ショートメッセージサービス

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

ショートメッセージサービス: short message serviceSMS)とは、携帯電話PHS同士で短いテキスト文章)によるメッセージを送受信するサービスである。テキストメッセージ: text message)と呼ばれる場合もある。

概要[編集]

1984年フィンランド人のマッティ・マッコネンが、GSM携帯電話のサービスのひとつとしてSMSを発案した。その後、欧州電気通信標準化協会(ETSI)がSMSを国際標準規格に採用し、ほぼ世界共通(日本を除く)のテキスト・メッセージサービスとして定着した。国際電気通信連合(ITU)によると、全世界で2010年に発信されたSMSの総数は、6兆1000億通に達した[1]

SMSは、電話番号宛に送信する。プッシュ型電子メールと同様に、携帯電話の電源が入っていれば自動的に受信する。メッセージは、センターのサーバを経由して送られる。送信先が圏外の場合は、受信可能になった時に再度送信される。GSM/W-CDMAのSMSでは、1回のメッセージで送信可能な文字数は最大140オクテットまでで、文字コードには「GSM 7ビット標準アルファベット」[2]UCS-2を使用できる。前者を使用した場合、最大文字数は160文字である。UCS-2を使用した場合、ラテン文字のほか漢字キリル文字アラビア文字など様々な文字を送受信できるが、送受信する端末が対応している必要がある。この場合は最大70文字となる。

携帯電話の文字転送システムとしては、SMSおよび拡張メッセージサービス ()(EMS)のみが、トラフィックチャネルを使用せず、信号チャネルを使用する。このためメッセージのバイト単価が安く、近代的な携帯電話網では、即時性が高い。また、SMSは、テキストメッセージとしての利用以外に、マルチメディアメッセージングサービス(MMS)、WAP Pushプッシュ型電子メールボイスメール通知、インスタントメッセージの実装、さらにはOTA(オーバー・ザ・エア)プロビジョニング、さらには、オンラインバンキングやソフトウェアライセンスのPINコード認証などにも使用されている。

2008年11月、英「エコノミスト」誌は、SMSの世界中での成功に対して、発明者のマッコネンに「イノベーション賞 ()」を授与した[3]

なお、SMSは、技術規格から生まれた技術者用語で、より一般消費者向けの用語としては、テキストメッセージが用いられることが多い。同じような用語として、MMSに対する、ピクチャーメッセージがある。

世界のSMS[編集]

SMSは日本を除く全世界で、携帯電話を利用して短いテキストを送受信する際の主流の通信手段である。第二世代携帯電話規格の主流であるGSMCDMAでは、業界標準の端末認定仕様であるGCFやCDGの基準を満たすにはSMSの実装が必要で、テレメトリー(遠隔測定)用などを除いたほぼ全ての端末が装備している。世界的には実質この二つのみが標準仕様なのでゲートウェイの開発は困難ではなく、通信規格やキャリア(通信会社)さらには国をまたいで電話番号のみでのメッセージ交換が可能となっている。

携帯電話のサービスとしては通話よりも安価なため、若い世代を中心にSMSの送受信が頻繁に行われるようになった。日本のi-modeEZwebなどの携帯電話インターネットメールと同様の利用法である。なお、インターネットメールとの間では、携帯電話事業者がゲートウェイサービスを提供している場合、インターネットから携帯電話へのみ送信可能で、逆方向はできない。日本国外ではこれが一般的である。

SMSは、携帯端末同士のメッセージの交換に止まらず、インターネットオークションの通知メッセージ、テレビ番組が企画する人気投票、視聴者の投稿、世論調査、銀行のオンライン口座やソフトウェア・ライセンスのPINコード認証などにも用いられている。また、一部のインスタントメッセンジャーSkype、海外事業者との送受信も可能である。

携帯電話の高機能化の過程で、携帯電話のメッセージサービスは、SMSから、文字の大きさを変えたり画像音声、簡単なアニメーションなどを入れたりできるようにしたEMS[4]や、さらにカラー画像や動画を入れられるようにしたマルチメディアメッセージングサービス(MMS)へと発展した。しかし、対応端末が必要なEMSやMMSに対し、SMSは全てのGSM/CDMA端末に実装され、さらにメッセージあたりの単価が大幅に安く、かつ即時性が高いため、携帯端末間の短文通信では、依然として主流である[5]

また短文の送受信しか出来ないため、使用言語によって様々な略語が用いられる。例えば、英語の場合は、U(you)、R(are)、BTW(by the way)、WBASAP(write back as soon as possible)、CUL(see you later また後で)などが使われ、texting(SMSを使用中、SMSで送る)などの言葉も生まれている。

日本のSMS[編集]

日本でPHS事業でSMSが開始されたのは1996年4月(旧DDIセルラー)である。1997年6月には携帯電話でもSMSが始まった(ドコモmova)。現在でも提供しているサービスとしては、NTTドコモSoftBankおよびY!mobileのSMS、KDDI沖縄セルラー電話au)のSMS(Cメール)・SMS(i)、DDIポケットPメール(1996年11月)・ライトメールがある。

