四輪駆動

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四輪駆動(よんりんくどう)とは、自動車駆動方式の一種。全輪駆動とも。本稿では一般的なイメージに即し、四輪駆動に統一するものとする。

概要[編集]

常時、または必要に応じて全ての車輪タイヤ)に駆動力を伝える方式である。エンジンの動力が伝わる駆動輪が四輪あるもの。普通自動車では4つのタイヤ全てにエンジンの駆動力が伝わるタイプ。四輪駆動(Four Wheel Driveで4WD)や全輪駆動(All Wheel DriveでAWD)という呼び方もあり、日本国内では「4WD」、スバルや米国では「AWD」、欧州などでは「4x4」と表記されることが多い[注 1]。全輪駆動は前輪駆動との混同から曖昧さ回避のため四輪駆動と表記することが多い。一方、ダブルタイヤや多軸車の場合は〇輪駆動と表記する必要があるため、それらをまとめて全輪駆動とする場合もある。スバルがAWDの表記に固執するのはそのうち6輪駆動車や8輪駆動車をリリースする布石である

悪路走破性の高さをイメージする車が多く、かつては四輪駆動車といえばジープの代名詞であり、基本的にクロスカントリータイプの車を意味していた。現在のような生活四駆と呼ばれるジャンルの四輪駆動車は富士重工(現:スバル)が1972年にリリースしたレオーネエステートバンが世界初とされている。東北電力からの依頼で制作した特製車が元となっており、豪雪地帯などを中心に普及が進んだ。 現在では従来のクロスカントリータイプのほか、通常のセダンSUVなどにも搭載されるようになっている。

四輪駆動車は二輪駆動車に比べて雪道・泥濘地での安定性において優位に立つものの、当然万能ではない。自動車のマニュアルにもその旨が書かれていることも珍しくなく、当該路を走行するときは適切な装備(スタッドレスタイヤやチェーンなど)が必要不可欠である。また、四輪駆動装置は同モデルの二輪駆動車よりも重く[注 2]、特に下り坂などではより慎重になる必要がある。かつては四輪駆動の性能を過信し、ノーマルタイヤやオールシーズンタイヤでスキー場へ向かおうとして事故を起こすケースが多かった。冬の風物詩である。

四輪駆動の方式[編集]

四輪駆動はいくつかの方式があり、大きく「パートタイム式」「スタンバイ式」「フルタイム式」に分類できる。

パートタイム式[編集]

通常は前後どちらかの駆動輪で走行し、必要に応じて車内のトランスファーを操作して2WD⇔4WDに切り替える方式である。前後輪の回転数の調節の機能は無く、4WD使用時では、タイヤの回転数のトルク配分は、どの4WDモードに関係なく、「前輪50%:後輪50%限定」となる。この方式は基本的に前後輪を直結するため、カーブなどで前後左右の回転差を吸収しきれずにブレーキがかかったようになる「タイトコーナーブレーキング現象」が発生しやすいほか、吸収しきれない回転差がフロントやリアのデファレンシャルギアに熱となって蓄積され、最悪の場合は車両火災になることもある[注 3]。しかし泥濘地からの脱出力や悪路走破力は最も優れており、本格的なクロスカントリー車で用いられることが多い。パートタイム4WDは、センターデフを持たないため、4WD使用時は、タイヤの回転数のトルク配分は前輪50%:後輪50%限定固定で、センターデフロックのみと同じ扱いの状態になる(?)。

スタンバイ式[編集]

パートタイム同様に通常時は駆動輪(二駆)のみで走行し、何らかの原因で駆動輪が空転した場合、即座にもう一方の車軸に動力を伝達するものである。初期は急激に車両特性が変動し、コントロール性も良くないものであったが近年では改良が進み、実用的なものになっている。日産のアテーサET-Sも広義のスタンバイ式に含まれ、通常は後輪駆動の軽快なハンドリングを、発進時はホイルスピンを抑え全輪で駆動力を余すことなく伝える事ができるなどスポーツ走行に特化した四輪駆動システムも開発されている。

