微分

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

微分(びぶん)とは、数学において、ミクロな視点で数値の変化の度合いを解析することである。

概要[編集]

例えば、列車に乗っていて、キロポスト(一応、現実より細かく配置されていると仮定する)を見ながら列車の速度を推定することを考える。1時間毎に見たキロポストの数値が0, 80.3, 150.2, 261.1であれば、各区間の平均速度が80.3km/h、69.9km/h、110.9km/hであることが分かる。

ある瞬間の速度を知りたい場合、これをもっと細かくした方が正確である。例えばある瞬間のキロポスト値が80.3で、1分後に見た値が81.4であれば、この間の平均速度は、(81.4-80.3)÷(1/60) = 66km/hである。これを細かくすればするほど、ある瞬間の速度に近づいていく。できれば、1分、10秒、1秒、0.1秒・・・と無限に小さくしていきたい。時間間隔を無限に小さくして、走行距離の差分から速度を求めること、これが微分である。

通常の関数や方程式の微分には、偏微分全微分の2種類がある。ただし、高校では1変数関数の微分しか扱わず、この場合偏微分と全微分は実質同じものであることから、両者を区別せず単に「微分」と呼ぶのが普通である。

偏微分[編集]

関数の微分。関数の変数のうち一つだけを動かした時、関数の戻り値はどのぐらい変化するのかを求めるのが偏微分。次の様な式で定義される。

主な関数の偏微分は次の通り。なお、は自然対数(2.71828・・・)を表し、三角関数の角度の単位はラジアンとする。

ここで指数関数は、微分しても形が変わらない。sin,cosについては、4回微分すれば元に戻る他、2回微分すれば正負が逆になるだけである。この性質は、微分を含んだ方程式である微分方程式を解く際に重宝される。

全体的に、微分するとより簡単な関数になる傾向があるが、指数関数三角関数の場合、微分しても簡単にならない。これは一方で、微分の逆演算である積分については、殆どの関数で難しくなる傾向がある一方、指数関数と三角関数は難しくならないので積分しやすいということを意味している。

なお、偏微分は常にできるとは限らない。など、偏微分ができない関数があるので注意が必要である(など条件をつければ可能)。この時は、後述の全微分も、偏微分を用いているので同様に不可能となる。

偏微分の記法[編集]

  • ライプニッツの記法。最もよく用いられる。全微分との関係が分かりやすい記法である。
  • オイラーの記法。ライプニッツの記法より簡潔。
  • ラグランジュの記法。1変数関数の微分の表記としては簡潔で便利。
  • ニュートンの記法。なんの変数で微分するのか分かりにくいが、最も簡単な書き方である。物理などの分野で、時間での微分を表現するのによく用いられる。

全微分[編集]

方程式の微分。多変数の方程式で、登場する全ての変数のミクロな関係を調べるのに用いる。言い換えれば、方程式を満たしたままある変数を少し動かす時、他の変数はこう動くべきだというのを求めるのが全微分である。という方程式の全微分はとなるが、このは次の様に表される数式である。

高校数学では、の場合しか扱わない。これを全微分すると、即ちであり、実質偏微分と同じであるのでという表記もよく用いられる。

このは微分形式と呼ばれ、これは実はベクトルから座標の値を返す写像である。とは言え、変数の微小変化量とみなした方が解釈しやすい。また、全微分は、方程式を一次方程式で近似する意味も持っている。

具体例[編集]

球面を表すという方程式を全微分すると、となる。例えばから、元の方程式を満たしたままこれらの変数を少しだけ動かしてとなった時、次の近似式が成り立つ。

また、この全微分の式は、そのまま接平面の式に転用できる。における接平面は、、およびを代入することにより次の式で表される。

用途[編集]

運動方程式やマクスウェル方程式など、物理法則の多くが微分を用いた数式で記述される。この微分を用いた方程式のことを、微分方程式と呼ぶ。物理現象の他、経済現象なども微分方程式で書かれるため、微分およびその逆演算である積分は、理工系はもちろん経済学などでも盛んに用いられる。

そのため微分・積分は、高校数学の中で最も応用範囲の広い単元であるとも言える。一方で、最も難しい単元という側面もあり(微分より、積分が特に難しい)、高校数学の一番の山場であると言っていい。

関連項目[編集]

脚注[編集]