大阪市営地下鉄御堂筋線痴漢捏ち上げ事件

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大阪市営地下鉄御堂筋線痴漢捏ち上げ事件(おおさかしえいちかてつみどうすじせんちかんでっちあげじけん)は、2008年に起きた痴漢冤罪事件である。

概要[編集]

線区名は発生当時のもの。

2008年2月1日20時30分頃、大阪市営地下鉄(現:Osaka Metro御堂筋線天王寺駅停車直前の電車内で、当時31歳の女Bが泣き崩れる演技をし、偶然居合わせた当時58歳の男性会社員Cに痴漢をされたと訴えた。その直後、当時Bの交際相手で甲南大学法学部4年生だった24歳の男Aが目撃者を装ってCに近付き、「尻を触っただろう」と言ってCを現行犯逮捕私人逮捕)し、天王寺駅駅長室に連行し大阪府警察阿倍野警察署署員に引き渡した[1][2]

Cは否認したが、Bが被害届を出し、Aも「痴漢を見た」と証言したため、阿倍野署はCを大阪府迷惑防止条例違反容疑で引き続き拘束した[1]

Cによると、警察は言い分を聞いてくれなかったといい[3]、「赤の他人が『見た』と言っている。白状したらどうや」と自白を迫られたという[4]

Cが帰宅しないことを不審に思った家族は何度も警察や消防に電話し、2月2日朝には捜索願も提出した。同日15時頃に当番弁護士がCと面会し、Cの家族に事情を説明した。Cの長女は「痴漢」と聞いた瞬間、「仕組まれたに違いない」と思ったという[4]

2月2日夕方、阿倍野署は関係者3人の言い分が食い違っていること、Cの逃走の恐れがないことを理由にCを釈放した[4]。阿倍野署はCを拘束したことについて「手続き上、民間人による逮捕で、警察の誤認逮捕には当たらない」とした[1]

Bは事件当時穿いていたスカートの任意提出を再三求められ、「もう逃げ切れない」と思ったのか2月7日に[5]「(Aが)『金がいるので示談で金をせしめよう』と言った」[6]「申し訳ないことをした」と自首し、阿倍野署は3月11日にAを虚偽告訴容疑で逮捕した[1]。Bについては書類送検する方針を示した[6]

2月20日、阿倍野署はBが自首したことをCに知らせ、謝罪した[4]

Cは22時間拘束されたことが心の傷となり、通勤電車で無意識に女性の近くを避けるようになった[3]

甲南大学の対応[編集]

3月18日、Aが通っていた甲南大学は、Aを無期停学とし、関係者がA本人と面会して事実関係を確認した上で退学処分にすると発表し、その後正式に退学処分となった[7]。また、再発防止策として、2008年度中に全学部で倫理教育科目を開講し、法学部で冤罪を扱う模擬裁判を開くことを決めた[8]

裁判[編集]

主犯[編集]

大阪地方検察庁は主犯のAを虚偽告訴と強盗未遂などの罪で起訴した。Aは2008年1月にもBが出会い系サイトで誘い出した男性に「俺の女に手を出しやがって」と顔を殴って金を奪おうとするなどしていた。検察側は懲役8年を求刑した[3]

2008年10月24日、大阪地方裁判所は「男性通勤客に深刻な不安を与え、痴漢被害に遭った女性にも申告をためらわせる事態を生んだ」と断じ、Aに懲役5年6月の判決を言い渡し、「正義感の強い若者を演じて、困惑する被害者を窮地に陥れるなど、犯行は巧妙で悪質」と非難した[3]

共犯[編集]

共犯のBも虚偽告訴や強盗未遂などの罪で在宅起訴され、7月23日の初公判で「被害者の方にご迷惑をかけ、最低のことをしたと思っています」と涙を流して謝罪した。7月30日、論告求刑公判が開かれ、検察側は「正当な痴漢の被害申告を妨げ、勇気ある目撃者の証言を萎縮させるなど社会に与えた影響は大きい」として懲役4年を求刑、弁護側が執行猶予付き判決を求めて結審した[2]。8月8日、大阪地裁はBに懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した[9]。検察側、弁護側共に控訴せず、判決が確定した[10]

