散弾銃

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散弾銃(さんだんじゅう、英:Shotgun、ショットガン)とは、命中率を高めるために一度に複数の弾丸を発射するように作られたのことである。

概要[編集]

散弾銃はライフル銃と違って(一部の特殊なものを除き)銃身内にライフリングが刻まれていない。

散弾は拡がりながら飛ぶので命中率が非常に高い。弾が複数発射されるので殺傷力が高い。

有効射程はライフル銃よりも短く、拳銃よりも長い。

小さな散弾粒が個別に空気抵抗を受けるので、空気抵抗による速度低下が大きく、銃弾の最大到達距離は拳銃に劣る場合がある。

命中率が高いので、飛んでいる鳥や小動物を撃つのに適しているが、大粒の散弾を使えば鹿猟や熊猟に使うこともできる。

通常は広い範囲を攻撃できるように散弾を使用するが、単体弾頭(スラッグ弾)を使用して一点を攻撃することも可能である。散弾銃はライフル銃と比べて口径が巨大であり、スラッグ弾は絶大な威力がある。また、スラッグ弾を使用した場合、射程距離も大幅に長くなる。

スラッグ弾を用いると命中精度や射程距離は高まるが、ライフル銃ほどの命中精度や射程距離はない。

スラッグ弾専用で、命中精度を高めるために銃身内の全域、又は一部分にライフリングが刻まれている散弾銃もあるが、それでもライフル銃程の命中精度はない。

銃器所持許可証を取得後、自宅の法的条件を満たした銃器保管庫に保管することができる。自宅に保管できない場合は銃砲店に預けることも出来る。

猟区での狩猟と、射撃場での射撃競技に使用することができる。

射撃者の予想外のところまで散弾が広範囲に散らばるという特性があり、複数人で山中に入って狩猟を行う際は注意が必要である。日本では数年おきに誤射による死亡事故が発生している[1][2][3][4][5][6]

現在は鉄製散弾を使用するが、以前は鉛製散弾が使われており、鉛製散弾で撃たれた鳥獣を食べた肉食獣や猛禽類が鉛中毒を起こすという問題が生じた。

鉛は人体に猛毒であるので、かつては散弾銃で撃たれた獲物は当たりどころによっては食べられない部位が多くなることから村田銃などの単発猟銃の方が普及していた。

散弾銃の歴史[編集]

散弾銃がいつ発明されたのかは不明である。

現代の銃は銃弾と火薬がカートリッジ化されているが、古式銃は火薬弾丸を別々に込めた。そのため古式銃は火薬の量を増減したり複数の弾丸を込めたり、火薬だけ入れて弾丸は入れずに空砲を撃つことなどが自由にできた。古式銃は通常は一個の弾丸を込めて使用したが、複数の弾丸を込めて散弾銃として使用することもできたのである。

古式銃は散弾銃と狙撃銃の区別が曖昧であるだけでなく、小銃と拳銃、砲と銃の区別も曖昧である。

https://youtube.com/shorts/asIBo5m_Vfs?si=5NxmexS0LCvjO1oy

日本の火縄銃の中には非現実的な巨大口径のものがあった。単体弾を入れて大砲として使用する以外に、多数の弾丸を一纏めにした「千人殺し」と呼ばれるものを発射することも想定されていた。しかし、人が保持して発射したら射手も死傷するようなもので、実戦で使われたかどうかは謎である。動画は空砲で火薬も少なめに入れているようである。


ナポレオンやフランス革命の頃に鉄砲や大砲に、通常の弾丸や砲弾の代わりに鉄片や釘を詰めて発射していた記録がある。

アメリカでは古くから鳥撃ちのときに先込め銃に散弾を込めることが行われていた。

ライフル銃が普及すると、命中精度の高いライフル銃は、その特性を生かした用途にのみ用いられるようになり、その後、銃弾がカートリッジ化されると、銃弾もライフル銃用のものと散弾銃用のものとが別々のものになり、散弾銃がライフル銃と明確に区別されるようになった。

