ラプラス変換

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

ラプラス変換(ラプラスへんかん)は、関数を別の関数に変える、積分変換の一種。フランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスに因んでこのような名前がついた。

数学的には応用できないと言われているが、工学的には広く応用が利く。

定義[編集]

時間関数 f (t)のラプラス変換は

と定義される。ここでのsは複素周波数と呼ばれ、 s = σ + (σとωは実数、iは虚数単位)と表されることもある。σが増幅速度に、ωが周波数に対応するので、複素周波数という言い方をし、関数の引数が複素周波数になるので、定義域を「周波数領域」と呼ぶ。

逆に、この逆の計算も以下のように定義でき、これをラプラス逆変換(inverse Laplace transform)という。

ラプラス変換・ラプラス逆変換の関数は以下のようにも著すことができる。

あるsに対してであれば[注釈 1]、関数が周波数sの成分を含んでいることを意味する。しかし、であれば特に意味は無い(ただし、伝達関数であれば他の関数にかけ算されるので、意味を持つことがある)。

用途[編集]

周波数領域では、微分積分掛け算の形で書けるので、時間領域に直さない限りは計算が簡単になる。また、後述の伝達関数については、周波数毎の入力と出力の比が簡単にわかるので、伝達関数の性質を調べるのに適している。

変換表[編集]

変換表 原関数

't' 領域 / 時間領域
像関数

's' 領域 / 周波数領域
収束域
単位インパルス
単位ステップ関数
ランプ関数
n
n は整数)

q
q は複素数)

n 乗根
指数減衰
n 乗の指数減衰
理想遅延
遅延付き単位ステップ関数
遅延付き n 乗の指数減衰
指数関数的接近
正弦関数
余弦関数
双曲線正弦関数
(ハイパボリックサイン)
双曲線余弦関数
(ハイパボリックコサイン)
正弦波の指数減衰
余弦波の指数減衰
自然対数
第 1 種ベッセル関数
第 1 種変形ベッセル関数
第 2 種ベッセル関数
(次数が 0 の場合)
第 2 種変形ベッセル関数
(次数が 0 の場合)
   
誤差関数
凡例
特に工学者を目指す者は最低限単位ステップ関数、ランプ関数、単位インパルス関数、指数、遅延系、正弦、余弦は最低限覚えておく[要出典]

微分方程式・回路方程式への応用[編集]

1回、2回、n回の微分は以下のように表すことができる。


また、積分は以下のように表すことができる。

これらを利用して、常微分方程式偏微分方程式回路方程式などの微分方程式を解く際に線形の計算だけで解を求めることができ、その際に出てくる部分分数分解についてもヘビサイドの展開定理を利用すれば一気に解くことが可能である。

伝達関数への応用[編集]

時間関数を入力とし、別の時間関数に変換する関数を伝達関数と呼ぶ。伝達関数のラプラス変換は、以下を満たす様に定める。これにより、伝達関数を複数種類直列に施す場合でも、掛け算の形で書くことができる。

アナログ信号の伝達関数の計算はすべてラプラス変換した形で表される[注釈 2]。このため、制御器設計を行うにあたってはラプラス変換をしっかり理解している必要がある。

ラプラス変換することにより、伝達関数は出力=×入力の形で書ける。これは、入力に周波数の成分があれば、出力がその倍に増幅されることを意味するため、が出力と入力の比そのものとなる。また、であれば、これは入力に周波数の成分が無くても出力には現れることを意味する。ここで、であれば、出力が時系列で発散することを意味する。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. 便宜上、ゼロ割りになる(極を持つ)ことを、と表記している。本当は、計算できないと言う方が正しい。
  2. 離散時間系を扱うデジタル信号についてはZ変換という別の手法を用いる。

出典[編集]


関連項目[編集]