丼物
丼物(どんぶりもの)とは、日本における大衆的な米を使った料理のジャンルのひとつである。ただし「丼物」の定義や区分は曖昧である。
概要[編集]
おおきく分けて少なくとも三種の系統があり、
- 玉子とじ系
- ぶっかけ飯系
- ちらし寿司系
などが知られているが、「ソースカツ丼」や「目玉焼丼」など、これらの系統に位置付けられないものも多い。
- のっけ系
という分類を立てるべきかもしれない。
麺類(特に、汁とともに食す温麺)は丼に入っていることが多い(丼の語源が「スープ鉢」であることから、これは真っ当である)が、こちらは「丼物」のジャンルには分類されない。具体的には、おかめそばやラーメンは丼物の範疇には通常入らない。
玉子とじ系丼[編集]
「親子丼」や「カツ丼」・玉子丼などが代表的である。
「蓋つきの和どんぶりで温かい状態で供されるのが、真の丼である」という原理主義的な思想もあるが、とくに反社会的ではないので無問題である。
稲荷丼(狐丼(きつね丼)・衣笠丼・羽衣丼とも)や木の葉丼(薄く銀杏切りにした蒲鉾を銀杏切りにして甘辛煮したもの)もあり、バリエーションとしては茸丼、牛蒡丼、細切牛肉と茄子の柳川風丼などもある。
ぶっかけ飯系丼[編集]
「鰻丼」「天丼」やソースかつ丼などは高級感があるため「ぶっかけ飯」とは」呼びづらい。「カレー丼」とか「牛丼」はここに入りそうである。スキヤキ丼は見るからにぶっかけ飯だが、玉子とじであるので曖昧な立ち位置ではある[1]。 中華丼(八宝菜を載せたもの)は丼物にはあまり入れず、「中華飯」とも呼ばれる。天津丼(芙蓉蟹(フーヨウハイ。いわゆる「かにたま」)や芙蓉蛋を載せたもの)も、「丼」と名はつくが、あまり丼物には入れられず、「ご飯もの」に近い。
ちらし寿司系丼[編集]
「鉄火丼」「海鮮丼」「ウニ・イクラ丼」「貝づくし丼」「しらす丼」(高知県安芸ではちりめんじゃこを使った「ちりめん丼」、静岡県由比では生しらす丼、湘南の「釜上げしらす丼」)」「サクラエビ丼」(櫻蝦としらすの相盛りもある。紅白で縁起がよさそうだが、とくに通称は聞かない)、「なめろう/納豆丼」などがこれに入る。寿司飯を台とすることも多い。
ただし、「鶏そぼろ丼」(鶏は鳥挽肉を甘辛く味付けし、その上に錦糸卵を散らす)や「目玉焼丼」では、普通の白飯を用いることが多い。
のっけ系(暫定)[編集]
ソースカツ丼や目玉焼丼、ハンバーグ丼などがここに分類されそうに思う。
- 目玉焼丼 - 熱々のご飯の上に繊切りキャベツを敷き、その上に目玉焼を載せる。ウスターソース、醤油、ケチャップなどの味付けや、胡椒・タバスコなどの香辛料は好みによる。COOKPADには四百種以上のアレンジがある。
日本語処理との関係[編集]
「どん」は「どんぶり」の略語であるが、かな漢字変換システムで辞書に「どん」を登録すると、「どんぶり」が「丼ぶり」と変換されてしまうので、「〇×丼」はすべて「〇×」も含めて登録することが望ましい。
したがって、「カツ丼」「親子丼」「天丼」「玉子丼」「牛丼」「海鮮丼」「鉄火丼」「中華丼」くらいは登録しておくのは必須であり、「しらす丼」「湘南丼」などまでカバーしておくのが親切というものである。「『どん』を『どんぶり』よりも候補として優先しない」といった細かいケアが行きとどいていないのが、現在の日本語処理の浅さを表している。
参考文献[編集]
関連項目[編集]
- カツ丼 - 「丼物の王」的な立場に位置されている。
- 天丼 - カツ丼が王であれば、天丼は「丼物の女王」である。警察署で容疑者が事情聴取されるときに、刑事が「カツ丼でいいな?!」と言うと「あ、天丼で」としれっとして答えると刑事が厭な顔をする、というお約束ネタがある(「どうせ自弁なんだから好きなものを喰いたい」というのは正論である)。名店としては浅草の「大黒屋」がある。
- 親子丼 - 日本橋(河童橋近く)の「玉ひで」が名店として知られる。
