クニマス
クニマス | |
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分類 | |
界 | 動物界 |
門 | 脊索動物門 |
綱 | 条鰭綱 |
目 | サケ目 |
科 | サケ科 |
属 | タイヘイヨウザケ属 |
種 | クニマス |
名称 | |
学名 | Oncorhynchus kawamurae Jordan et McGregor, 1925 |
和名 | クニマス (国鱒・國鱒) |
英名 | Kunimasu Black kokanee |
保全状況 |
クニマスとは、マスの一種である。
形状[編集]
ヒメマスに似るが、鰓耙数が異なる。
幽門垂数は49-59本で、鰓蓋数は31-42個。
体色は黒色で、婚姻色はオリーブ色。暗色点を持つもののいる。
月齢1ヶ月で最大 9 個のパーマークが現れ、月齢7ヶ月で消える。
生態[編集]
原産地は田沢湖。
春から夏は水深150m前後に秋から冬は水深225−270mで過ごす。
成熟年齢は3〜5歳で、11〜2月頃に産卵する。孕卵数は800個ほど。
1〜4月頃に卵が孵化し、2〜5月頃に稚魚が湖内に泳ぎ回るようになる。
産卵は深い所で行うというサケ科の中で本種のみで見られる特徴を持つ。
ヒメマスと交雑する事がある。
分類[編集]
本種は、デイビッド・スタア・ジョルダンとエルネスト・アレクサンダー・マグレガーが1925年に新種記載した[1]。
ホロタイプは1922年に川村博十が採取したメスの標本で、米国・フィールド自然史博物館に所蔵されている。
宮地ら(1963)は、ヒメマスの亜種に位置付けた。それ以降、亜種や変種扱いされるようになった。
Nakabo et al., (2012)は、遺伝子的な差や生殖的隔離があることより別種とした[2]。
セトン湖やアンダーソン湖のヒメマスに似ており、Moreira & Taylor (2015)によるミトコンドリア遺伝子解析からはほぼ完全に一致したとの結果が出ている。
歴史[編集]
移入[編集]
1930年(昭和5年)、本種の有精卵が長野県、山梨県、富山県の湖沼に導入される。
1935年(昭和10年)、山梨県の西湖と本栖湖、滋賀県の琵琶湖に有精卵が導入された。西湖には約10万粒の発眼卵が導入されている。
絶滅[編集]
1940年(昭和15年)、玉川に灌漑と水力発電のために酸性の水が流された。
その酸性水に耐えられず、クニマスを含む多くの魚類が死滅し、1948年(昭和23年)にはほぼ死滅状態であった。因みにウグイは酸性水に強い魚類であった為、生き残った。
再発見[編集]
さかなクンがクニマスの絵を依頼された。中坊徹次に勧められ、参考に近縁種である西湖産ヒメマスを取寄せた。
このヒメマスは黒っぽいことに気づき、婚姻色や老成でも無いことから、さかなくんはクニマスかもしれないと思った。
中坊らの研究チームが2010年3月~4月に西湖で調査を行い、クニマスらしき魚が発見された。この魚類は現存する標本と見比べた結果、軟条数は同等であった。また産卵期も一致していると分かり、遺伝子解析からはヒメマスではないと判明した。この事からこの魚類はクニマスであると同定された。
2010年(平成22年)12月15日に再発見した事がメディアに公表され大きな話題になる。
2011年(平成23年)2月22日、日本魚類学会が発行する学術誌「Ichthyological Research」で、論文という形で詳しい事が発表された[2]。
環境省レッドリストでも絶滅から野生絶滅に格上げされた。
人間との関係[編集]
2012年~2013年時点でクニマスの個体数は5000~7500尾とされる。
名称[編集]
種小名の‘‘kawamurae’’の‘‘kawamura’’は『川村』の意で、‘‘e’’はラテン語で『 - の』を意味する。つまり「川村の」という意味で、これは川村博十への献名である。
再発見が行われる以前は、西湖で「クロマス」と呼ばれていた。
保全[編集]
西湖では、外来種のヨーロッパウナギにより卵の捕食されている。
出典[編集]
- ↑ Jordan, D.S.; Hubbs, C.L.; McGregor, E.A. (1925). “Record of fishes obtained in Japan by David Starr Jordan in Japan, 1922”. Memoirs of the Carnegie Museum 10 (2): 93-346.
- ↑ a b Nakabo, T.; Nakayama, K.; Muto, N.; Miyazawa, M. (Feb 2011). “Oncorhynchus kawamurae “Kunimasu,” a deepwater trout, discovered in Lake Saiko, 70 years after extinction in the original habitat, Lake Tazawa, Japan”. Ichthyol Res 58: 180–183. .