過去に提供されていたサービスに、DDIセルラー(その後のau関西地域など)のPDCサービス セルラー文字サービス(1996年4月開始)、アステルのAメール(1996年12月)、モジトーク(1997年5月)、たのしメールドコモPHSのきゃらトーク・きゃらメール(1997年4月)、movaショートメール(1997年6月)、日本移動通信(IDO、その後のau関東・中部地域)のPDCサービスで提供されていたプチメール(1997年9月)、ソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン日本法人)・ツーカースカイメール(1997年11月)、があった。1997年後期に新たに三社の携帯電話事業者でSMSサービスが開始されると、それまでブームにあったポケベルは急速に駆逐され、若者に新たな文字コミュニケーション文化を誕生させた。

日本では電話番号でメッセージを送受信するこのサービスを当初文字メッセージ・サービスと呼ぶことが多かった[6]。日本での第2世代移動通信システムの時代には、NTTドコモ・グループ/デジタルフォン・グループ/ツーカーフォン・グループの「PDC」、IDO/セルラーフォン・グループのCDMA、およびPHSと規格が並立した。このうち、IDO/セルラーフォン・グループのCDMAは世界仕様であり、本来SMSでの国外とのやりとりは問題なかった。しかし、ユーザーが第一に求める国内・他事業者のユーザーとのメッセージ交換ができず、SMSの最大の利点である「電話番号のみでのテキスト交換」は失われた。このため、国内での事業者をまたぐメッセージ伝達手段としては、NTTドコモのiモードメールやau・ツーカーEZwebなどの、いわゆるキャリアメールが普及し、文字メッセージ・サービスは積極的に利用されなくなった。

第3世代移動通信システム規格への移行後、SoftBank 3GFOMAW-CDMA方式を採用したが、当初日本国内では事業者間を跨いでメッセージの送受信が出来なかった。スマートフォンの普及に伴い「文字メッセージ・サービス」と呼ばれる機会は減り、SMSという名称で呼ばれるようになっていった。そして2011年6月1日、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの5社(当時)がそれぞれ提供しているSMSサービスで、2011年7月13日より相互接続が開始される事が発表され、実施された[7]。これは、海外に遅れること約10年にしての達成である。なお、NTTドコモとソフトバンクモバイルについては当初より国際SMSの提供はしていた。

また、日本国内の複数の業者(サードパーティー)が、国際SMSとキャリア固有のメールアドレスを相互に変換するサービスを提供をしている。

2014年10月1日より、ワイモバイル(現・ソフトバンク)のPHSでもSMSサービスを開始した。ただし、これ以後に発売される端末と従来からの端末についてはアップデート対応を行う端末に限定される。なお、SMS非対応機種へのMNP移行は不可としており、SMS対応機種(アップデート対応の端末を含む)については、カタログでは「MNP対応」とも表示されている。

日本と国外とのSMS[編集]

ソフトバンクモバイルのPHSを除く国内事業者は国際SMSに対応しており、国外事業者とのSMSが可能である。国外事業者によっては、利用中の国内携帯電話番号を通知しSMSを送れるため、これを経由してNTTドコモの番号を通知してソフトバンクモバイルへ、あるいは逆方向でのSMSを送信できる。この場合、受取側が国外のSMSを拒否する設定になっていても、国内のSMSと認識し、他キャリアのSMSでも送信可能である。

日本の各社の比較表[編集]

各社とも受信料は無料である。絵文字はNTTドコモの一部の機種で、入力および表示ができない。

現行サービスに限る。

電話会社 機種 サービス名 最大文字数 国内送信料
(税込)
国際送信料
(免税)
半角 全角
NTT
ドコモ
全機種 SMS(ショートメール[注 1] 160 70 50円
KDDI・
沖縄セルラー電話
(au)
iPhone SMS(i) 100円
2011年夏モデル以降[注 4] SMS(Cメール 140
2011年春モデルまで[注 4] 100 50
ソフト
バンク
SoftBankブランド、Y!mobileタイプ1[注 5]・タイプ3[注 6][注 7]契約 SMS 160 70
Y!mobileタイプ2契約およびEMOBILE 4G-Sを除く旧イー・アクセス契約 10円
SMSおよびMNP対応[注 13]のPHSサービス契約および旧ウィルコムPHS契約 (非対応)
SMSおよびMNP非対応[注 16]のPHSサービス契約および旧ウィルコムPHS契約 ライトメール 90 45
Pメール 20 不可
  1. movaのサービス終了と同時にショートメールサービスは終了したが、現在でもdocomoではSMSの事をショートメールと表記する場合があり、利用者にも浸透している
  2. 送達通知付も同額
  3. 家族割の契約回線間、またはタイプWシンプルないしはタイプZシンプル、LTEプラン契約かつ送信先がauの場合
  4. a b 同じインフラを利用するECナビケータイJALマイルフォンTigersケータイGIANTSケータイも含む
  5. EMOBILE 4G-S旧契約/WILLCOM CORE 3G音声シングル旧契約などを含む
  6. 旧ウィルコムで3G・PHSのデュアルモード契約をしていた場合を含む
  7. 新旧契約に関わらず、PHS回線からの送受信は不可
  8. タイプX、ブループラン、オレンジブラン、スマホプラン(S/M/L)の契約または送信先が他社の場合
  9. スマ放題、ホワイトプラン、標準プラン、ゴールドプラン、4G-Sプラン、4G-Sプランベーシックの契約かつ送信先がソフトバンク(SoftBankブランドないしはY!mobileブランドのタイプ1契約タイプ3契約および旧EMOBILE 4G-Sに限る)の場合
  10. スマホプラン(S/M/L)の契約の場合
  11. LTE電話プランで送信先が他社の場合、あるいはその他旧イー・アクセスのプラン契約の場合
  12. LTE電話プランで送信先が旧イー・アクセス契約ないしはタイプ2契約の場合、ないしは他の旧イー・アクセス契約でオプション契約に加入し無償送信が適用される場合
  13. アップデート対応の端末の場合は、アップデート適用後のもの
  14. Y!mobileのPHS(タイプ3のPHS回線宛てを含む)宛以外の場合
  15. Y!mobileのPHS(タイプ3のPHS回線宛てを含む)宛の場合
  16. アップデート対応でSMSおよびMNPができる端末については、アップデート適用前の端末もこれに含む
  17. データパックminiの場合
  18. ウィルコム定額プラン各種、つなぎ放題各種、メール放題各種などの場合