- 牛丼 - 牛めしに由来する。浅草の「今半」が有名。
- 湘南丼 - トンカツのかわりにエビフライを用いたもの。
- チキンカツ丼 - トンカツのかわりにチキンカツを用いたもの。
- 稲荷丼 - 狐丼(きつね丼)・衣笠丼・羽衣丼とも。油揚(お揚げさん)を醤油・砂糖・味醂・出汁で甘辛く煮たものを玉子とじ(玉〆・玉締め)にして飯に架けるもの。
- おでん丼 - おでんの具を飯に載せたもの。落語「時蕎麦」に登場する卓袱蕎麦の台をかけそばから飯に替えたものである。茶飯の上に(汁が黒い、いわゆる関東風のおでん)を乗せて食べる例はおでん屋では普通に見られるが、あたりまえすぎてか特に通称はない。奈良茶飯(焙じ茶で炊いたもの)プラス静岡おでんはありそうに思う。伊豆には「ぐり茶」という茎茶の焙じ茶もある。
- 鰻丼 - 鰻重の丼版。こうなると鰻の蒲焼を玉子でしめたものや柳川鍋を載せた丼物もあっていいようには思うが、「丼物には丼物としての美学・伝統に裏付けられた様式がある」と言われそうに思う。なにしろ料理というものが様式に基づくものであるので。
- 謎丼 - 「とりあえず冷蔵庫内にあるありものを、(冷凍室にある冷凍ご飯やパックご飯や、ときにコンビニおにぎりなど)の飯の上にかけ、足りない栄養素がありそうだったら鯖水煮缶でも野菜ジュースでもカップ麺の麺(汁が多すぎると喰いにくいので、残りはスープとして扱う)でも足して、マヨネーズでもなんでもかけて喰う」というカオスな丼物である。ときに米すら入らないので、「米料理としての丼物」の定義からは逸脱している。コミックス『獣医ドリトル』が発祥とされるが、関係者からの聞き取りによると、警察関係者や自衛官や救命救急医にとっては「あるある」であるらしい。「速飯・速糞 藝のうち」という言葉が通用する業界においてはありがちな話ではある。プログラマでは、「カップ麺の麺を喰い終わったらコンビニおにぎりを入れて崩して喰う」という人もいた(実話)。
- コンビーフ丼・ツナ丼 - 丼飯の上にコンビーフ缶詰野菜ツナ缶・鯖水煮缶などを載せ、マヨネーズなどをかける。賞味期限切れの牛缶・鰯缶・さんま缶などの場合はマヨネーズが使われることは少なく、ケチャップやタバスコ、冷凍の小葱などが重宝される。
- はるまげどんぶり - オウム真理教の「ハルマゲ丼」とは異なる点に注意されたい。「冷蔵庫に残ったもの一切合切を調理し、なんとかオカズに仕立てあげて、コメの飯に掛けて喰う」というのが本来のはるまげどんぶりである。かつて「都会の大学に入った地方出身の貧乏学生が、自炊でしのぐために作られた」という都市伝説があるが、半分以上は迷信である[2]。
脚注[編集]
- ↑ まぁ、美味けりゃいいのだが。
- ↑ いわゆる都会にある「下宿街」ではなく、ちょっと都市部から外れた大学では、近所の下宿生が農協の販売所や無人販売所の伝手で農家さん(ポリティカル・コレクトネス的にいうと「生産者さん」)などと知りあい、「なんか野菜屑とかありませんか」と食材を集め、「鉄腕DASH」の「0円食堂」のような感じで鍋会を行うと同学生が「ストーム」と称して参加して食えるだけ喰うという美しい伝統がある。後でリーダーが一升瓶を提げて謝罪しにくるというのもお約束であった。うちの○×研究室は、「喫茶〇×」「割烹〇×」として同学生に頼りにされていた。たまたま「鮭鍋」をやったところ、なぜか伝聞によって「オショロコマ鍋」と伝わり、「『オショロコマ』って天然記念物じゃないですか?」という心配の声があったという実話があるという。ただし、これも都市伝説かもしれない。
関連項目[編集]
外部サイト[編集]
- 東京・浅草 「大黒家天麩羅」(http://www.tempura.co.jp/)
- 東京・日本橋「玉ひで」(http://www.tamahide.co.jp/)
- 東京・浅草「今半」(https://www.asakusaimahan.co.jp/kokusai)