キャリー (1976年の映画)
『キャリー』(原題: Carrie)は、1976年のアメリカ合衆国のホラー映画。監督はブライアン・デ・パルマ。
概要[編集]
70年代のオカルト映画・ホラー映画を代表する作品の一つ。ハイスクールの青春ドラマと薄幸の少女キャリーの心理を丁寧に描き、青春ホラーの傑作ともいわれる[1][2]。16歳のキャリー役を演じた当時26歳のシシー・スペイセクとキャリーの母親役を演じたパイパー・ローリーはそれぞれアカデミー主演女優賞とアカデミー助演女優賞にノミネートされた。原作はスティーヴン・キングのデビュー作『キャリー』(1974年)。原作ではキャリーが太っている設定だったり、超能力で街一つを破壊したりするなど、原作と映画には相違点がある。血の赤を基調とした極彩色や凝ったカメラワークはダリオ・アルジェントの『サスペリア』(1977年)と似た面がある。クエンティン・タランティーノのお気に入りの映画の1つであり[3][4]、マーティン・スコセッシは3回も映画館に見に行ったと語っている[1]。
ストーリー[編集]
家では狂信的なキリスト教徒でシングルマザーの母親に虐待され、ハイスクールではクラスメイトにいじめられる孤独な少女キャリーは、初潮を境にテレキネシス(念動能力)を持ち始める。体育教師のコリンズはキャリーをいじめた罰として居残りの授業を受けないと、プロムへの参加を禁止するとクラスメイトの少女たちに言い渡す。いじめに加担したことを反省したスーは、ボーイフレンドのトミーにキャリーをプロムに誘うよう頼みこむ。プロムで束の間の幸せを味わうキャリーであったが、キャリーのせいでプロムに出られなくなったと逆恨みするクリスはボーイフレンドのビリーらとともに恐ろしい悪戯を仕組んでいた。幸せの頂点から一気に突き落とされ、テレキネシスに覚醒したキャリーは壮絶な復讐を開始する。惨劇の後、生き残ったスーはキャリーの家の跡地に向かう。
音楽[編集]
ピノ・ドナッジョが音楽を担当した。プロムのダンス・シーンで流れるバラード曲は「I Never Dreamed Someone Like You Could Love Someone Like Me」(邦題:夢のような恋)[5]。作曲はドナッジョ、作詞はメリット・マロイ。歌っているのはスー役の女優エイミー・アーヴィングの姉で、当時スタジオのセッション・シンガーだったケイティ・アーヴィング[2]。
他作品との関係[編集]
- 『13日の金曜日』(1980年)のラストは『キャリー』を観たトム・サヴィーニが発案した。『13日の金曜日 PART7/新しい恐怖』(1988年)ではジェイソンがキャリーのような超能力少女と対決する。当初はジェイソンとキャリーを戦わせる予定だったが、配給会社間の折り合いが付かなかったため頓挫し、超能力少女との対決という設定を受け継いでPART7が製作された。『フレディVSジェイソン』(2003年)のギブはいつも赤い野球帽を被っているが、『キャリー』でいつも赤い野球帽を被っているノーマのオマージュであるとされる。
- ルチオ・フルチ監督の晩年のホラー作品『怒霊界エニグマ』(1987年)は、いじめられっ子キャシーの生霊が編入生の身体に憑依していじめっ子に復讐をするという、『キャリー』に『サスペリア』(1975年)や『フェノミナ』(1984年)、『パトリック』(1978年)を混ぜたような内容である。
- 大友克洋の漫画作品『童夢』は『キャリー』から影響を受けている[6]。
出典[編集]
- ↑ a b 竹島ルイ「『キャリー』人生の転換点を迎えた3人の女優たち」CINEMORE、2020年1月8日
- ↑ a b なかざわひでゆき「原作者スティーブン・キングが小説版以上の出来と認めた青春ホラーの傑作『キャリー』」ザ・シネマ、2021年2月2日
- ↑ Quentin Tarantino Lists the 12 Greatest Films of All Time: From Taxi Driver to The Bad News Bears Open Culture、2013年8月20日
- ↑ Quentin Tarantino’s Handwritten List of the 11 “Greatest Movies” Open Culture、2013年8月21日
- ↑ キャリー Bates Reunion
- ↑ https://twitter.com/otomo_zenshu/status/1556614536223895552
関連項目[編集]
関連文献[編集]
- ポーリン・ケイル著、畑中佳樹、柴田元幸、斎藤英治、武藤康史訳『明かりが消えて映画がはじまる――ポーリン・ケイル映画評論集』(草思社、2003年)
- 渡部幻主編『70年代アメリカ映画100』(芸術新聞社、2013年)
- 福永保代「ホラー映画『キャリー』(1976) に描かれた母娘の関係にみられる恐怖とモンスター性の所在」『フェリス女学院大学文学部紀要』50号(2015年)
- 宮内妃奈「『キャリー』におけるテレキネシスの脅威」『福岡女学院大学短期大学部紀要・英語英文学』第58号(2022年)
動画[編集]
- 『キャリー』の基礎知識(ブライアン・デ・パルマ監督)超能力ホラー - アルジェント研究会のYouTubeチャンネル
- 『キャリー』と『サスペリア』の意外な共通点、ジェンダー論をこえて - アルジェント研究会のYouTubeチャンネル