早川タダノリ

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

早川 タダノリ(はやかわ ただのり、1974年 - )は、日本の編集者、DTPオペレーター[1]、作家[2]。戦前・戦中に日本で出版された雑誌や広告チラシなどを収集し、研究している。戦前・戦中日本のプロパガンダに関する著書で知られる[3][4]

経歴・人物[編集]

1974年、ブラジル生まれ[5][6]。フィルム製版工などを経て、編集者に[7]。学生時代の1995年、後輩の女子学生がゼミで政治学の教授に「従軍慰安婦は嘘だ」などと言われていじめられたという話を聞いて憤ったのが戦前・戦中のことに関心を持つきっかけとなった[8][9]。また1999年の東海村JCO臨界事故の映像を見て「ディストピア」だと思ったことがきっかけで、電力館や原発の広報センターを訪ねるようになったという[9]。2000年頃から戦前・戦中に日本で出版された雑誌や広告チラシなどの資料を収集し始め、以後研究を続けている[1][5]

2004年から季刊『中帰連』に「皇国トンデモ本」を連載。2005年にブログ「虚構の皇国」、2009年にツイッターを開始した[5]。2010年に戦意高揚プロパガンダを紹介した『神国日本のトンデモ決戦生活』を出版。2014年には原発推進のプロパガンダを紹介した『原発ユートピア日本』を出版した。これらの取り組みの目的について、戦争や原発など恥ずかしいことをスルーしてきたが、恥を知れということだと述べている[9]。プロパガンダを嘲笑するのが目的ではなく、大日本帝国による動員の全体像を明らかにしたいとも述べている[10]

哲学者の能川元一との共著『憎悪の広告』(2015年)では、保守・右派論壇誌の新聞広告の変遷を分析し、中国韓国への論調が激しくなっていることを明らかにした[2]

2014年から2015年にかけて『神奈川新聞』に「日本スゴイ!自画自賛の系譜」(全12回)、2014年から2016年にかけて『週刊金曜日』に「国民精神総動員の時代 昭和の愛国ビジネス」(全27回)を連載した。

評価[編集]

  • 文筆家の竹内正浩は、『神国日本のトンデモ決戦生活』について、「最初は笑って読みはじめたが、次第に空恐ろしくなってくる。現代との不気味な符合。ナショナリズム(国粋主義)がえてしてナルシシズム(自己陶酔)に陥りがちなこともわかる。」と評している[11]
  • 書評家の東えりかは、『「日本スゴイ」のディストピア』について、「「日本スゴイ」ならユートピアなんじゃないの?と思いながら読みはじめると、戦時下に行われたプロパガンダによって洗脳された日本人の姿に戦慄させられる。」[12]、「笑いながら読むうちに、なぜか背筋が寒くなってくる。これって今の状況と似ていないだろうか。」[13]と評している。

著書[編集]

単著[編集]

  • 『神国日本のトンデモ決戦生活――広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか』 合同出版、2010年/ちくま文庫、2014年
    • 中国語版:早川忠典『"神国"日本荒唐的决战生活:广告、传单、杂志是如何为战争服务的』 胡澎译、生活·读书·新知三联书店、2015年
  • 『原発ユートピア日本』 合同出版、2014年
  • 『「愛国」の技法――神国日本の愛のかたち』 青弓社、2014年
  • 『「日本スゴイ」のディストピア――戦時下自画自賛の系譜』 青弓社、2016年

共著[編集]

  • 『憎悪の広告――右派系オピニオン誌「愛国」「嫌中・嫌韓」の系譜』 能川元一共著、合同出版、2015年

寄稿・インタビュー[編集]

  • 『時代の正体――権力はかくも暴走する』 神奈川新聞「時代の正体」取材班編、現代思潮新社、2015年
  • 『徹底検証日本の右傾化』 塚田穂高編著、筑摩選書、2017年

脚注[編集]

  1. a b 早川タダノリ『神国日本のトンデモ決戦生活』合同出版、2010年、著者紹介
  2. a b 「保守・右派誌の広告は語る「嫌韓嫌中」「愛国」…新聞広告の論調、20年分析」『朝日新聞』2015年11月17日付朝刊33ページ文化文芸面
  3. 「平和」「未来」「安全」・・・ってホント!? 読売新聞にはじまる膨大な広告群がでっち上げてきた「原発の安全神話」を解体する!~岩上安身が『原発ユートピア日本』著者・早川タダノリ氏に訊く 中編 2016.11.5Independent Web Journal(2016年11月13日)、2017年6月17日閲覧。
  4. 都築光太郎 神社本庁「日本人でよかった」ポスターはウソだった! 極右と安倍政権が煽る「日本スゴイ」ブームの危険を再検証 リテラ(2017年5月11日)、2017年6月18日閲覧。
  5. a b c 早川タダノリ コンデナスト・ジャパン、2017年6月17日閲覧。
  6. 2017「平和の灯を! ヤスクニの闇へ キャ ンドル」事前学習会 平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動実行委員会、2017年6月17日閲覧。
  7. 早川タダノリ『神国日本のトンデモ決戦生活』ちくま文庫、2014年、著者紹介
  8. 「戦時中のトンデモ愛国心 出版物から探る「当時の価値観」 編集者 早川タダノリさんに聞く」『しんぶん赤旗日曜版』2014年2月9日号
  9. a b c Takeshi Sato もう恥ずかしいことはスルーしたくない──早川タダノリ コンデナスト・ジャパン(2014年2月27日)、2017年6月18日閲覧。
  10. 朴順梨 第16回 早川タダノリ「日本を考える」 イミダス・集英社(2017年5月18日)、2017年6月18日閲覧。
  11. 竹内正浩 「日本スゴイ」のディストピア 早川タダノリ著 戦中の自国礼賛 今と通底 どうしんウェブ、2017年6月18日閲覧。
  12. 東えりか 最近、再び増殖中の“日本スゴイ” その原点は? Book Bang、2017年6月18日閲覧。
  13. 東えりか 〈書評〉ニッポン人の常識を疑え!  文・東 えりか ほんのひきだし(2016年9月2日)、2017年6月18日閲覧。

外部リンク[編集]