眉村卓
眉村 卓(まゆむら たく、本名:村上 卓児(むらかみ たくじ)、昭和9年(1934年)10月20日 - 令和元年(2019年)11月3日)は、日本のSF作家。代表作「司政官シリーズ」で1979年に泉鏡花文学賞を、同年と1996年に星雲賞日本長編部門を受賞している。
経歴[編集]
大阪大学を卒業後、れんがメーカーに勤務する傍ら、SF同人誌・「宇宙塵」に参加し、昭和36年(1961年)に「下級アイデアマン」がSF小説のコンテストに入選してデビューを果たした。昭和40年(1965年)からは専業作家となり、星新一・小松左京らと共に草創期の日本のSF小説界をリードする。昭和54年(1979年)に人類が入植した惑星が舞台の小説である「消滅の光輪」で泉鏡花文学賞・星雲賞を受賞する。昭和62年(1987年)には「夕焼けの回転木馬」で日本文芸大賞を受賞した。
少年少女向けのSF小説も数多く手がけて大ヒットした「なぞの転校生」「ねらわれた学園」などは映画・テレビドラマ化している。平成9年(1997年)に妻が癌で余命宣告を受けたため、それを励まそうと5年後の平成14年(2002年)に死去するまで毎日1話ずつショートショートを書き続けた。亡妻との思い出を振り返った平成16年(2004年)刊行の「妻に捧げた1778話」はベストセラーとなり、その実話が映画化もされている。
また、高校生の頃から俳句にも興味を持っていた関係から、平成21年(2009年)に句集「霧を行く」を刊行し、日本ペンクラブ副会長や大阪芸術大学客員教授、日本SF作家クラブ名誉会員などを務めている。
死去する数年前に食道癌が見つかり、摘出手術を受けた。令和元年(2019年)10月上旬に体調を崩して入院したが、病床においても集大成的なSF小説の執筆を続けたという。令和元年(2019年)11月3日午前4時1分、誤嚥性肺炎のため、大阪府大阪市阿倍野区の病院で死去。85歳没。
作品[編集]
小説[編集]
原則として初版出版。多くが後に文庫化された。短編集は収録作品を変更して発行されていることが多い。
1960年代[編集]
- 燃える傾斜(1963年)東都書房 のちハヤカワ文庫、角川文庫、ハルキ文庫
- 準B級市民(1965年)ハヤカワSFシリーズ
- 幻影の構成(1966年)早川書房・日本SFシリーズ のち文庫、角川文庫、ハルキ文庫
- 万国博がやってくる(1968年)ハヤカワSFシリーズ
- EXPO'87(1968年)早川書房・日本SFシリーズ /(1973年)ハヤカワ文庫、角川文庫
- 天才はつくられる 秋元書房、1968 のち文庫、角川文庫
- わがセクソイド(1969年)立風書房 のち角川文庫
- テキュニット(1969年)三一書房
- ながいながい午睡 三一書房、1969
- 虹は消えた(1969年)ハヤカワSFシリーズ
1970年代[編集]
- 地球への遠い道 毎日新聞社、1970 のち角川文庫、秋元文庫
- まぼろしのペンフレンド 岩崎書店、1970 のち角川文庫、青い鳥文庫
- 時のオデュセウス(1971年)ハヤカワSFシリーズ
- C席の客 ビジネスショートショート(1971年)日本経済新聞社/(1973年)角川文庫
- なぞの転校生 鶴書房盛光社、1972 のち角川文庫、秋元文庫、青い鳥文庫
- かれらの中の海(1973年)早川書房 のち講談社文庫
- 重力地獄 ハヤカワ文庫、1973 のち角川文庫
- 飢餓列島 福島正実共著 角川書店 1974 のち文庫
- サロンは終わった(1974年)ハヤカワ文庫JA(再構成短編集)
- ぼくの砂時計 ショートショート 講談社 1974 のち文庫
- 司政官 早川書房 1974 のち文庫、創元SF文庫
- 産業士官候補生 ハヤカワ文庫、1974 のち角川文庫 「EXPO'87」のスピンオフ作品
- ねじれた町(すばる書房盛光社 1974年 のち秋元文庫、角川文庫、ハルキ文庫、青い鳥文庫