アメリカ第一次世界大戦で、ドイツサブマシンガンに対抗するために手動装填式の散弾銃を使ったところ、その火力はサブマシンガンを遥かに上回るものであった。このためか、その後もアメリカでは、軍や警察が散弾銃を使うことを好む傾向がある。

https://youtube.com/shorts/hY-wlOpoOR4?si=47D1FHhqiqyzcD5Q

カートリッジは初期には全て金属製のものだったが、その後、底部を除き紙製→底部を除きプラスチック製へと変わっていった。今でも底部は金属製である。

散弾銃は二連銃身式(中折れ式)から手動装填式、自動装填式へと進歩していったが、今でもクレー射撃には二連式が使われるのが普通である。

YouTube 動画リンク

三つに大別される散弾銃、それぞれの特徴[編集]

自動装填式[編集]

装弾数と連射性に優れている。

射撃競技や鴨猟ならば問題なく使えるのだが、熊猟や警察用には不向きである。自動装填式散弾銃は発射のガス圧を利用して排莢と装填を行うため作動不良を起こし易い。武器を持った犯罪者や猛獣と向かい合ったときにも作動不良を起こす可能性があり、信頼性が低いからである。

手動装填式[編集]

装弾数が多い。連射性では自動装填式にやや劣るものの、排莢と装填を手動で行うため、ほぼ確実に作動する。装弾数の多さと確実性から最も信頼性の高い散弾銃とされている。

大抵はポンプアクションだが、ウィンチェスターM1887/1901といったレバーアクションもある。

アメリカのパトカーには大抵手動装填式の散弾銃が積まれている。

二連式[編集]

二本の銃身を、左右または上下に並べた旧式なタイプの散弾銃である。中折式が一般的。

シンプルな構造故に手動装填式以上に確実に発砲することができ、メンテナンスも容易である。自動装填式以上の連射も可能だが、装弾数が二発だけという短所がある。

サブマシンガンとの比較[編集]

接近戦ならばサブマシンガンよりも散弾銃の方が有利だが、有効射程は散弾銃よりもサブマシンガンの方が長いので、遠く離れて撃ち合うならばサブマシンガンをセミオートで使った方が散弾銃よりも理論的には有利である。しかし、散弾銃の有効射程以上の距離であればサブマシンガンよりもライフル銃を使った方が有利である。

サブマシンガンをフルオートで連射すると威嚇の効果は高いが、反動で銃の向きが変わってしまうため命中しにくくなる。散弾銃の場合は複数の弾を一度に発射してしまうため、このような問題は起こらない。

サブマシンガンは複雑な形をしており、散弾銃は棒状である。散弾銃の方が、突然目の前に現れた敵や動き回る目標に素早く照準を合わせ易い。

飛ぶ鳥を撃ち落とすことは散弾銃ならば容易だが、サブマシンガンでは不可能に近い。

散弾銃の口径[編集]

普通、銃の口径は銃身の内径を「ミリ」か「インチ」で表す。7.62ミリならば、そのまま7.62ミリ。38口径ならば100分の38インチ(ゼロコンマ38インチ)である。

計算すればインチ=センチ(ミリ)に相互変換することが可能である。1インチ=2.54センチ=25.4ミリなので、44口径=0.44インチ=25.4掛ける0.44=11.176ミリであり、7.62ミリをインチに換算すると7.62割る25.4=0.3インチ(30口径)となる[1]

散弾銃の場合、口径が12番ならば、銃身の内径は重量が12分の1ポンドの鉛の球がピッタリ入る大きさで、20番ならば20分の1ポンドの鉛の球がピッタリ入る大きさであることを意味する。12番口径が最も一般的である。

動画[編集]

散弾銃の名人の驚異的な腕前[編集]

youtube:f4KVoYUGf3s

自動装填式散弾銃[編集]

YouTube 動画リンク

手動装填式散弾銃[編集]

youtube:MyoC2Gn1WLU

二連式散弾銃[編集]

youtube:YbRVKsyWOvc

https://youtube.com/shorts/d2unVFKBg3E?si=nSrwke_FUwJQWGAW

銃身を切り詰め銃床を切り落とした二連式散弾銃[編集]

youtube:7e_CzIHvvNY

特殊な散弾銃[編集]

