自動小銃

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自動小銃(じどうしょうじゅう)とは、小銃のうち自動で排莢、次弾の装填を行う機構を備えたものである。一般的に突撃銃と言われるアサルトライフル、それから派生したバトルライフル、それら二つから選抜射手用に改造された半自動小銃であるマークスマン・ライフルを含み、本稿ではそれらについて説明する。

概要[編集]

初弾の装填こそ手動で行う必要があるが、その後はトリガーを引く毎に発射と排莢、装填を自動で繰り返す機構を兼ね備えている。そのため、ボルトアクション式などの手動装填式の小銃に比べると格段に速い連射が可能となっている。弾薬を自動的に装填・排莢しながら射撃する自動小銃は広義的には機関銃の一種ともいえるが、基本的に自動小銃は機関銃よりも弾数や威力に制限があるものの、軽量で取り回しに優れておりより近接での戦闘に適した銃となっている。なお、自動小銃と機関銃の間を埋めるような分隊支援火器(軽機関銃)も登場しており、アサルトライフルのような中間弾薬を用いて一人の兵士でも運用できるように開発されたものである。

アサルトライフル登場以前の自動小銃はそれ以前の小銃のサイズそのままに自動装填機構が備わったものであり、使用する弾薬も威力こそ優れるものの反動の大きい小銃弾(フルロード弾)であった。そのため、第2次世界大戦のころにおける自動小銃はもっぱらセミオート式が各国の主流となっていた。フルオート射撃も可能な自動小銃の出現は大戦末期であり、本格的な普及はベトナム戦争を経てからであった。

アサルトライフル[編集]

現代的なアサルトライフルの元祖としてはナチス・ドイツで開発されたStG44が挙げられている。この銃の名称であるSturmgewehrが英語圏でアサルトライフルと訳され、同様の設計思想を持つ自動小銃がアサルトライフルとして分類されるきっかけとなった。

アメリカにおいて二次世界大戦中に使用されていたM1ガーランドもとにしてスプリングフィールドM14が開発され、既存のガーランドなどを置き換えたものの、ジャングルなどが主戦場となるベトナム戦争では不適であった。一方、StGと同様の自動小銃を開発していたソ連は戦後まもなく傑作アサルトライフルであるAK-47を開発。アメリカとソ連の代理戦争と呼ばれたベトナム戦争において大量のAKが支援され、威力や射程に優れる自動小銃より取り回しに優れるアサルトライフルの優位性が明らかになったものである。そのため、米軍は新たに制式採用したM16自動小銃を投入、悪条件でも動作するAKには及ばなかったものの、この銃はカービン型のM4などを含め様々な派生モデルが誕生し、米軍のアサルトライフルの象徴にもなっていた。改修型のHK416が今でも使用されている部隊もある。

2020年代においてもアサルトライフルは歩兵のメインアームとして以前使用され続けており、イギリスにおけるL85ドイツH&K G36など5.56x45mmNATO弾を使用するアサルトライフルが各国で採用されている。また、現在のアサルトライフルはピカティニー・レールM-LOKなどのアタッチメントシステムが標準化しており、ACOGなどの光学機器はもとよりフラッシュライトフォアグリップ、さらには一部のグレネードランチャーM320 グレネードランチャー)やショットガンM26 MASS)を取り付けることも可能になっている。

日本自衛隊においては他の国に見られない特徴として伝統的にバイポッドが標準で付いている。これは専守防衛の考えからくるものであり、攻めてくる外敵を陣地から制圧射撃するためのものであるというような考えによるものとされている。最新式の20式でもフォアグリップとバイポッドが一体化したグリポッドが標準装備されている。また、同世代のアサルトライフルに比べて日本人の体形に合わせた最適化がされているといわれているほか、少数生産の都合上かなり高価となっている。

バトルライフル[編集]

初期のアサルトライフルなど、大口径のフルロード弾を用いて連射も可能なものはバトルライフルとして新しい自動小銃のカテゴリに組み込まれている。前述のM14や日本の64式小銃もこのカテゴリに分類され、アサルトライフルで主流な5.56x45mmNATO弾では威力・射程等が不足しているような状況において使用されることが想定されている。特に7.62x51mmNATO弾は5.56mm弾に比べてより大きなストッピングパワーを誇っており、かつて用済みとされたM14が2000年代に近代化されたうえで新たに配備されるなど、交戦距離が比較的長かったイラク戦争などにおいては有効視されていた。

マークスマン・ライフル[編集]

マークスマン・ライフル(DMR)はマークスマン(選抜射手)と呼ばれる歩兵が装備するための小銃とされており、その多くはアサルトライフルやバトルライフルをベースに改良されるものである。M14はバトルライフルのほかにDMRとしても使用されており、DMRとなったM14 DMRにおいてはより精度の良いバレル、ピストルグリップと可変チークピースが採用された銃床、フルオート機構を排してセミオートのみに、光学機器を搭載するためのピカティニー・レールの採用など、近代化と精度向上のための改良が各所に施されている。自衛隊における64式7.62mm狙撃銃は64式小銃のDMR版ともいえるものであり、マークスマンがいない自衛隊においても精度の良い64式をベースに改良された銃が用意されていた。現在は対人用狙撃銃としてM24が配備されているものの、普通科以外ではいまだに本銃を採用しているケースもあるという。

カービン[編集]

自動小銃におけるカービンは本来のカービン銃とその意味を異にする。本来は馬上での取り回しを考慮した小銃をさす分類であったが、現在では自動小銃のうちベースの銃よりも銃長を短くした自動小銃をさす分類となっている。前述のM16のカービンモデルであるM4カービンはM16よりも取り回しの良いサイズでありながらアサルトライフルとして必要な性能を備えており、アメリカ陸軍や海兵隊での主力装備にもなった。特に市街地戦の多い近代の戦場において重宝され、最初からM4並みのサイズで設計されるアサルトライフルもあるほどである(20式小銃など)。一方で銃身を短くしたことによる精度や連射能力(放熱性)の悪化という無視のできないデメリットも多く、すべての主力小銃をカービン化することに疑問の声もある。

余談[編集]

一部の国ではバトルライフルの概念が無かったり、DMRは狙撃銃として分類する例もあり、実際にはここまで細かい分類をしないことも多い。このように細かいカテゴリにこだわるのは軍事評論家や軍事マニア程度である。

関連項目[編集]