備考[編集]

大阪市営地下鉄では2017年にも痴漢捏ち上げ事件が発生している。当時21歳のアルバイトの男が当時26歳のパートの女に「男にわざと痴漢させて警察に突き出せば示談金が取れる」などと持ちかけ、電子掲示板に「痴漢してもらいたいです」と書き込み、連絡を取ってきた当時50歳の男性に行為に合意する内容の返信をした。

そして5月22日夜、大阪市営地下鉄堺筋線の車内で、女が男性に胸や下半身を触らせ、男がこの様子を動画撮影した。男は男性が天神橋筋六丁目駅で降りたところで「痴漢をしただろう」と言って男性を現行犯逮捕し、警察官に引き渡した。大阪府警察は、男性を大阪府迷惑防止条例違反容疑で引き取ったが、後に捏造が発覚し、男と女を虚偽告訴罪などの容疑で逮捕した[11]。女は後に釈放されている[12]

脚注[編集]

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  1. a b c d 毎日新聞 2008年3月11日
  2. a b “【痴漢でっち上げ】共犯女に懲役4年求刑 大阪地裁”. 産経ニュース (産業経済新聞社). (2008年7月30日). オリジナル2009年8月23日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090823004309/http://sankei.jp.msn.com:80/affairs/trial/080730/trl0807301239005-n1.htm 2018年4月16日閲覧。 
  3. a b c d 毎日新聞 2008年10月25日
  4. a b c d “痴漢でっち上げ:「人生台無しになると実感」…堺の会社員”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2008年3月14日). オリジナル2008年3月17日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080317193744/http://mainichi.jp:80/select/jiken/news/20080314k0000m040167000c.html 2018年4月13日閲覧。 
  5. “【衝撃事件の核心】同棲10日、31歳女がはまったワナ 痴漢でっち上げ事件”. 産経ニュース (産業経済新聞社). (2008年4月6日). オリジナル2009年2月2日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090202102618/http://sankei.jp.msn.com:80/affairs/crime/080406/crm0804061225005-n1.htm 2018年4月15日閲覧。 
  6. a b “虚偽告訴:示談金狙い、やってないのに「触ったでしょ」 容疑で甲南大生逮捕”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2008年3月12日). オリジナル2008年3月21日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080321184746/http://www.mainichi.jp:80/kansai/donai/news/20080312ddn041040005000c.html 2018年4月13日閲覧。 
  7. “【痴漢でっち上げ初公判(1)】「尻をなで回すように触っていた」警察官にウソ申告(10:00~10:10)”. 産経ニュース産業経済新聞社). (2008年5月29日). オリジナル2009年8月11日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090811060233/http://sankei.jp.msn.com:80/affairs/trial/080529/trl0805291104005-n1.htm 2018年4月15日閲覧。 
  8. “痴漢でっち上げ:逮捕の甲南大生、退学処分へ”. 毎日新聞毎日新聞社). (2008年3月18日). オリジナル2008年3月21日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080321185400/http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080318k0000e040045000c.html 2018年4月13日閲覧。 
  9. 産経新聞 2008年8月8日
  10. 痴漢でっち上げ事件”. 産業経済新聞社. 2009年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月16日確認。
  11. “「痴漢して」ネットに書き込み→実際にしたら現行犯逮捕 虚偽告訴容疑などで男を逮捕 大阪府警”. 産経ニュース (産業経済新聞社). (2017年6月21日. http://www.sankei.com/west/news/170621/wst1706210095-n1.html 2018年4月16日閲覧。 
  12. https://web.archive.org/web/20170621114002/http://www.asahi.com/articles/ASK6P5K0XK6PPTIL015.html#MainInner

外部リンク[編集]