間接自動加速制御
間接自動加速制御(かんせつじどうかそくせいぎょ)とは、抵抗制御のうち、制御電源を主幹制御器に引き込んで速度を自動で制御するものである。
概要[編集]
電車・電気機関車の制御は、草創期は、直流電動機に流す電流をマスコンで直接制御する直接制御により行っており、路面電車では現在も残っている。しかし、高圧電流を直接制御する必要があり、さらに2両以上の編成を1人の運転士で総括して制御する総括制御のニーズが高まるにつれ、電動車にある主制御器を運転台で低電圧で間接的に制御する間接非自動加速制御が登場。さらに、速度制御を自動化して運転士の手間を省こうという目的で登場したのがこの間接自動加速制御である。またの名を間接自動制御ともいい、全国の直流電化の路線に広まった。
もちろん、応答性が直接制御より悪い、非自動加速制御との総括制御が困難という欠点も存在し、各軌道事業者や下津井電鉄、高松琴平電気鉄道のように以降の導入をためらう業者も存在した。
主な方式[編集]
間接非自動加速制御では電磁単位スイッチ式や電空単位スイッチ式がほとんどであるが、自動加速制御の場合は以下の、カム軸で接触器を動かす方式も選ぶことができた。
電空カム軸式[編集]
そのカム軸を電気制御した空気圧で動かす方式。
電空油圧カム軸式[編集]
そのカム軸を電気制御した空気圧から油圧に変換し、それで動かす方式。
電動カム軸式[編集]
日本で最も普及した方式。これは電気モーターでカム軸を動かす方式である。東洋電機製造はこの方式を「デッカー・システム」としてEE社から技術を導入しいち早く国産化した。
以上の方式は多段化した際に制御装置を小型化できるメリットがあったが、大出力への対応が困難であった。このため、電気機関車には向かないとされていたが、1965年に国鉄がEF65で実現させている。
各社の状況[編集]
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名古屋鉄道[編集]
戦前から三菱、日立、東洋、東芝の各社から自動加速制御を導入しており、この傾向はカルダン駆動導入後も2021年現在まで続いている。なお、この方式を使用した旧性能車はAL車[注釈 1]という呼称がついた。
高松琴平電気鉄道[編集]
日立から電動カム軸式自動加速制御の車両を導入した際に他車と総括制御ができず、急行の廃止後はもてあまされた。その後、間接非自動加速制御に取り換えられて一旦消滅。それからしばらくしてマスコンは非自動加速制御のままで制御装置のみ自動加速制御とした通称「見做しHL」を導入して現在に至る。これにより非自動加速制御と自動加速制御を同時に総括制御したうえでの併結運用が可能になった。
国鉄[編集]
戦前にはCS5という電空カム軸式の制御装置が広く普及したが、電動カム軸式の導入は戦後からであった。
近鉄大阪線[編集]
雑多な会社をまとめた近畿日本鉄道では路線ごとに解説する。大阪線では戦前の関西急行電鉄時代より三菱電機製の単位スイッチ式自動加速制御器を導入、以降2400系が登場するまで電動カム軸式に移行しなかった。
2400系以降は三菱・日立の電動カム軸式制御器を導入するようになり、これは界磁チョッパ制御にも引き継がれた。単位スイッチ式自動加速制御についても比較的遅くまで残り、2002年に2470系が全廃されるまで使用された。
近鉄奈良線[編集]
自動加速制御の導入は比較的遅く、戦後の新性能車800系が最初である。なお、当時は架線電圧がDC600Vであったため、1969年の昇圧時に自動加速制御に統一された。
近鉄京都線[編集]
奈良電気鉄道としての開業時から電動カム軸式の自動加速制御器を投入しており、680系で単位スイッチ式、18000系で非自動加速制御を投入した以外はこの傾向が続いた。1969年の昇圧時に自動加速制御に統一されている。
近鉄名古屋線[編集]
電化後、1928年より電空カム軸式の自動加速制御器、翌年には電動カム軸式が導入された。改軌後は大阪線の単位スイッチ式制御器も併用され、先述の2470系もここで晩年を迎えた。
小田急電鉄[編集]
戦時中に大東急に統合され、その際に国鉄モハ1形を払い下げられたことが自動加速制御の始まりである。その直後には1600形が製造され、この部類より自動加速制御の旧性能車両にABF車[注釈 2]という呼称がついた。この時点では単位スイッチ式であったが、戦後63系が割り当てられ1800形が登場した際に電空カム軸式を導入。新性能車両であるABFM車2200形から電動カム軸式を導入している。初代4000形が登場した際に旅客車から非自動加速制御が、2100形や1900形が全滅した際に単位スイッチ式制御器が全廃となった。
その後、1800形の更新時に油圧カム軸式を導入している以外は最後の直流電動機搭載車両8000形まで三菱電機製の電動カム軸式制御器とされた。
一方、ロマンスカーについては抵抗制御として最後となる20000形まで一貫して東芝製の電動カム軸式が採用され続けた。
発展させた方式[編集]
界磁チョッパ制御や界磁添加励磁制御についてもこの間接自動加速制御を発展させたものである。またチョッパ制御やVVVFインバータ制御についても主幹制御器は間接自動加速制御のものを使用している。