- 二十四時間の侵入者 秋元文庫、1974 のち角川文庫
- あの真珠色の朝を… 角川文庫、1974
- 変な男 文化出版局 1975 のち角川文庫
- 奇妙な妻 1975 (ハヤカワ文庫) のち角川文庫
- 還らざる城 1975 (旺文社ノベルス) のち文庫
- 地獄の才能 1975 (秋元文庫) のち角川文庫、ぶんか社文庫
- ワルのり旅行 1975 (角川文庫)
- 還らざる空 1975 (ハヤカワ文庫)
- ねらわれた学園 1976 (角川文庫) のち青い鳥文庫
- 出たとこまかせON AIR SFジョッキー 立風書房 1976 のち角川文庫
- 鳴りやすい鍵束 徳間書店 1976 のち文庫
- 異郷変化 1976.12 (角川文庫)
- 深夜放送のハプニング 1977.2 (秋元文庫) のち角川文庫
- 泣いたら死がくる 1977.4 (秋元文庫) のち角川文庫
- 通りすぎた奴 立風書房 1977.5 のち角川文庫
- 思いあがりの夏 1977.6 (角川文庫) 『幕末未来人』『幕末高校生』原作『名残の雪』を含む
- 影の影 1977.8 (ハヤカワ文庫)
- 猛烈教師 三省堂 1977.9 (三省堂らいぶらりい SF傑作短編集)
- 枯れた時間 1977.10 (ハヤカワ文庫)
- 閉ざされた時間割 1977.10 (角川文庫) のちハルキ文庫
- 白い小箱 実業之日本社 1977.11 のち角川文庫
- ぎやまんと機械 PHP研究所 1977.12 のち角川文庫
- ぬばたまの… 講談社 1978.3 のち文庫
- 白い不等式 1978.6 (秋元文庫) のち角川文庫
- 六枚の切符 講談社 1978.6 のち文庫
- 消滅の光輪 早川書房 1979.4 のち文庫、ハルキ文庫
- 午後の楽隊 講談社 1979.4 のち集英社文庫
- 滅びざるもの 徳間書店 1979.6 のち文庫
- かなたへの旅 1979.10 (集英社文庫)
- おしゃべり迷路 角川書店 1979.11 のち文庫
1980年代[編集]
- つくられた明日 1980.1 (角川文庫) のち秋元文庫
- 月光のさす場所 角川書店 1980.3 のち文庫
- 一分間だけ ショート・ショート 1980.4 (角川文庫) のち秋元文庫
- ぼくたちのポケット 1980.11 (角川文庫)
- 長い暁 早川書房 1980.11 のち文庫
- 二次会のあと 講談社 1981.1 のち文庫
- 幻の季節 主婦の友社 1981.5 のちケイブンシャ文庫
- 遥かに照らせ 徳間書店 1981.5 のち文庫
- とらえられたスクールバス 1981-1983 (角川文庫) 改題「時空の旅人」ハルキ文庫
- モーレツ教師 1981.6 (角川文庫)
- おしゃべり各駅停車 角川書店 1981.7 のち文庫
- 傾いた地平線 角川書店 1981.9
- 疲れた社員たち 実業之日本社 1982.3
- 黄色い夢、青い夢 1982.7 (集英社文庫)
- ポケットのABC ショート・ショート 1982.10 (角川文庫)
- ポケットのXYZ ショート・ショート 1982.10 (角川文庫)
- 逃げ姫 1983.4 (集英社文庫コバルト)
- 不器用な戦士たち 講談社 1983.12 のち文庫
- ふつうの家族 ショート・ショート 1984.2 (角川文庫)
- 孔雀の街 1984.5 (集英社文庫コバルト)
- ぼくらのロボット物語 岩崎書店 1985.1 (あたらしいSF童話)
- 最後のポケット 1985.6 (角川文庫)
- 月光の底 1985.12 (集英社文庫コバルト)
- それぞれの曲り角 1986.2 (角川文庫)
- 夕焼けの回転木馬 1986.4 (角川文庫)
- 迷宮物語 1986.8 (角川文庫)
- 侵入を阻止せよ 1986.12 (集英社文庫コバルト)
- 職場、好きですか? 26のオフィス・ショートショート 勁文社 1987.2 のち文庫
