キリン
キリン(英:giraffe 学:Giraffa camelopardalis)とは、鯨偶蹄目キリン科キリン属に属する哺乳類の総称である。
概要[編集]
世界で最も背が高い動物である。体長は、3~5m[1]で、肩高3.6m、頭頂高5~5.5m、尾長75~100cm、体重は550~900kgになる[2]。
雌はオスより小さい。体毛は短い。淡黄褐色の地に暗褐色の斑紋がある。
斑紋は、網目状や星のような形をしており、個体によって斑紋の色や形が異なる。
目は顔の左右にある。くびと前足の長さはほほ同じである[2]。
ツノは、オスにもメスともあり[2]、頭の上に1対の主角、おでこに前角が1本、主角の後ろに後頭角が1対ある[1]。
頭まで血液を送るために、心臓は高いところにある。それでも2.5mの距離があるため高血圧で、血圧は260mmHgもある。水を飲むために頭を下げると400mmHgまで跳ね上がる。
後頭部には「ワンダーネット」という綱目状の毛細血管があり、それが急激な血圧の変化を防いでいる[3]。
後ろ足よりも前足にかかる体重のほうが多い。皮膚が引き締まっているため、血液が溜まりにくい。
キリンという和名が用いられるようになったのは、上野動物園の開園にあたって目玉となる動物が欲しかったので、瑞獣としての「麒麟」にあやかって命名して予算を取ってきたという由来があるという。当時の人はキリンビールのラベルとかドドンゴみたいなものは想像しなかったのか、「とりあえずデカい」で満足したらしい。
生態[編集]
サハラ砂漠や熱帯雨林以外のアフリカの草原地帯に生息する[1]。
昼行性である。約2~10頭の群れで生活する[2]。アカシアなどの木の葉、小枝、果実を舌で巻き取って食べる[4]。たんぱく質を得るためなのか、小鳥を食べることもあるという。
寿命は、野生では10~15年で、飼育下では20~30年である[3]。
一日中、葉などを食べており、2時間から3時間しか眠らない[5]。胃は4つあり、食べたものを胃から口に戻し、再び噛んで飲み込む「反芻」をする[1]。
雄は木の一番高い所の葉を食べるが、雌は胴体や膝のあたりの低い木に生えている葉を食べる[3]。また水は主に葉からとり、あまり水を飲まず、乾季になっても他の動物のように移動しない[3]。
前足を折り曲げ、横に広げて前かがみになり、首を下ろして水を飲む[4]。
右前足と右後足、左前足と左後足を同時出して歩く。時速50kmの速さで走ることが出来る。
メスを巡り、オス同士で首をぶつけあい角を当てて戦う「ネッキング」を行う[4]。この時に首の骨が折れる時もある。
メスは5歳、オスは3歳で、性成熟する[5]。 妊娠期間は453〜464日で、1腹1子である[6]。繁殖は、1年中可能[5]。
天敵からすぐに逃げるために、一生のほとんどを立って過ごす。
声帯は、あまり発達しておらず,ほとんど声を出さない[2]。出産や幼時の時に声を出すことがあり、「モォー」と鳴く。
種類[編集]
1904年、Lydekkerがキリンを2種11亜種に分類する。
1976年、Anne Innis Daggはキリンを1種9亜種に整備した。国際自然保護連合は現在でもこの分類に従っている。
2016年に発表された論文によるとキリンは四種に分かれるとされた[7]。
2020年の研究によれば、キタキリンとアミメキリンは同種とされ、三種となった。
2021年には、全ゲノム配列決定をした研究で、キリンは4種7亜種である事が示唆された。
12種類説 | 9(亜)種説 | 8種説 | 4種説 | 3種説 |
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コルドファンキリン G. c. antiquorum |
コルドファンキリン G. c. antiquorum |
キタキリン G. camelopardalis |
キタキリン G. camelopardalis | |
G. c. cottoni | ||||
G. c. congoensis | ||||
ヌビアキリン G. c. camelopardalis |
ヌビアキリン G. c. camelopardalis |
ヌビアキリン G. camelopardalis | ||
G. c. typica | ||||
ウガンダキリン G. c. rothschildi | ||||
ナイジェリアキリン G. c. peralta | ||||
アミメキリン G. c. reticulata | ||||
アンゴラキリン G. c. angolensis |
ミナミキリン Giraffa giraffa | |||
ケープキリン G. c. giraffa |
ケープキリン G. c. giraffa | |||
G. c. wardi | ||||
マサイキリン G. c. tippelskirchi |
マサイキリン Giraffa tippelskirchi | |||
ローデシアキリン G. c. thornicrofti |
保全[編集]
キリンは、肉や毛皮、骨、尻尾のために狩猟が行われている。
国際自然保護連合によれば、キリンの個体数は、1985年~2015年の間で40%も減少して、個体数が10万頭を下回った[8]。
特にアフリカ中部と東部地域で、減少率が高い。
2018年までの30年間に、アミメキリンは約60%、コルドファンキリンは85%、ヌビアキリンは97%も減少している。2021年12月に発表された論文によると2015年に比べて約20%、11万7000頭に増加したと判明した[9]。
ニジェールでは、1996年にキリンが49頭まで減少したが、20年間で600頭に増加した[8]。
1996年にニジェールで起きたクーデターで大統領になったイブライム・バレ・マイナサラが、ナイジェリアやブルキナファソの大統領に贈呈するために、野生動物を捕獲したが、捕獲されたキリンの全ての個体が、死んでしまい、ナイジェリアキリンの個体数が3分の1近くになった。 2011年に、ニジェール政府が、キリンの密猟を取り締まるようになり、ニジェールでキリンが増加するようになった[8]。
脚注[編集]
- ↑ a b c d キリン - よこはま動物園 ズーラシア
- ↑ a b c d e キリン - コトバンク
- ↑ a b c d キリン - 札幌市円山動物園
- ↑ a b c キリンという不思議な動物
- ↑ a b c 動物図鑑 キリン - 愛知県立とべ動物園
- ↑ キリン - 神戸市立王子動物園
- ↑ Christine Dell’Amore (2016年9月12日). “キリンは1種でなく4種との報告、遺伝子解析で”. atgeo.nikkeibp.co.jp 2023年9月19日閲覧。
- ↑ a b c ジョシュア・フォア (2019年9月29日). “キリンが直面する「静かなる絶滅」”. natgeo.nikkeibp.co.jp 2023年9月19日閲覧。
- ↑ DOUGLAS MAIN (2022年1月18日). “野生のキリンが増えている、最新報告”. natgeo.nikkeibp.co.jp 2023年9月19日閲覧。