トヨタ・ヴィッツ

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ヴィッツ(Vitz)とはトヨタ自動車が製造していた自動車である。ハッチバック型の小型ボディに1~1.5Lのエンジンを搭載しており、一部グレードにおいてはスポーツ志向を強めたホットハッチとして人気があった。トヨタ・スターレットトヨタ・カローラIIの実質的な後継車に位置する車である。

2020年2月のフルモデルチェンジの際、名称を海外で使用されていた「ヤリス」に統合される。

概要[編集]

AセグメントからBセグメントに属するコンパクトカーであり、パーソナルカーとしての利用から4人乗車のファミリーカーとしても使える自動車である。特に初代登場当時はその車内空間の広さから一気に人気を獲得したものである。海外では「ヤリス(Yaris)」の名で展開されており、特に欧州での人気が高いものである。そのためかトヨタ・ファンカーゴ(海外名:ヤリスヴァーソ)というフルゴネットを想起させるようなトールワゴンも派生車種として展開されていた。

なお、初代に採用されたNBCプラットフォームは数々の派生車種を生み出しており、スポーツカーから商用車まで幅広い派生車種が存在する。

ホットモデル[編集]

初代から「RS」の名を冠するスポーツグレードが存在している。初代RSのNAモデルは88PSと控えめながらも直列4気筒DOHCエンジンが気持ちよく回るため、乗って楽しい車の一つとして評価が高い。ターボモデルはかつてのスターレットターボを想起させるような動力性能を持ち、さらにはオプションでヘリカルLSDを搭載することもできるため[1]通常モデルよりインチアップしたタイヤと相まって良いハンドリング性を実現している。特に初代は剛性に優れた3ドアもあったため、スポーツ走行用のベースカーとして人気が高かった。三代目になるとトヨタ公式チューンドカーともいえるGRMNが2013年に限定発売され、国内仕様にはない3ドア仕様の車体をベースに1.5Lエンジンとターボを組み合わせ、強化型ロアアームサスペンションの剛性を確保、ブレーキも専用キャリパーの採用で性能が向上しているものである。なお、2017年にもヴィッツGRMNとして1.8Lエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせただけではなく、ロータスがエンジンのチューニングを手掛けるなどピュアスポーツカーとして仕上げられている。

モータースポーツ[編集]

初代からモータースポーツに利用されてきた車であり、ナンバー付きワンメイクレース全日本ラリー選手権ジムカーナなど数々のレースに参戦している。 近年ではトヨタのワークスチームであるTOYOTA GAZOO Racingがヴィッツにラリー用に制御システムをチューニングした専用のCVTを採用[2]。スポーツCVTと呼ばれたこのCVTは市販車であるGRヴィッツにフィードバックされ、10速シーケンシャルCVTとして搭載されている。[3]

初代(10系)[編集]

トヨタ・ヴィッツ(10系)
販売期間1999~2005年
ボディタイプ3ドアハッチバック
5ドアハッチバック
エンジン1SZ-FE 1.0L
2SZ-FE 1.3L
2NZ-FE 1.3L
1NZ-FE 1.5L
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
※RSターボのみ無鉛プレミアムガソリン
トランスミッションフロアMT5速/フロアAT4速/
CVT
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

3,630mm
1,500mm
1,660mm
車両重量930kg
サスペンション(F)ストラット式
(R)トーションビーム式
ブレーキ前輪:ベンチレーテッドディスク
後輪:ソリッドローターディスク
最高出力88PS/6000rpm
最大トルク12.5kgm/4400rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などはRS(1.3L)のデータを掲載

初代ヴィッツとなる10系ヴィッツは1998年にパリで開催されたモンディアル・ド・ロトモビル(パリモーターショー)で初公開され、翌年の1999年に日本国内で販売が開始される。コンポーネントのすべてが新開発となっており、この時に開発されたプラットフォームがNBCプラットフォーム(New Basic Conpact)である。前述のとおり、多数の派生車を生み出すことになった。また、デザインはトヨタのデザインセンターであり、ベルギーに設立されていたトヨタエポックが手掛けているなど、当初から欧州志向であったことがうかがえる。その結果か、2000年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー受賞となる。これはトヨタ初であり、日本車においても1993年の日産・マーチ以来2度目の快挙となる。