  • アサルトショットガン:フルオート射撃のできる軍用散弾銃。
  • 中折れ式単銃身単発散弾銃:二連式と似ているが銃身は一つ。
  • 村田式散弾銃:軍用の村田銃(ライフル銃)を散弾銃に改造して民間に払い下げたもの。単発でボルトアクション。
  • 刑務所散弾銃:福岡刑務所内の工場で1982年頃に受刑者が密かに製造していた散弾銃。刑務所外に運び出され暴力団の抗争に使われた。
  • トリプルバレルショットガン:ダブルバレル(二連銃身式)に似ているが、銃身が三本ある。https://youtube.com/shorts/kkecSQv1-I0?si=FTfEeOy-1mhw0CJ4
  • コンビネーションライフル:散弾銃の銃身とライフル銃の銃身を組み合わせた二連銃、又は、三連銃。https://youtube.com/shorts/29eIxSf0O-w?si=ZXgk-Lu2skkV-7VZ 

https://youtube.com/shorts/ZCiAJgnbQ1g?si=jSr_wv1ndVD0TFhm

  • ソードオフ・ショットガン:散弾銃の銃身銃床、或いは、それらの両方を切って短くしたもの。銃身を切れば威力は落ち、銃床を切れば保持しにくくなるが、隠し持つことだけは容易になるのである。威力が落ち、保持し難くなっても散弾銃であることは変わらないのである。

更に特殊な例[編集]

  • アメリカ独立戦争:「間近に迫る敵兵に自分が放った銃弾が命中しなかったらどうなるか?」という不安を軽減するために、マスケット銃に球形の単体弾と散弾の両方を入れて使用する場合があったという。
  • ベトナム戦争:ベトナム戦争ではジャングルに隠れた見えない敵に向けてアサルトライフルを闇雲に撃ちまくるような戦闘が行われた。そのため銃弾の命中率が極端に低く、対策として薬莢に小銃弾を直列に二個入れたものが造られたことがある。
  • トーラス・ジャッジ:ブラジルのトーラス社が開発した散弾を使用するリボルバー型の大型拳銃。
  • 手製散弾銃:鉄パイプで作られた散弾銃。https://youtube.com/shorts/R592zvZ_r8o?si=peiooRkQW_qupP_U

散弾銃の心理学[編集]

武器を持って突進してくる敵に向けてライフル銃を発射しても遠方ならば命中する確率は低い。敵を近くまで引き付ければ命中する可能性は高いが、それでも命中するとは限らないし、命中しても致命傷を与えることができるとは限らない。敵を目の前にして銃が作動不良を起こすかもしれない。弾が不発だったり、銃が故障する可能性もある。敵を引き付けたりせずに敵前逃亡した方が生き残れる可能性が高い。危険を感じたときに逃げるのは人間や動物の本能である。

接近戦で命中率の高い散弾銃は、敵を引き付けて射殺することへの心理的負担がライフル銃より遥かに低いのである。

ライフル銃で攻撃できるのは一つの点だけである。攻撃範囲においてライフル銃は刀剣類にも劣るのである。散弾銃の場合、刀剣類と同程度の攻撃範囲を有しているので、接近戦が心理的に有利なのである。しかも、単発のライフル銃は一回しか攻撃ができないのに対して、刀は無限の攻撃回数を有している。

戊辰戦争では、刀を持った幕府軍の侍が来ると、ライフル銃を持った政府軍の兵士は逃げ回ったという。百姓の倅と侍の倅という差もあるが、それだけの違いではないのである。ライフル銃ではなく散弾銃を持っていたら逃げ回る者は少なかったに違いない。

脚注[編集]

  1. 蛇足:アメリカ国内規格がヤード・ポンド法なのでインチ口径表記がアメリカおよびアメリカの影響下にある規格、メートル法(フランス源流)の採用国がヨーロッパ全域なのでミリメートル規格が欧州(NATO)規格である。より詳しくは口径を参照。

関連項目[編集]