峡東三駅
峡東三駅・峡東3駅(きょうとうさんえき)は中央本線塩山駅・山梨市駅・石和温泉駅の3駅をまとめた通称である。特急「かいじ」の全列車と特急「あずさ」の一部が停車しているが、一時期JR東日本は「あずさ」の全列車を通過させていた。
ここでは便宜上、上諏訪駅を始めとする諏訪湖畔の駅についても触れる。
概要[編集]
甲府盆地東部、青梅街道沿いにある、笛吹、山梨、甲州の各市の代表駅3駅。特急「かいじ」が主に停まるが、後述の背景もあり一部の「あずさ」が停車する。
ちなみに国鉄分民化前に廃止された人気昼行急行「アルプス」は峡東3駅のうち2〜3駅に停車していた。
歴史[編集]
そもそも事の発端は[編集]
2018年12月14日に発表された2019年3月16日のダイヤ改正。この日、中央本線(東京 - 塩尻・松本)では大きな改造が行われた[1]。具体的には
- あずさ回数券の廃止
- チケットレスサービス開始
- 「あずさ」の大幅なスピートアップ・「スーパーあずさ」の廃止
- 富士回遊の登場
の4つが行われた。だがここで問題となったのが「3」の「あずさの大幅なスピートアップ・スーパーあずさの廃止」。2019年3月ダイヤ改正以前の中央本線には超速達列車「スーパーあずさ」・速達列車「あずさ」・通勤等向け特急「かいじ」の3種類が存在していたが、ダイヤ改正で「スーパーあずさ」が廃止。この時点ですでに乗客は混乱に陥ってしまった[注 1]。
また、あずさの大幅なスピートアップのために通過駅を増やすことになった。ここで選ばれたのが「四ツ谷・三鷹」と「峡東三駅」だったのである[注 2][注 3][注 4]。
JR側としては当時最新型だったE353系の中央本線における速度向上を前面に出すために、このようなダイヤ改正を行ったと考えるが、北近畿ビッグXのように山梨県峡東の「あずさ」通過駅に対する信州方面への特急料金通算の補償策を講じないまま、見切り発車で改正ダイヤを発表した。
事態を受け[編集]
この通過駅を増やす意見を受け、山梨・長野の両県ではダイヤ改正に反対する声が殺到する。
山梨県[編集]
山梨県では、甲州市・山梨市・笛吹市の「峡東3市」と県がJR東日本に要望書を提出[2]した。「特急かいじが停車するからいいのでは?」という少数意見があった一方、峡東3駅周辺の一つである石和温泉で「峡東3市市民の会」がのぼり旗を設立し、ダイヤ改正反対の抗議活動に出た。
こうした不満意見は、国鉄分民化直前の昼行急行「アルプス」廃止の代償で停車増となった「あずさ」が定着したことや特急「かいじ」が「地域密着型の特急=格下特急[注 5]」というイメージを持たれていることが元となり、多数を占めたと考えられる。
長野側への移動に際し、前述のように特急料金が通算されず割高になることや乗換の面倒さがあることは、「格下特急のみ停車」の不満よりは霞んでしまったようである。
長野県[編集]
長野県では「岡谷市・諏訪市・諏訪広域連合」など沿線自治体や連合がJR東日本長野支社にダイヤ改正見送りに関する要望書を提出。また、長野県知事の阿部守一氏は2019年1月11日の定例記者会見で、「東京都内区間の複々線化[注 6]など抜本的な部分に取り組むことなしに停車駅数が減らされてスピードアップするというのは、我々の期待する方向ではない」と発言している。特に上諏訪駅では停車復活に対する要望が強かったようだ。
両県の意見を受け[編集]
JR東日本は山梨・長野両県の意見を受け、臨時特急を走行させることにした。その名も「信州かいじ[3]」。位置づけは特急かいじの延伸版という形になっている。停車駅は
「立川・八王子・大月・塩山・山梨市・石和温泉・甲府・韮崎・小淵沢・富士見・茅野・上諏訪・下諏訪・岡谷・塩尻」