当初は排気量1Lで70PSを発揮する1SZ-FEのみの設定となっており、軽量な車体(800kg台)においては必要十分な性能を持っていた。また、コンパクトな車体でありながら5ドアハッチバックで乗車定員5人を達成している。大人4人の乗車はさすがに快適とは言えないものの、大人二人と子供程度であれば必要十分であった。

RS[編集]

2000年に1.5Lで110PSを発揮する1NZ-FEか1.3Lで88PSを発揮する2SZ-FEエンジンを選べるスポーツ志向のグレード「RS」が設定される。RSは専用のグレードエンブレムが装着されるほか、バケットシート風のスポーツシートやタコメーターが装備される。また、後輪のブレーキがドラム式からディスクに変更されているほか、足回りも硬めの仕上がりになっている。マニュアルシフトの操作感もカチッとした感触を味わうことができる。 110PSでも軽量な車体としっかりした足回りが相まってワインディングなどでも楽しく走ることができるほか、少々非力な1.3Lモデルでもエンジンパワーを使い切ることができる楽しさを味わうことができる。エンジンの吹け上がりも自然吸気ならではの素直でフラットなものであり、扱いやすくドライバビリティに優れるものである。一方でエンジン音は初代プロサクそのもの。スバルEJ型エンジンホンダVTECのような官能性はいまいちと評価する声も聞かれる。

RSターボ[編集]

2003年に特別仕様車であるヴィッツRSターボが販売される。これは1.5LのRSにTRDのターボチャージャーを装着。付随してクーリングダクトやインタークーラーやオイルクーラーも新たに装備。ECUも専用品となり、結果150PSを発揮する。メーカー純正のライトチューン済みであるといっても過言ではなく、吊るしの状態でもよく走るといわれるほど完成度が高かったものである。それでいながら5ドアも選択することができ、後部座席の仕様にも不自由がないなど日常の足車としても十分使えるなどそちらの完成度にも手を抜いていないのはさすがトヨタといったところか。なお、RSターボと同様のターボを後付け可能なキットもTRDから販売されており、すでにRSを買ってしまった人がボルトオンターボ仕様にモディファイすることもあったとか。また、オプション装備として車高調整式サスペンションキットや四点式シートベルトを前提としたバケットシートも用意されており、本気で走る人までターゲットにしてしまった車でもある。なお、当然のことながらモータースポーツに利用されることも多かったと聞く。

2代目(90系)[編集]

トヨタ・ヴィッツ(90系)
販売期間2005~2010年
ボディタイプ5ドアハッチバック
エンジン1KR-FE 1.0L
2SZ-FE 1.3L
2NZ-FE 1.3L
1NZ-FE 1.5L
1.0L以外は直列4気筒
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
※TRDターボMはハイオク指定
トランスミッションフロアMT5速/フロアAT4速/
CVT
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

3,800mm
1,520mm
1,695mm
車両重量1,040kg
サスペンション(F)ストラット式
(R)トーションビーム式
ブレーキ前輪:ベンチレーテッドディスク
後輪:ソリッドローターディスク
最高出力110PS/6000rpm
最大トルク14.4.5kgm/4400rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などはRS(1.5L)のデータを掲載

2005年にフルモデルチェンジを受け2代目となったヴィッツである。ボディを拡大し、衝突安全性や走行安定性に寄与しているとされている。なお、先代に合った3ドアモデルは国外仕様のみとなっており、日本国内は5ドアモデルのみとなっている。

エンジンは基本的に先代を踏襲しているものの、1.0Lエンジンについてはトヨタとダイハツの共同開発[注 1]であるKR型エンジンが採用されており、ヴィッツ初の3気筒エンジンとなった。駆動形式は前輪駆動四輪駆動が採用され、基本的に前輪駆動にCVTが、四輪駆動に4速ATが組み合わされる。一方でスポーツグレードであるRSは5速MTが組み合わせられる。先代ヴィッツのCVT採用はモデル中期のマイナーチェンジであったが、CVTのフィーリング改善とコンパクトカー+CVTという当時のトレンドを抑えていることが評価されている。

ボディを拡大したことで重量が増加したものの、それでも1トン以下の車重に抑えられている。そのため、僅か70PSちょっとの出力でも軽快に走ることができるという。また、拡大の恩恵は荷室の広さにも表れており、先代に比べて69リッター拡大され274リッターの容量を有する(VDA式の比較による)。

