミとの共著『海を渡る「慰安婦」問題』(2016年)では、保守・右派論壇の言説の変化を分析し、「歴史戦」と称するキャンペーンの由来や背景を追った。右派や日本政府が「歴史戦」を展開すればするほど、日本が国際社会から非難されることになると批判している[18]。
哲学分野の主要論文に「理解における『創意の論理』」(『哲学』第45号、法政大学出版局、1995年)、「見本はいかにして解釈されるか」(『年報人間科学』第18号、1997年)[9]、右派の世界観に関連する論文に「『ネット右翼』の道徳概念システム」(『現代の理論』、明石書店、2008年新春号)、「右派のイデオロギーにおけるネット右翼の位置づけ」(駒井洋監修・小林真生編著『レイシズムと外国人嫌悪』、明石書店、2013年)などがある[19]。
著書[編集]
共著[編集]
- 『憎悪の広告――右派系オピニオン誌「愛国」「嫌中・嫌韓」の系譜』(早川タダノリ共著、合同出版、2015年)
- 『海を渡る「慰安婦」問題――右派の「歴史戦」を問う』(山口智美、テッサ・モーリス=スズキ、小山エミ共著、岩波書店、2016年)
- 『右派はなぜ家族に介入したがるのか――憲法24条と9条』(中里見博、打越さく良、立石直子、笹沼弘志、清末愛砂共著、大月書店、2018年)
- 『右傾化・女性蔑視・差別の日本の「おじさん」政治』(前川喜平、梁英聖、梁永山聡子共著、梁永山聡子編集、くんぷる、2021年)
訳書[編集]
- マーサ・C・ヌスバウムほか著『国を愛するということ――愛国主義の限界をめぐる論争』(辰巳伸知共訳、人文書院、2000年)
寄稿[編集]
- 菅野盾樹編著『レトリック論を学ぶ人のために』(世界思想社、2007年)
- 記録集編集委員会編『南京事件70周年国際シンポジウムの記録』(日本評論社、2009年)
- 小林真生編著、駒井洋監修『レイシズムと外国人嫌悪』(明石書店、2013年)
- 前田朗編『「慰安婦」問題の現在――「朴裕河現象」と知識人』(三一書房、2016年)
- 成澤宗男編著『日本会議と神社本庁』(金曜日、2016年)
- 塚田穂高編著『徹底検証日本の右傾化』(筑摩書房[筑摩選書]、2017年)
- 早川タダノリ編著『まぼろしの「日本的家族」』(青弓社[青弓社ライブラリー]、2018年)
脚注[編集]
- ↑ https://twitter.com/nogawam/status/911244294924648449 https://twitter.com/siiudagawa/status/1127760507111231489 https://twitter.com/iwakamiyasumi/status/503150484102733825
- ↑ 『帝国の慰安婦--植民地支配と記憶の戦い』(朴裕河著)合評会 Women's Action Network、2017年6月9日閲覧。
- ↑ 05. まぼろしの「日本的家族」 PARCオンライン、2017年6月9日閲覧。
- ↑ 役員紹介 未来のための歴史パネル展(2015年6月)、2017年6月9日閲覧。
- ↑ リベラル懇話会 リベラル懇話会設立のお知らせ ~民主党幹部を交えた政策研究会の実施と意見書作成~ @Press(2015年12月8日)、2017年6月9日閲覧。
- ↑ 能川元一:否定南京大屠杀违背日本战后国际承诺
- ↑ 「ホテル客室に「南京大虐殺」否定本 アパ史観を斬る」『東京新聞』2017年1月24日付朝刊
- ↑ 起底APA酒店老板:日本政界的“右翼资助人”
- ↑ a b 『国を愛するということ――愛国主義の限界をめぐる論争』著者紹介
- ↑ 能川元一 J-GLOBAL、2017年6月9日閲覧。
- ↑ 能川 元一さんの自己紹介 Facebook、2017年6月9日閲覧。
- ↑ 『週刊金曜日』主催 「歴史講座」のご案内 週刊金曜日(2013年12月3日)、2017年6月9日閲覧。
- ↑ 設置届出書(PDF) 学校法人大阪国際学園、12ページ
- ↑ a b 「保守・右派誌の広告は語る「嫌韓嫌中」「愛国」…新聞広告の論調、20年分析」『朝日新聞』2015年11月17日付朝刊33ページ文化文芸面
- ↑ 【IWJブログ】南京大虐殺・従軍慰安婦を「なかった」ことにする歴史修正主義者の「嘘」を一次史料にもとづき徹底論破する~岩上安身による能川元一氏インタビュー第1部 2014.4.4 Independent Web Journal(2014年4月14日)、2017年6月9日閲覧。
- ↑ 慰安婦問題、朝日「誤報」で高揚する「右派メディア」の主張を徹底論破~岩上安身による哲学者・能川元一氏インタビュー 2014.8.15 Independent Web Journal(2014年8月29日)、2017年6月9日閲覧。
- ↑ 【IWJブログ】南京大虐殺・従軍慰安婦を「なかった」ことにする歴史修正主義者の「嘘」を一次史料にもとづき徹底論破する~岩上安身による能川元一氏インタビュー第3部 2014.4.4 Independent Web Journal(2014年4月14日)、2017年6月10日閲覧。
- ↑ 申琪榮「山口智美、能川元一、テッサ・モーリス‐スズキ、小山エミ著 『海を渡る「慰安婦」問題——右派の「歴史戦」を問う』」『ジェンダー研究 お茶の水女子大学ジェンダー研究所年報』第20号(通巻37号)、2017年、121-124ページ
- ↑ 『憎悪の広告――右派系オピニオン誌「愛国」「嫌中・嫌韓」の系譜』著者紹介
外部リンク[編集]
- 能川元一(NOGAWA Motokazu)のホームページ
- 能川元一 (@nogawam) - Twitter
- 能川 元一 - Facebook
- 「歴史戦」ウォッチ
- 能川元一 - KAKEN 科学研究費助成事業データベース
- 能川元一 - J-GLOBAL
- 能川元一 - Researchmap