敵前逃亡

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敵前逃亡(てきぜんとうぼう)とは、軍人が恐怖のあまり戦闘が発生している場所から逃げてしまうことである。特に、敵が突撃してきた場合や、突撃を命じられた場合に発生しやすい。

概要[編集]

恐怖を感じたときに逃げるのは生物の本能であり、敵前逃亡は生物としては当然の行動であるが、軍人が皆、本能のままに逃げてしまったら戦争にならないので、国家は敵前逃亡した者を厳しく処罰する。ただし、処罰の内容などは国家により異なる。

ソ連軍はそれが徹底しており、敵前逃亡した者は上官によって、あるいはチェーカー(ソ連における秘密警察)により、即座に射殺された。突撃を命じられたソ連兵は、命令通りに突撃すれば敵に殺され、恐怖のあまり突撃しなかったり、突撃を仕掛けたものの敵から銃撃されて塹壕に逃げ帰ってくれば上官に殺された。ソ連軍は、上官に殺される者が、敵に殺される者を上回るという凄まじい軍隊である。

その他[編集]

戦闘時以外に軍人が軍から逃げてしまうことは脱走と呼ばれる。これも処罰の対象となる。

指揮官の命令で退却することは敵前逃亡に当たらない。

太平洋戦争時の大日本帝国陸軍には、指揮官でありながら無責任な敵前逃亡あるいはそれに極めて近い行動をとる者がいた。ただし、兵と違って厳罰に処せられることは稀で、左遷される程度であった。代表的な人物に牟田口廉也富永恭次がいる。

幕末において、最後の征夷大将軍である徳川慶喜が幕府軍を見捨てて一部の部下と共に江戸城に逃れたという史実がある。これも敵前逃亡の一つである。このため幕府軍の統制が乱れ、戊辰戦争の終結が早まることになった。

自衛隊では、敵前逃亡をすると自衛隊法が適用され7年以下の懲役が課せられる。