内装は先代のようにセンターメーターが採用されている。また、室内空間の広さは先代より明らかに進化しており、リアシートもスライドとリクライニングが可能なものになっている(グレードにより通常のシートの場合もある)。前席シートはそれなりであるものの、助手席のクッション前部に収納式の衝立が用意されており、助手席に置いた荷物がブレーキングで飛び出すことを防ぐ「買い物アシストシート」と名付けられている。RSの場合はスポーツ調のシートとなっている。センターコンソールが縦長になっているのも特徴の一つであり、通常横並びになることが多いエアコン操作ダイヤルが縦に並んでいるデザインは目につきやすい。カーオーディオは専用のインパネ一体型タイプの物や純正カーナビゲーションが選択できる。一方、車外ナビの取り付けが一筋縄ではいかないという点もある。

2007年7月、RSをベースにTRDチューニングした「トヨタ・ヴィッツTRDターボM」を発売。エンジンスペック上は先代のRSターボ同様であるものの、専用ターボによるハイパワーだけでなく足回りも入念にセッティングされている。FFかつ5速マニュアルのみ設定されており、軽快なホットハッチの楽しさを存分に味わうことのできるモデルとされている。ベースのRSよりも60万円近く高価になっているものの、40PSの出力向上と足回りのセッティング込みと考えれば安いものである[注 2]

2009年にはトヨタの新プロジェクトである「デコクレ」の第一弾に選定される。デコクレとは女性にとってクルマを身近にするというトヨタの取り組みの一つであり、ヴィッツFをベースに女性向けの特別仕様車とした「ヴィッツFシャンブル ア パリ コレクション」を発売した。

トヨタのGAZOO Racingのコンセプトカーとして「GRMN ヴィッツターボコンセプト」がRSをベースに開発されていたこともある。エンジンスペック的にはヴィッツTRDターボMと同様であるものの、剛性を重視し海外仕様の3ドアボディをベースとしているほか、ボンネットにエアスクープが設けられ、マフラーがセンターマフラー化されるなどエクステリアにも相当手を入れられている。なお、フルモデルチェンジ後のヴィッツをベースとした「ヴィッツGRMNターボ」として販売された

3代目(130系)[編集]

トヨタ・ヴィッツ(130系)
販売期間2010~2020年
ボディタイプ5ドアハッチバック
エンジン1KR-FE 1.0L
1NR-FE 1.3L
1NR-FKE(HV)
1NZ-FE 1.5L
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
※過給機モデルのみハイオク指定
トランスミッションMT5速/MT6速/CVT/電気式無段変速機
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

3,630mm
1,500mm
1,660mm
車両重量1030kg
サスペンション(F)ストラット式
(R)トーションビーム式
ブレーキ前輪:ベンチレーテッドディスク
後輪:ソリッドローターディスク
最高出力109PS/6000rpm
最大トルク14.1kgm/4400rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などはGRスポーツ(1.5L)のデータを掲載

2010年12月にフルモデルチェンジしたヴィッツであり、ヴィッツの名を冠する最後のモデルである。先代、先々代のような丸みを帯びたデザインからエッジを強めたデザインとなっており、フロントフェイスも凛々しいデザインを採用している。ボディサイズについては全幅はそのままに全長とホイールベースを伸ばしている。なお、先代と同様に国内では5ドアモデルのみの投入である(GRMNを除く)。また、トランスミッションもCVTが主軸となっており、RSのみ5速MTとの選択式である。

エンジンは1.0Lと1.5Lは先代と同様であるものの、1.3LモデルがKRエンジンと同様にトヨタとダイハツが共同開発したNR型エンジンが新たに採用された。この1.3Lエンジンを搭載するモデルの燃費は24.0km/Lに延びている。重量についても1.3Lモデルで1000kg付近であり、1.0Lモデルで970kg程度である。

内装の大きな変更点として、ヴィッツの伝統であったセンターメーターは廃され通常と同様の運転席側にメーターが装備されるようになった。エクステリア同様、インテリアも従来の丸みを帯びたデザインは残しつつ、水平基調的なデザインに変更されている。また、車載ジャッキの収納位置が助手席下になっている。またUグレードにおいてはハンドルが本革巻きとなる。

