小田急8000形電車

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
小田急8000形電車

小田急8000形電車とは1983年、当時逼迫していた輸送力の増強と当時残っていた中型の通勤車両を置き換えるべく登場した小田急電鉄の通勤形電車である。

なお、小田急線用の車両としては9000形以来11年ぶりのモデルチェンジとなった形式である。

最終的に6両編成と4両編成が16本ずつ製造された。

現在は6両編成11本、4両編成10本が活躍している。

沿革[編集]

1983年のダイヤ改正に合わせるような形で運行を開始した。

様々な車両形態[編集]

8251×6は運行開始からしばらくの間、車内にて写真展が行われた。 それに合わせてヘッドマークも取り付けられた。

8255×6は小田急百貨店にて鉄道展が行われるのに合わせて、ヘッドマークが取り付けられた。

8052×4と8257×6は製造当初から特別な塗装で入線された。営業運転開始後暫くは「走るギャラリー号」のヘッドマークが取り付けられていたが、愛称が一般公募され「ポケット号」という愛称になった。

8054×4・8055×4・8253×6・8262×6の4編成は向ヶ丘遊園にて「蘭・世界大博覧会」が開催されるのに合わせて、5色のカラーストライプが施された。車両の側面幕板には博覧会のシンボルマークとともに「蘭・世界大博覧会」と記された。博覧会終了後は幕板の文字だけを消し、「フラワートレイン」として運行した。

その後、この4編成は向ヶ丘遊園でイベント「ウルトラマンワールド」が開催されることに合わせ、正面の前照灯下と車端部をのぞく側面戸袋窓上部に「ウルトラマンワールド・ブースカランド」のステッカーが貼付された。

また小田急百貨店開店40周年記念として、この4編成に小田急百貨店の包装紙と同様のデザインが車体側面に施された。

リニューアル[編集]

鋼鉄車体ということもあり、老朽化が進行していた。そこで、2002年より車体修理による更新が開始された。

界磁チョッパ制御のまま更新[編集]

劣化が進んでいた車体(外板・屋根・床板・扉)の修繕はいったん塗装を剥離して修繕後に再塗装を実施。

配管・配線の補修、電動空気圧縮機や補助電源装置の交換が行われた。

また、種別・行き先の表示装置と車側灯・尾灯のLED化がされたほか、通過表示灯が撤去された。

側面窓はUVカットガラスとした上でカーテンは省略されたほか、集電装置はシングルアーム式に変更されたほか、滑走防止装置が設置された。

内装についても、化粧板、床材をすべて張り替えた上でバケットシートへの交換が行われたほか、7人がけ座席には手すりが設けられた。

また、各扉の上部にドアチャイムとLEDスクロール式車内案内表示装置が設置され、つり革を新製品に交換した。

先頭車には車椅子スペースと収納式座席の設置が行われたほか、客室の非常通報装置を警報式から乗務員と通話可能な対話式に変更された。

運転台にはモニタ装置や計器盤右端に非常通報受報器が新設されたほか、自動放送装置が設置された。

8251×6・8255×6のみが当てはまる(両編成とも廃車済み)

3000形と共通化[編集]

車体についてはそれまでと同様の更新内容であったが、制御装置をIGBT-VVVFインバータ制御へ変更し、ブレーキ装置も電気指令式ブレーキに変更された。

機器については3000形3次車と共通の機器が用いられることになった。

デハ8400番台は電装解除され、新形式としてサハ8050形(サハ8450番台)が登場した。

付随車化された車両は元の車両番号の下2桁に50をプラスし、同号車のパンタグラフを撤去したほか、台車も交換された。

両先頭車・付随車には車輪の滑走を防止する滑走防止装置が設置された。

電気指令式ブレーキへの変更に伴い、運転台も変更となり、主幹制御器も左手操作式ワンハンドル式に変更され、モニタ装置は機能を追加した上で表示器を運転台計器盤に収納したが、引き続きTIOSは搭載していない。