フルタイム式[編集]

パートタイム、スタンバイ式と違い、常にすべての車輪に動力を伝える方式である。常時4WDの自動的な設定である。前後輪の回転差を吸収するためのデファレンシャルギア(センターデフ)や電子クラッチ機構を採用し、直結AWDのようなタイトコーナーブレーキング現象が発生しにくい特徴がある。空転対策としてLSD(ブレーキLSD含む)を採用しており、前後の回転差が一定以上になると回転差を吸収しなくなるようになっている。別途デフロックを行うスイッチが装備されることもある。悪路だけでなく、乾燥路においても力強い加速感と安定したコーナーリングは独特のフィーリングを持つ。 特別な操作を使用せず四輪駆動のメリットを享受できるものの、常に回転差を吸収することになるためセンターデフの負担も大きく、前後輪に径の違うタイヤを装着したまま走行を続けるとパートタイム式と同様の理由で車両火災になることもある。

どの方式が優れているかについては、想定される路面状況、シチュエーション、天候などで大きく変わるため、一概に評価することはできない。どの方式にも一長一短があり、設計指向やオーナーの嗜好により左右されるといっても良い。

「トランスファー」と「副変速機」の違い[編集]

「トランスファー」と「副変速機」は、共に4WD&SUV専門用語である。「トランスファー」と「副変速機」の違いは、「トランスファー」は、「2WD」「ハイレンジ4WD」「ローレンジ4WD」のように、「駆動方式の設定=タイヤの回転数のトルク配分の設定」と「変速の設定」を組み合わせた機能のことで、「副変速機」は、「ハイレンジ⇔ローレンジ」の2つの切り替え機能のことで、「変速の設定」のみの機能のことで、「トランスファー」から「駆動方式の設定=タイヤの回転数のトルク配分の設定」を取り除いたものである。

特殊な四輪駆動[編集]

電気自動車においては各車輪にモーターを配置する構想があり、いくつかの試作車が開発されている。また、前後輪どちらかをエンジンで、もう一方をモーターで駆動するe-4WDというシステムが存在する。日立製作所が開発し、主に日産が採用した。FF車ベースで開発することで室内空間を犠牲にせず、さらには部品点数も少なくなるという利点があった。

また、三菱・パジェロなどの三菱自動車製のSUVなどに採用されていたスーパーセレクト4WD-IIトヨタ・ハイラックスサーフに採用されていたマルチモード4WDという駆動方式もあった。パートタイム4WDとフルタイム4WDを兼ね備えた仕組みであり、二輪駆動とフルタイム四輪駆動、そして前後直結の四輪駆動を路面状況に合わせて選択することができた。そのほかにも四輪駆動の制御をコントロールする技術が各自動車メーカーからも開発されており、前述した日産のアテーサの他、スバルの一部モデルに搭載されるドライバーズコントロールセンターデフのような前後のデフロック率を変更するシステムやトヨタの一部モデルに搭載されるダイナミックトルクベクタリングAWDのような左右輪のトルクを独立制御することで旋回時の安定性と回頭性を高めているシステムもある。

関連項目[編集]

  • SUBARU - 水平対向エンジンと四輪駆動をアイデンティティとするメーカー
  • 日産自動車 - アテーサET-Sを搭載したスカイラインGT-Rは今なお高い評価を受ける。
  • 未舗装路
  • SUV

脚注[編集]

  1. 海外では商標の関係で4WDを避ける傾向があるらしい。また、日本メーカでもAWDを使う企業が増えており、スバルの他トヨタとホンダ、マツダの3社が自社の四輪駆動システムにAWDの名を与えている
  2. インプレッサ スポーツワゴン(GF)において、同モデルの1.5Lの場合、FFが1100kg、4WDが1160kgと、約60kgの増加になる
  3. そのため、この機構を用いる車両の場合は乾燥した舗装路での使用を控えるような注意書きがなされていることが多い