ダリオ・アルジェント

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ダリオ・アルジェント(Dario Argento、1940年9月7日 - )は、イタリアの映画監督、脚本家、映画プロデューサー。ジャッロ映画やホラー映画を手掛けたことで知られる。「イタリアのヒッチコック」「ホラーの帝王」「マスター・オブ・ホラー」「鮮血の魔術師」などと呼ばれる。

経歴[編集]

ローマ生まれ。父は映画プロデューサーのサルヴァトーレ・アルジェント、母はブラジル生まれの写真家のエルダ・ルクサルド。高校を2年生で中退して約1年間パリに住んだ後、1957年にイタリアに戻り、新聞社で演劇や映画に関する仕事をした。その後、ローマの日刊紙「パエーゼ・セラ」で映画批評を担当する傍ら、マカロニ・ウエスタンや戦争映画の脚本を執筆した。セルジオ・レオーネの依頼を受け、レオーネとベルナルド・ベルトリッチとともに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』(1968年)の原案を執筆した。

1970年にジャッロ映画『歓びの毒牙』で監督デビューし、続いて1971年に『わたしは目撃者』『4匹の蝿』を発表した。原題に動物の名前を冠した初期の3作は「動物3部作」と呼ばれる。1975年にこれまでのジャッロ映画の集大成的な『サスペリアPART2』を発表した。1977年にホラー映画『サスペリア』が国際的に大ヒットした。動物3部作はエンニオ・モリコーネが音楽を担当したが、『サスペリアPART2』『サスペリア』はプログレッシブ・ロックバンドのゴブリンが音楽を担当した。『サスペリアPART2』はサスペンス映画およびホラー映画史上の、『サスペリア』はホラー映画史上の重要作品であり、アルジェントの最高傑作であると見なされている。原色を生かした色彩美や美少女へのサディスティックないたぶりなどがアルジェント作品の特徴であるといわれる。

1980年に『サスペリア』の続編『インフェルノ』でハリウッドに進出した。1982年にジャッロ映画『シャドー』、1985年にジェニファー・コネリー主演のホラーサスペンス映画『フェノミナ』を発表した。2007年に『サスペリア・テルザ 最後の魔女』を発表し、『サスペリア』『インフェルノ』と続いた「魔女3部作」(三母神3部作とも)を完結させた。90年代以降の作品は『スタンダール・シンドローム』(1996年)と『スリープレス』(2001年)を除き概ね不評を買っている。特に『オペラ座の怪人』(1998年)、『デス・サイト』(2004年)、『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(2007年)、『ジャーロ』(2009年)、『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(2012年)の評判が悪い。

プロデューサーとしてはジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』(1978年)の製作に携わり、非英語圏での配給権を得た。「ダリオ・アルジェント監修版」はロメロ版(「米国劇場公開版」「ディレクターズカット版」)よりも短く、ゴブリンの音楽が多用されている。その後、ランベルト・バーヴァ監督の『デモンズ』(1985年)、『デモンズ2』(1986年)、ミケーレ・ソアヴィ監督の『デモンズ3』(1989年)、『デモンズ4』(1991年)の製作・脚本を担当した。

備考[編集]

  • 幼少期からエドガー・アラン・ポーの作品を読み影響を受けてきたと語っている。映画監督ではアルフレッド・ヒッチコックをはじめイタリアン・ホラーの父マリオ・バーヴァやドイツ表現主義の巨匠フリッツ・ラングからの影響が指摘されている。
  • ともにイタリアン・ホラーの巨匠といわれるルチオ・フルチとは、フルチが『ゾンビ』に便乗して『サンゲリア』を製作した問題などで対立関係にあったが、晩年のフルチに支援を申し出て、『肉の蠟人形』(1997年)の監督・脚本を依頼している。
  • サスペリアPART2』(原題:Profondo Rosso、英題:Deep Red。1975年初公開、1978年日本初公開)は『サスペリア』(原題:Suspiria。1977年初公開、1977年日本初公開)の続編ではなく、『サスペリア』よりも前に製作された無関係な作品である。配給会社の東宝東和が『サスペリア』のヒットを受けて、前作に続編であるかのような邦題をつけた。2009年に紀伊國屋書店から発売されたDVDは『サスペリアPART2 / 紅い深淵』という原題の訳を併記したタイトルになっている。

日本でソフト化された作品[編集]

DVD[編集]

監督作品
脚本・原案・製作を担当した作品

Blu-rayのみ(VHSを除く)[編集]

VHS止まり[編集]

出演作[編集]

関連文献[編集]

  • 矢澤利弘『ダリオ・アルジェント――恐怖の幾何学』(ABC出版、2007年)
  • 山崎圭司編『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ――血ぬられたハッタリの美学』(フィルムアート社、2008年)
  • 安井泰平『ジャッロ映画の世界』(彩流社、2013年)
  • 『サスペリア MAGAZINE』(洋泉社[洋泉社MOOK 別冊映画秘宝]、2019年)
  • ele-king編集部編『決してひとりでは読まないでください──ダリオ・アルジェント『サスペリア』の衝撃』(Pヴァイン、2023年)
  • ダリオ・アルジェント著、野村雅夫、柴田幹太訳『恐怖 ダリオ・アルジェント自伝』(フィルムアート社、2023年)

外部リンク[編集]