今井則義

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今井 則義(いまい のりよし、1918年8月2日 - 1997年4月15日[1])は、マルクス経済学者[2]法政大学経営学部教授。東京交通短期大学学長。専攻は産業論、景気変動論[3]。筆名・西原文夫[4]

略歴[編集]

広島県生まれ。1935年広島高等師範付属中学校卒業。1938年広島高等学校文科乙類卒業。1941年東京帝国大学経済学部経済学科卒業。石油統制会社調査課勤務(1946年石油公団に改組)。1951年運輸調査局経済調査部勤務。1957年法政大学経営学部助教授[1]。1960年「戦後循環の分析」で経済学博士(法政大学)[5]。1961年法政大学経営学部教授。1967-68年法政大学経営学部長。1968-72年法政大学常務理事。1989年退職、名誉教授。1992年東京交通短期大学学長[1]。1994年病気のため退任[1][6]

人物[編集]

井汲卓一佐藤昇らと並ぶ構造改革派の中心人物[7]K・ツィーシャンクの国家独占資本主義論を支持する立場から「政治的国家」と「経済的国家」を区別することを主張し、まず経済的国家を掌握してから漸進的に政治権力を改造することが可能になるとする理論を唱えた。その理論は同じく構造改革論の理論的支柱となった井汲卓一の名を加え、「今井、井汲理論」と称された[8]

元・日本共産党員。1957年に小野義彦が自立論を展開し従属経済論を批判すると、豊田四郎上田耕一郎守屋典郎らとともに従属経済論の立場から反論を行ったが(日本帝国主義復活論争)、小野の批判に一定の理解を示した。のちに構造改革論を推進し[9]、これをめぐって共産党を除名された[10]

第一次『現代の理論』(大月書店、1959年)の創刊号の執筆者[11]経済分析研究会代表幹事[2]。西原文夫の筆名で「戦後日本資本主義における技術的進歩をめぐる若干の問題」(辰野一郎(廣岡治哉の筆名)との共著、『経済評論』第5巻第7号、1956年7月)などの論文を執筆した[4]。日本経済調査会編『日本経済四季報』(大月書店)の総論を北田芳治と交代で執筆した[12]

著書[編集]

  • 『戰後日本の經濟と恐慌』(西原文夫編著、三一書房[三一新書]、1955年)
  • 『講座 恐慌論(全4巻)』(井汲卓一、大島清、守屋典郎共編、東洋経済新報社、1958-59年)
  • 『日本の国家独占資本主義』(森川英正、津田渉、広岡治哉、竹中一雄共著、合同出版[現代日本資本主義分析双書]、1960年)
  • 『貿易自由化と日本資本主義』(編、大月書店、1960年)
  • 『現代日本産業講座Ⅱ 各論Ⅰ 鉄鋼業 付非鉄金属鉱業』(編集責任者、岩波書店、1962年)
  • 『日本経済分析』(井汲卓一共編、至誠堂、1963年)
  • 『現代帝国主義講座(全5巻)』(井汲卓一、宇高基輔、江口朴郎、吉村正晴共編、日本評論新社、1963年)
  • 『現代日本資本主義の物価問題』(編、至誠堂[日本経済分析シリーズ]、1964年)
  • 『現代日本の独占資本(全7巻)』(御園生等、宮崎義一、中村隆英共編、至誠堂、1964年)
    • 「1 独占形態」(編、至誠堂、1964年)
    • 「4 技術革新・国際交流」(御園生等共編、至誠堂、1964年)
  • 『講座 現代の経済政策 第2巻 日本経済政策の展開』(長洲一二、清水嘉治共編、中央経済社、1965年)
  • 『現代日本資本主義講座(全3巻)』(井汲卓一、長洲一二共編、日本評論社、1966年)
  • 『現代経済と国家 上』(名島太郎、廣岡治哉共編、日本評論社、1979年)
  • 『現代経済と国家 下』(富塚文太郎、森川英正共編、日本評論社、1979年)

出典[編集]

  1. a b c d 「前学長 故今井則義先生 略歴」『交通論叢第39号・研究紀要第8号 合併号』、東京交通短期大学研究会、1998年3月
  2. a b 森川英正「あとがき」、今井則義、富塚文太郎、森川英正編『現代経済と国家 下』日本評論社、1979年
  3. 今井則義、長洲一二、清水嘉治編『講座 現代の経済政策 第2巻 日本経済政策の展開』中央経済社、1965年
  4. a b 廣岡治哉「高度経済成長と技術革新――今井則義先生を偲んで」『交通論叢第39号・研究紀要第8号 合併号』、東京交通短期大学研究会、1998年3月
  5. CiNii 博士論文 - 戦後循環の分析
  6. 増井健一「今井則義先生のご逝去を悼む」『交通論叢第39号・研究紀要第8号 合併号』、東京交通短期大学研究会、1998年3月
  7. 富田武「社会主義研究に生きた構造改革論──佐藤経明先生を偲ぶ」現代の理論第3号、2014年12月7日
  8. 池上惇「手嶋教授の国家独占資本主義論PDF」 、『立命館経済学』第19巻第4号、立命館大学経済学会、1970年、 159-185頁。
  9. 菱山郁朗「七-(3)―現代日本資本主義論争と『構造改革論』―」江田五月のウェブサイト。
  10. 鈴木徹三「戦後社会運動史資料論--鈴木茂三郎(4・完)」『大原社会問題研究所雑誌』533号、2003年4月
  11. 矢代俊三「季刊『現代の理論』がデジタル版で復刊」一人ひとりが声をあげて平和を創る メールマガジン「オルタ広場」
  12. 北田芳治「政経研と私PDF」 、『政経研究時報』第19巻第2号、公益財団法人政治経済研究所、2016年、 12-13頁。