また、クハ8250番台にはブレーキ読み替え装置が設置された。

運転台正面ガラス遮光パネルをカーテンに変更した他、ワイパーは黒色の電動式に変更した。

また、車掌用非常ブレーキスイッチは引き紐式から電気スイッチ式に変更した。

客室では優先席部の荷棚高さとつり革高さを低下させ、合わせて一般席部のつり革高さも低下させた。

床面の主電動機点検用トラップドアは、主電動機の交流化に伴い床材で塞いだ。

8257×6からは、クハ8250番台の96芯電気連結器の下に36芯電気連結器を設置したほか、D-ATS-P装置の搭載が開始された。

8259×6からは戸閉解除スイッチが設置された 。

8253×6からは左手操作式ワンハンドルマスコンの形状変更と優先席へのスタンションポールが追加設置された。

8252×6からは、種別・行先の表示装置はフルカラーLED化された。

8266×6からは空気圧縮機の形式が変更された。

4000形と共通化[編集]

8260×6からは、内装については7人がけ座席の手すりを2本とし、優先席付近を淡黄色の内装と青色の床材に変更するほか、出入口の床材を黄色化や一部のつり革高さを低くするなど、4000形の意匠を取り入れた仕様に変更した。

8264×6からは、主電動機も4000形と同様の全密閉式電動機である三菱電機製に変更されたほか、車体側面の「OER」という切り抜き文字が撤去されるようになった。

また、8051×4を皮切りに、この年度からは4両固定編成の更新も開始された。

更新内容は6両固定編成と同様であるが、2008年のダイヤ改正以降は分割・併合の回数が大幅に減少し、連結する編成を電気指令式ブレーキ使用車両に限定することが可能となることから 、4両固定編成ではブレーキ読み替え装置は設置されていない。

4両編成の制御装置は6両編成更新車と共通であるが、ソフトウェアを全密閉主電動機に対応したものへ変更した。

モニタ装置については併結相手となる3車種の6両編成へ対応するため、TIOS(列車管理システム)搭載車・モニタ装置(列車情報監視装置)搭載車・モニタ非搭載車に対応できるものとなっている。

TIOS搭載車とは併結用に伝送読み換え装置があり、TIOS - モニタ間で機器の一括指令が可能となっている。

なお、静止形インバータは5000形の廃車発生品が流用されることになった。

8263×6からは、種別・行先の表示装置の書体が明朝体からゴシック体に変更されたほか、各先頭車両の台車に滑走防止装置が設置された。

8054×4からはクハ8050形の車椅子スペース部の折りたたみ座席を廃止した 。

また、各中間車の優先席位置を新宿寄りから小田原寄り車端部に変更した。

8265×6を最後に、6両固定編成の更新は終了した。

なお、2009年度に更新された車両からは4両編成は新宿方、6両編成は小田原方の車椅子スペース部に車椅子スロープ板収納スペースを設置した。

8063×4ではクハ8063のみ室内灯に川重車両テクノ製のLED照明を試行、8066×4ではクハ8066のみ東芝ライテック製のLED照明を試行した。

8055×4では川重車両テクノ製のLED照明を、8060×4・8062×4では東芝ライテック製のLED照明を本格採用した。

ハイブリッドSiCの採用[編集]

8061×4・8059×4では従来のIGBT素子を使用したVVVFインバータから、試験的にハイブリッドSiCモジュールを使用したVVVFインバータに変更した。

SiC素子の採用は試験的なものであるため、システム自体はVVVFインバータのみの変更としており、主電動機は2007年度以降の更新車で採用した全密閉式電動機を使用している。

SiCモジュール素子の採用により、装置筐体・重量ともに約40%減少しており、大幅な小型軽量化が図られている。

SiCモジュールの低損失・高温動作特性により、力行電力量の減少と回生ブレーキ力が高められており、従来のIGBT素子方式よりも約15%の消費電力削減が図られている。