スポーツグレードはRSのほか、新たにRS G'z、GRスポーツとGRスポーツ"GR"、限定生産のGRMNターボとヴィッツGRMNが設定されていた。RSはそれまでと同様のスポーツテイストなベースグレードであり、RS G'ZはRSをベースに空力と足回りのチューニングがなされたものであった。それぞれ専用の内外装が用意されていた。2017年のフェイスリフト以降はRSやRS G'sの後継としてGRスポーツが設定される。こちらもトヨタのGRシリーズと合わせた専用ロゴや内外装をまとっており、剛性強化やサスペンションチューニングがなされている。GRスポーツ"GR"ではさらに専用ショックの装備や補強ブレースの新設のほかブレーキも対向ピストン型に変更されるなどオオがかかりなチューニングをメーカー純正で行われている。CVTの場合は10段CVTが採用されており、パドルシフトでの変速も可能である。一方で最小回転半径はノーマルのヴィッツの4.8mに対して5.6mとなる。GRMNターボはこのグレードにターボを付けたようなものであり、従来のRSターボ同様の位置づけとなるほか、GRMNヴィッツターボコンセプトのように3ドアボディを使用していることも特徴である。GRMNターボは200台限定で発売された。

ヴィッツGRMNは150台限定であり、1.8Lの2ZR-FEにターボではなくスーパーチャージャーと6速トランスミッションが装備される。メーターも260km/hスケールのメーターとなっており、専用のナビに至ってはモータースポーツ用のモニターとして使用できる機能を備えている[注 3]。出力が212PSと大幅に増加したことに伴い、ザックス製のサスペンションやブレーキの大径化なども併せて行われている。そしてヴィッツのGRMNの例に漏れず3ドアボディである。価格は400万円とヴィッツGRの230万から200万近く高価になっているものの、作業工数やその性能から安いという意見も。

2017年にはハイブリッドモデルを追加。ハイブリッドシステムに合わせたエンジンである1NR-FKEを搭載し、システム全体で100PSを発揮する。トヨタには同セグメントにハイブリッド専用モデルであるトヨタ・アクアが存在しており、需要の食い合いを指摘する声は多かったものである。一方、ヴィッツが属するBセグメントにはハイブリッドシステムを搭載するモデルが多く、他社との商品力のギャップから必要に駆られて設定せざるを得なかったのではないかと言われている。事実、ハイブリッド車としての完成度は今一つという評価もあり、ハイブリッドのグレードを求める客層に対して硬めのサスペンションがミスマッチングではないかという意見もみられていた。とはいえ、基本設計が2010年に発売した車であり、それ以降に発売された他社のBセグ車や最初からハイブリッドシステム搭載が前提として設計されたアクアと比較するのも酷である。

2020年2月に発表された4代目から名称をヤリスに統一。ヴィッツの販売も2020年3月ごろに終了し、トヨタのラインナップからヴィッツの名が消滅した。

3代目[編集]

  • 形式=DBA-NSP135
  • グレード=F
  • 販売期間=2010年〜2020年
  • 全長=3885mm
  • 全幅=1695mm=MSサイズ
  • 全高=1500mm
  • 室内長=1920mm
  • 室内幅=1390mm
  • 室内高=1250mm
  • トランスミッション=CVT
  • 駆動方式=
  • ボディタイプ=ハッチバック
  • タイヤサイズ=165/70R14、タイヤ外径=586mm
  • ドア数=5ドア
  • シート列数=
  • 乗車定員=
  • 最低地上高=
  • ハンドル直径=
  • フューエルリッドのふたの長さ=円型で、直径14.2cm
  • スピードリミッター=
  • ボンネットの長さ=62cm
  • 地面からボンネットまでの最高の高さ=99cm
  • 室内の床下からダッシュボードまでの最高の高さ(床マット無し)=cm
  • 室内の床下から運転席の椅子の底部までの最高の高さ(床マット無し)=cm
  • アクセル=縦:cm、横:cm
  • ブレーキ=縦:cm、横:cm
  • フロントガラスの広さ=幅(横):上部cm、下部cm、縦(ガラスに沿った場合)78cm
  • メーターの数字の文字の角度=横向き

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 厳密には開発・製造はダイハツ、可変バルブ機構にトヨタの技術を利用
  2. かつては1PSを増やすのに1万円が必要と言われていた
  3. アクセル開度や水温、ラップタイムやラリータイマーなど

参考[編集]