問題点[編集]

SMSでスパムメールを大量に送信する業者がいる。日本では、SMSで出会い系サイトの広告、勧誘が多発したため[8]、「SMS受信を拒否する」などの設定が出来るようになった[9]。世界でも「迷惑SMS」は社会問題化しており、中国では2008年9月現在、工業情報部電信管理局が規制に乗り出そうとしている[10]。また、SMSを利用したフィッシング詐欺(smishing)も問題になっている。

日本国内の通信事業者間では、過去に存在したスカイメールは、ソフトバンク・ツーカー相互に利用できた。また、2011年7月13日よりSMSの事業者間接続が開始された。それ以前はスカイメールを除き、相互にSMSの送受信ができなかったため、各事業者の付与するインターネットメールアドレスを用いた情報伝達が普及した。しかし、インターネットメールとの相互利用や添付ファイルなどが可能な反面、通信料は比較的高額で、受信側にも料金が発生する。また、通信事業者固有のメールアドレスの利用が一般化したことが、番号ポータビリティの利用を阻害し、事業者の競争が促されない一因となっている。

2011年7月13日より開始されたSMSの事業者間接続でも、無料通信分には含まれるがパケット定額のようには定額料金での利用ができないため、国外ほど安価にはなっていない。各社の同一キャリア内定額通話プランではSMSの送受信も定額の範囲内としている場合が多い。ソフトバンクモバイルのみ、同社携帯電話間(ディズニー・モバイル含む)での国内におけるSMSはホワイトプランであれば送受信無料である。

3G端末が主流となった以降、MVNO業者のSIMを使った場合にバッテリーの消費が異常に早くなる、いわゆる「セルフスタンバイ問題」が多数報告されるようになった。これは、3G(W-CDMA)通信網を利用する端末内の音声通話部回路とデータ通信部回路は別々にキャリア電波を検知する方式になっているため、交換したSIMがデータ通信専用の場合、音声回線がキャリアを探せずに出力を上げ続けてしまうことが原因であった。そこで、対策として音声通話回線を利用するSMSを送受信する機能をオプション付加したSIMが出回っている[11]

オークションやチケット購入サービスなどの際の身元確認の手段として認証コードを携帯電話の番号に基づくSMSを用いて利用者に送付するといった使われ方をすることがあり、その際に身元が確実であっても固定電話での利用者は切り捨てられることになる。

注釈[編集]

[ヘルプ]
  1. ITU estimates two billion people online by end 2010. Access to mobile networks available to over 90% of world population 143 countries offer 3G services”. ITU (2010年10月19日). 2011年9月10日確認。
  2. : GSM 7-bit default alphabet 英語版:GSM 03.38を参照
  3. 要約:マッコネン氏に英エコノミスト・イノベーション賞=SMS発明で | Business Wire(2008.11)
  4. 拡張メッセージサービス () : enhanced messaging service
  5. Pamela Clark-Dickson (2011年1月26日). “Press release: Global SMS traffic to reach 8.7 trillion in 2015” (English). Informa Telecoms & Media. 2013年7月19日確認。
  6. 日経コミュニケーション. “文字メッセージ・サービス”. ネットワーク大事典. IT Pro. 2013年12月確認。
  7. 携帯各社、SMSの相互接続サービスを7月13日スタート」『ケータイ Watch』インプレス 、2011年6月1日
  8. 不当な高額請求も〜総務省、迷惑ショートメールに注意呼びかけ(ITMedia 2004.5.25)
  9. * NTTドコモSMS拒否設定 | お知らせ | NTTドコモ 以下、SMSを拒否する設定は端末側で設定機能の対応状況による模様。下記サイトには記載されていない
  10. 携帯電話の迷惑ショートメールに規制措置Search China 2008.9.8)
  11. てくろぐ - アンテナピクト問題・セルスタンバイ問題とは何か

関連項目[編集]