この試験結果は2014年度よりリニューアルを開始している1000形に反映・採用されるが、こちらはフルSiC-MOSFET素子を使用している点が大きく異なる。

以降の改造[編集]

ヘッドライトの白色LED化[編集]

8058×4の8058号車と8258×6の8558号車に白色LEDのヘッドライトが試験的に搭載された。 試験の結果は小田急1000形の更新工事に反映された。

クヤ検対応改造[編集]

8065×4と8066×4を対象として、クヤ31の牽引車である1000形1051×4および1751×6, 1752×6(いずれも未更新車)を代替すべく2021年6月と8月に牽引車に対応するための改造が行われ、10月末頃より試運転に入っている。

そして2021/11/13・2021/11/14の検測より、8000形による検測が開始された。

廃車[編集]

事故による廃車[編集]

小田急小田原線本厚木駅-愛甲石田駅間の踏切で8064×4+8264×6による10両編成の新宿発小田原行き快速急行が立ち往生状態の乗用車と衝突し脱線した。 事故編成となった8064×4+8264×6による10両編成の内、8064×4は損傷がなかったことから運用に復帰したが、8264×6に関しては特に先頭車の損傷が激しかったため、5000形に置き換えとなり2020年4月をもって廃車となった。

経年劣化に伴う廃車[編集]

2002年度より車両更新が行われたが、経年劣化が否めなかったことと、2020年時点で界磁チョッパ制御車が2編成しか居なくなったためこのまま界磁チョッパ制御を維持するのにコストがかかること、部品調達が難しいことから界磁チョッパ制御車については廃車することになった。

8255×6が2020年10月に、8251×6が2021年3月にそれぞれ廃車になり、これをもって小田急電鉄から直流電動機搭載車が全廃となった。

そして2022年10月27日、8056×4が廃車になった。 8000形4両編成としては初の廃車になったほか、VVVFインバータ制御車としては初の経年劣化に伴う廃車となった。さらに2022年11月に入ると8259×6を皮切りに6両編成のVVVFインバータ制御車にも老朽廃車が発生するようになった。

廃車順序[編集]

2020年度
  • [6両固定編成(VVVF車)]
8264×6(事故廃車)
  • [6両固定編成(界磁チョッパ制御車)]
8255×6・8251×6
尚この編成の廃車を持って直流電動機搭載車は全編成が除籍となった。
2022年度
  • [4両固定編成]
8056×4・8055×4・8062×4・8054×4
  • [6両固定編成(VVVF車)]
8259×6
2023年度
  • [4両固定編成]
8060×4・8052×4

譲渡[編集]

2023年10月、西武鉄道が本系列を40両程度サステナ車両として購入し、国分寺線で運用することを発表した。塗装車だが良い出物が見つからなかったとのことで選定されている。

運用[編集]

2021年10月時点では以下の通りとなっている。

6両固定編成[編集]

8000形の4両編成と組んで10両編成で運転する場合は、各線の優等列車を中心に充当されている。

運用の都合上で小田原線(新宿駅-新松田駅間)と多摩線の各駅停車にも充当されることもある。

6両編成単独で運用する場合は、小田原線の町田駅以西と多摩線、江ノ島線のみで運行している。

2022年のダイヤ変更より、小田原-相模大野・町田間の6両編成の急行に充当されるようになったほか、平日早朝時間帯に引き続き唐木田駅→新百合ヶ丘駅間の急行に充当されることもある。

4両固定編成[編集]

8000形の6両編成もしくは3000形の6両編成と組んで10両運転編成で運転する場合は、各線の優等列車を中心に充当されている。

運用の都合上で小田原線(新宿駅-新松田駅間)と多摩線の各駅停車にも充当されることもある。

なお、1000形4両編成とは異なり、4両編成2本による8両編成での運用や箱根登山線の運用には入らないことになっている。

近い世代の車両[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]