- 不定期エスパー 長篇青春冒険ロマン 1-8 徳間ノベルス 1988-1990 のち文庫
- 強いられた変身 1988.1 (角川文庫)
- 素顔の時間 1988.2 (角川文庫)
- 引き潮のとき 第1-5巻 早川書房 1988-1995
- 里沙の日記 1988.8 (集英社文庫コバルト)
- それぞれの遭遇 1988.11 (ケイブンシャ文庫コスモティーンズ
- 異世界分岐点 自選日常恐怖作品集 新芸術社 1989.7
- 駅とその町 異色SF小説 実業之日本社 1989.10 「魔性の町」講談社文庫)
- 頑張って、太郎さん 勁文社 1989.12 のち文庫
- こんにちは、花子さん 勁文社 1989.12 のち文庫
1990年代[編集]
- ライトグレーの部屋 1990.6 (集英社文庫コバルト)
- 出張の帰途 祥伝社 1990.12 (ノン・ポシェット)
- 怪しい人びと 1992.3 (新潮文庫)
- ワンダー・ティー・ルーム 実業之日本社 1992.4
- 乾いた家族 1993.6 (ケイブンシャ文庫)
- ゆるやかな家族 1993.10 (ケイブンシャ文庫)
- 駅にいた蛸 集英社 1993.12
- 虹の裏側 出版芸術社 1994.10 (ふしぎ文学館)
- 発想力獲得食 三一書房 1995.9
- 精神集中剤 1998.3 (徳間文庫)
- カルタゴの運命 新人物往来社 1998.11
- 日がわり一話 第1-2集 出版芸術社 1998
2000年代[編集]
- 妻に捧げた1778話 2004.5 (新潮新書) 「僕と妻の1778話」集英社文庫
- いいかげんワールド 出版芸術社 2006.7
- 新・異世界分岐点 出版芸術社 2006.9
- 霧を行く 句集 深夜叢書社 2009.7
- 沈みゆく人 出版芸術社、2011
- 司政官シリーズ(1970年代〜80年代に書かれた同名作品集の再刊)
- 司政官(短編集)
- 長い暁(短編集)
- 消滅の光輪
- 引き潮のとき
- 『無任所要員』シリーズ
- 工事中止命令
- 虹は消えた
- 最後の手段
- 契約締結命令
エッセイ[編集]
- ぎやまんと機械(1977年)PHP研究所 のち角川文庫
- 照りかげりの風景 傑作エッセイ 広済堂出版 1981.12
- 大阪の街角 眉村卓Sembaエッセイ 三一書房 1995.11
句集[編集]
- 霧を行く 深夜叢書社 2009.7
翻訳[編集]
- ストックホルムのひまなし探偵(私立探偵スベントン)オーケ=ホルムベリイ 講談社、1973
- 北極怪盗とさばくの怪職人(私立探偵スベントン)オーケ=ホルムベリイ 講談社、1973
- デパート怪人はにおいなし(私立探偵スベントン)オーケ=ホルムベリイ 講談社、1973
- おばけ屋敷と四つの怪事件(私立探偵スベントン)オーケ=ホルムベリイ 講談社、1973
- ねことり怪人と地下室ギャング(私立探偵スベントン)オーケ=ホルムベリイ 講談社、1973
テレビドラマ化された作品[編集]
- まぼろしのペンフレンド(1974年『まぼろしのペンフレンド』、2001年『幻のペンフレンド2001』[1])
- なぞの転校生(1975年、2014年)
- ねらわれた学園(1977年『未来からの挑戦』、1982年、1987年、1997年)
- 地獄の才能(1977年『未来からの挑戦』)
- 名残の雪(1977年『幕末未来人』、原案協力:1994年『幕末高校生』)
- 密愛のリゾート・種子島(1992年5月4日、フジテレビ系旅情サスペンス『不器用な戦士たち「GGホテル」』)
映画化された作品[編集]
- ねらわれた学園(1981年 監督:大林宣彦、1997年監督:清水厚)
- なぞの転校生(1998年 監督:小中和哉)
- 僕と妻の1778の物語(2011年 監督:星護)
- 名残の雪(2014年『幕末高校生』 監督:李闘士男)