首なし娘事件
首なし娘事件(くびなしむすめじけん)は、1932年2月8日に愛知県名古屋市で起きた事件である。戦前の殺人事件を取り上げた書籍などで紹介もされる事件である。全国紙でも本事件は取り上げられたが、扱いは大々的ではない。朝日新聞では「首なし女の死骸発見」(昭和7年2月9日朝刊)という短い記事のみ掲載されている。
同事件はミステリー作家である江戸川乱歩の中編ミステリー小説『陰獣』の一部に酷似していたことから騒がれたこともあった。そのため「陰獣事件」や「陰獣倉吉事件」とも呼ばれる。
経緯[編集]
1932年2月8日午後5時頃、愛知県名古屋市西区の川沿いで農業を営んでいる村田卯之吉が所有する鶏糞小屋で若い女性の腐乱死体が発見された。死体は頭部が切断され持ち去られた上、また両乳房が抉り取られ、下腹部も切り裂かれていた状態だった。遺留品と検視の結果、この女性は2月5日から行方不明だった名古屋市内の吉田ます江(当時19歳)と判明した。1月14日に彼女と恋愛関係にあった和菓子職人の増淵倉吉が仕事先の東京から戻り、旅館で彼女と何度も会っていた形跡があった。これにより警察は、聞き込みの結果から、1月22日ごろその男性が女性を殺害した上、遺体を切り刻んだと推測し、彼を指名手配したが、行方はつかめなかった。2月11日に犬山橋近くの木曽川河原で、被害者の頭部が遺留品とともに発見された。頭部からは頭髪と頭皮がはぎ取られており、また眼球が抉られ、下あごが刃物で損壊されていた。
3月5日、頭部の発見現場近くの茶店の主人が、掃除するために別棟である物置を開けようとしたが、引き戸は中から鍵が掛けられていたため、扉を外して入った。すると異様な姿の腐乱した状態の首吊り遺体を発見した。長い頭髪がついている女性の頭皮をカツラのようにかぶり、女性用の毛糸下着の上に黒い洋服を着ており、ゴムの長靴をはいていた。この首吊り遺体が増渕倉吉であり、彼の上着のポケットに入っていた女性の財布の中にお守り袋が入っており、中身には女性の眼球が入っていた。さらに小屋の片隅にあった冷蔵庫には、名古屋市で発見された被害女性の遺体から持ち去った乳房と下腹部が隠されていた。