日本の司法
本ページでは、日本の司法 (にほんのしほう)について述べる。
歴史[編集]
江戸時代に武家諸法度が発布されてから、日本の司法=お裁きは、ずっと一審制であり、身分別で地域による差異もあった。民事事件は事実上仲裁が主だった。
大日本帝国憲法で、天皇の名の下でありながら「裁判を受ける権利」が明記された。裁判所体系も整えられ、大審院、控訴院、地方裁判所、区裁判所が設置され、三審制も整ったが、大逆罪など主権者の天皇に反逆する事件は一審制であり、明治期の大逆事件は、一審審理と秘密審理が国外から非難された。また、行政府の国務大臣である司法大臣が、裁判官の任免や裁判所の規則制定に大きく関与できる体制だった。
これらの裁判所のほか、特別裁判所として行政裁判所と軍法会議が設置された。
現行[編集]
日本国憲法発布により、特別裁判所を設けないことが明示され、最高裁判所が終審裁判所となり、下級裁判所として高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所がある。内閣によって任命された裁判官が法に従って裁きを行う。時には法が憲法に違反しないかという違憲立法審査権を持つ。
また、裁判官の罷免は国会内の弾劾裁判所のみで実施され、裁判所規則も行政府の関与無く最高裁判所で制定することになった。
下級裁判所、特に地方裁判所、家庭裁判所が47都道府県、及び、旭川市、釧路市、函館市に設置されているのに対し、最高裁判所は東京の三宅坂に1ヶ所あるのみである。最高裁判所の判事は、裁判官としてのキャリアを積んだ人以外に、法学者等からも登用され、定期的に信任・不信任かの国民審査を受ける。
問題点[編集]
三審制の実効性についての疑問[編集]
「三審制#現状」も参照
控訴審、上告審で初審の判決が覆されることが少ないことを問題視する人がいる。
特に、行政事件については、原告となる市民側が望む実質審理が行われずに、被告の国や自治体の「訴える資格の適切性」の是非のみが審理され、初審、控訴、上告全てで中身がない原告敗訴となる判決が大半である[注 1]。
裁判を受ける権利の保障[編集]
地方裁判所・家庭裁判所は、47都道府県庁所在地及び、旭川市、釧路市、函館市に本庁が設置され、それ以外の主要市町に支部が置かれているが、地裁・家裁支部は1988年に裁判官等が常勤しなかった、いわゆる「乙号支部」を中心とした統廃合や合議事件の集約化が行われ、同時に簡易裁判所も地方で統廃合が行われて、管轄の裁判所支部や簡裁までの距離が遠くなり憲法で保障された「裁判を受ける権利」に疑問符が出る状況になっている。
最高裁判事の国民審査[編集]
最高裁判所判事は、定期的に信任・不信任かの国民審査を受けることになっているが、現在まで、国民審査を経て不信任となった判事はいない。このことについて、マスコミが裁判報道や裁判中継に消極的なこともあり、何も書かずに白紙承認している有権者が多いのではという疑問がある。また、一度も上告審に携わらず審査を受ける判事がいる問題点もある。
ただ、昨今は、夫婦別姓をめぐり、ネットで賛成、反対両派が、夫婦別姓事件に関わった最高裁判事の見解を紹介し、さしずめ国民審査に名を借りた直接投票のような状況になっている。
裁判の公開[編集]
日本国憲法で裁判は公序良俗を害する事件以外は、原則公開で傍聴席も準備されている。しかし、傍聴席で傍聴できる定員は限られ、関心の高い事件だと傍聴席の抽選倍率が高く、傍聴が保障されていない。
2024年5月には横浜地裁の裁判で、横浜市の教育公務員が一般の傍聴妨害を目的に動員されたことが発覚した。
これについて、裁判員裁判の存廃に絡めて、裁判のテレビ中継を求める声が出ている。