積分(せきぶん)とは、数学において、細かく分かれたものを足し合わせていくことである。いわば、高級な足し算・掛け算である。
例えば、列車に乗っていて、スピードメーターを見ながら列車の走行距離を推定することを考える。1時間毎に見たメーターの値が105km/h, 82km/h, 90km/hであれば、3時間で105+82+90=277kmぐらい走っただろうと推定される。
これをもっと正確に知りたい場合、時間刻みを細かくすることが考えられる。例えば10分毎にメーターを見て、結果を足し算した場合、より正確に走行距離を求めることができる。できれば、1分、10秒、1秒、0.1秒・・・とメーターを見る間隔を無限に小さくしていきたい。時間間隔を無限に小さくして、スピードメーターの各瞬間の値から素行距離を求めること、これが積分である。
積分には、定積分と不定積分の2種類がある。定積分はさらに種類が多く、線積分や面積分といったものもある。
定微分[編集]
一番オーソドックスなもの。例えばxをaからbまでといった風に、ある決まった区間で積分を行うもの。定義は様々な種類があるが、例えば(正確性には欠けるが)以下の様なイメージで考えることができる。これは、aからbまでを間隔で区切り、区切ったx毎にを求め、足し合わせているものである。
積分の計算は、微分の逆演算と考えて行う。積分と微分の間には、次の様な関係式が成り立ち、これを微分積分学の基本定理と呼ぶ。
主な関数の定積分は次の通り。なお、は自然対数(2.71828・・・)を表し、三角関数の角度の単位はラジアンとする。
なお、積分記号の後ろにつけるdxは、微分形式と呼ばれるものである。微分形式は、正確には実はベクトルから座標の値を返す写像であるが、基本的には積分に使う変数とみなして問題無い。積分の中身は、微分形式の形になっている必要がある。
不定積分[編集]
微分の逆演算そのもの。微分したら元に戻る関数、即ち原始関数を求めるのが不定積分である。そのため、不定積分と微分の間には次の様な関係が成り立つ。
ちょうど、定積分の所で記した「aからbまでの区間の定積分」で、aの項を無視したのが不定積分である。主な関数の不定積分は次の通り。
不定積分の特徴として、積分した結果にの項が追加されている。これは積分定数と呼ばれる。不定積分は、結果が一つに決まらず、例えばすべての定数関数の微分が0になるので、の不定積分は全ての定数関数としなければならない。そのため不定積分は、「積分した結果」+「任意の定数関数」という形で表現され、この定数関数部分をCという記号で置くことが多い。
全体的に、積分するとより難しい関数になる傾向があるが、指数関数や三角関数の場合、積分してもさほど難しくならない。そのため、積分しやすい関数として重宝されている。一方、不定積分の逆演算である微分だと、関係が逆になり、指数関数・三角関数以外ではたいてい簡単な関数になる。
置換積分、線積分[編集]
積分の後ろについているdxをうまく利用し、合成関数の積分を行うこと。例えば、変数を、で置換したとすると、次の様な式が成り立つことになる。
これを使うと、例えば平面上の曲線上で積分する、といったことも可能である。これを線積分と呼ぶ。例えば、を平面上の曲線とした時、次の様な積分を考えることができる。
ここで、線積分の場合、仮にLの起点・終点が同じでも、0になるとは限らない点に注意する必要がある。例えば半径1の円、上で次の様な線積分を考えると、起点から終点まで一周しているのに0にならない。
また、空間上の曲面に対する積分、即ち面積分を考えることも可能である。
運動方程式やマクスウェル方程式など、微分方程式で表される物理現象・経済現象の多くを解くのに、積分およびその逆演算である微分がよく用いられる。理工系はもちろん、経済学などでも必須のアイテムである。
そのため微分・積分は、高校数学の中で最も応用範囲の広い単元であるとも言える。一方で、最も難しい単元で、中でも積分は特に難しいという側面もあり、高校数学の最大の山場であると言っていい。
関連項目[編集]