と今までの特急の中でも停車駅が多い列車の一つとなっている。これにより数カ月ぶりに峡東三駅・諏訪地域全駅に停車する特急列車が復活した。
その後、2020年3月14日のダイヤ改正で峡東三駅に一部「あずさ」が定期で停車するように見直しが行われた[4][注 7]。
また、2022年3月12日のダイヤ改正では旧あずさ19・43・14・58号が[注 8]かいじ号に変更、峡東三駅に停車する特急列車がさらに増加した。これに伴いあずさ17号・18号は上諏訪駅の通過を取り止め、上諏訪駅には全特急列車が停車するようになった[注 9]。これにて一連の騒動は幕を閉じた。
一方で、時期によって甲府以西で既に満席になることも少なくない上り「あずさ」の座席確保の手段[注 10]ともなる甲府駅での「あずさ」と「かいじ」の甲府駅での乗継特急料金通算はなお実施されていない。
現在(2023年のダイヤ改正)以降[編集]
2023年以降のダイヤ改正も変わらず、峡東三駅と上諏訪駅には定期で停車している。
2023年のダイヤ改正より新宿駅に午前中に着く列車は全列車が東京行となるため、利便性はますます向上することになる。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ↑
もっとも、それまで中央線特急の停車パターンが多すぎた事に加え、「大月」「石和温泉」「韮崎」「下諏訪」といった、停車型の特急が主に停まる駅に一部の「スーパーあずさ」が停車していた時点で混乱すると思われるが。 - ↑ 長野県側では上諏訪駅と岡谷駅で通過列車が出た。
- ↑ このとき、「かいじ」は今まで通り停車することが発表されている。
- ↑ なお、このとき大月も通過対象に入っていたが東京へ直通する中央特快などが走行していること、大月から東側は停車駅が全く変わらない「かいじ」が走行していることなどもあり、特に不満は出なかったようだ。
- ↑ 実際のところ特急「あずさ」よりも時間はかかってしまうが、中央東線の普通列車が殆ど高尾駅発着で、東海道線、高崎線などと違って中距離移動の用をなしにくいことを考えると八王子、新宿に直通する利便は見逃せず、「あずさ」よりコスパに合った列車でないことの不満と思われる。
- ↑ 立川〜三鷹間の複々線化が凍結されている問題の他、三鷹以東の複々線は、京阪神や東武スカイツリーラインの複々線のような方向別複々線でないため、杉並三駅問題の解決が妨げられていることや線路の繁閑に応じた使い分けができないといった問題がある。
- ↑ ちなみにこのダイヤ改正で「富士回遊」が「あずさ」と連結する運用ができたため、大月駅にも停車する便が出た。
- ↑ これらの列車は、22年改正まで峡東三駅を通過していた便で、末期はあずさ43号のみ金曜を中心に石和温泉駅に臨時停車していた。
- ↑ 同時に、立川駅にも全特急列車が停車するようになっている。
- ↑ 甲府以西で満席の場合、座席未指定券購入を前提とする。
出典[編集]
- ↑ “2019年3月ダイヤ改正について”. 東日本旅客鉄道八王子支社. (2018年12月14日) 2023年1月18日閲覧。
- ↑ “JR中央線ダイヤ改正に伴う要望活動”. 山梨県. (2019年5月16日(最終更新日)) 2023年1月18日閲覧。
- ↑ “春の増発列車のお知らせ”. 東日本旅客鉄道八王子支社. (2019年2月22日) 2023年1月18日閲覧。
- ↑ “2020年3月ダイヤ改正について”. 東日本旅客鉄道八王子支社. (2019年12月13日) 2023年1月18日閲覧。
参考文書[編集]
- JR東日本のダイヤ改正に沿線住民が反発 改善策はどこに? - Yahoo!JAPANニュース(2019年1月13日)