梅毒
梅毒 (ばいどく)とは、スピロヘータの一種であるTreponema(いわゆる梅毒スピロヘータ)によって発症する。淋病と並んで、有名な性感染症である。
名称[編集]
発症初期に皮膚に現れる発疹がウメの花に似ており、それが恐ろしい毒を持つと信じられていたため。
病状[編集]
人体の粘膜にTreponemaが接触すると、約2週間の潜伏期を経て感染箇所に固いしこりができる。その後、全身に発疹が出るがやがて消失する。しかし治癒したわけではなく、体内でTreponemaが増殖していく。そして数年、あるいは十数年の潜伏期を経て感染者の体力が衰えたとき、Treponemaは突如、感染者の皮膚、心臓、眼球、脳の神経細胞を破壊してしまう。そうなったとき、その感染者は若くても感染者の人生はそこで終わりである。薬剤を用いてTreponemaを殺しても破壊された神経細胞は元には戻れないのである。また、妊婦が感染すると胎児にも感染し、生まれた子は親を一生恨んだという。
歴史[編集]
元々はアメリカ大陸の風土病であったのが、1492年にアメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブス一行がヨーロッパに持ち帰ったという説が一般的である。その後、この病気はヨーロッパで大流行し多くの死者が出た。日本へは倭寇によって1512年にもたらしたと言われ、僅か20年で地球を半周したことになる。当時の交通事情を考えると驚異的な速さである。火縄銃よりも30年も早く上陸したことになる。江戸時代には遊廓を中心にかなり多くの患者が出ていたようである。
治療法は古くから研究され、当初は水銀を用いたが毒性が強く、これを排出するために珪藻土を用いた。梅毒の治療に用いた水銀のために水銀中毒によって死亡する者もいた。近代に入ると梅毒Treponemaの発見によりこれに対抗できる薬品としてサルバルサンが開発された。しかし、これはヒ素が混じっているため副作用が強かった。また、Treponemaが熱に弱いことから故意にマラリアに感染させて梅毒Treponemaを殺した後にキニーネを投与する治療法が行われた。さらにペニシリンの発見によって完治できるようになった。
現状[編集]
先進国ではペニシリンの投与によってほぼ根絶したが、発展途上国では根絶せず、しばしば先進国に運び込まれる。日本にも21世紀になって多くの患者が発生した。
関連項目[編集]
関連作品[編集]
- 泉谷しげる「おー脳!!」