水没車
水没車(すいぼつしゃ)とは、文字通り水に沈んだ車のことである。水に沈んだ車は外見以上のダメージを負っており、一般的に全損扱いなるケースが多い。水没車以外の呼び名として、冠水車や水害車というものもある。
概要[編集]
台風などの大雨による氾濫や津波などの風水害によるものや冠水した道路などに判断ミスで突っ込んだ結果水没車となるケースが多くみられている。一般財団法人日本自動車査定協会よれば車内の浸水状況によって買取査定に三段階のマイナスを定義しており、車内の床面(フロア)まで浸水で三割減、シートの座面まで浸水すれば四割減、ハンドルまで浸水していれば五割減となっているように、基本的に水没車は価値が無い車となっている。そのため中古市場においても普通に流通することは少なく、水没車であることを隠して販売されるか、部品取り用のドナーとして流通しているものが多い。
水没車の特徴[編集]
水没車は設計上ありえない量の水分がエンジンルームや車内に入り込むため、サビやカビ、悪臭が発生しやすいとされている。特にシートや内張にしみ込んだものは根気よく洗浄・乾燥を繰り返す必要もあり、フロアパネル自体にも水が入り込むため車内に対しての洗浄・乾燥も必要不可欠である。その労力は計り知れず、ほとんどの人は廃車にすることが多い。
内装だけでなくエンジンなどもダメージを受けやすく、浸水時にエンジンが燃焼していた場合は空気と一緒に水を吸い込むためよりダメージが大きくなると言いわれている。水は油や空気と違ってほとんど圧縮されないため、シリンダー内に水が入りこむと逃げ場のない水を無理やり圧縮しようとしてしまうことでコンロッドやクランクシャフトが破損することもある。この現象はウォーターハンマー現象と呼ばれて水没車の被害とともに語られるのが多い現象である。また、電装系へのダメージも大きく、浸水してきた水は泥水や海水、汚水など多くのものが混ざった水であるためコネクタやヒューズなどの接点部に入り込み、ショートやリークなどの問題を引き起こすこともある。
このようにほぼフルレストアするような大掛かりな修理となることから、工賃や部品代が自動車の購入価格に匹敵することも珍しくない。特に中古車であれば購入価格より高くなることのほうが多いものである。それだけやっても水没車特有のカビ臭や取り切れなかった水分による結露の発生など、完全に治ることはないといわれている。そのためよほど愛着のある車や希少価値のある車以外は修理されることはないのが現状である。
水没車の修理[編集]
水没車した車を直そうと思ったらまずはバッテリーを外し、ショートを避けることである。また、絶対にエンジンを回してはならない。エンジンを始動させるのはエンジン内への水の侵入がないことが確認できたことが前提条件である。
車内についてはシートを外し、内張をはがしてフロアの金属面を露出させる必要がある。フロア内にたまった泥水などを浮かせて流し、シートや内張は別で洗浄と乾燥を繰り返すなど並行して作業する。必要に応じてダッシュパネルなども取り外し、中を所謂「ドンガラ」にすることもある。
エンジンルームはインテーク類に注意し、泥や草など異物を徹底的に排除する。必要に応じてフロントライトユニットやバンパー、グリル等も外して細かなごみや泥水を除去していく。インテークやエアクリーナーも外し、水が浸入した形跡を見ることでエンジン内部の被害が予想できる。エンジンオイルを抜き、水分が含まれているかどうかをチェックするのも有効である。エンジンルーム洗浄の際はエンジン内部に水が浸入することが無いように必要に応じてマスキング等は必須である。なお、通常の水であれば乾燥させれば問題はないはずなので(真水ならなおよい)泥水や塩分等を抜ききるまで徹底的に水洗いを行う。
すべての洗浄と乾燥が終わったらいよいよエンジン始動である。エンジン内に水が入っておらず、電装系にショート等が発生していなければ再始動が可能である可能性は高い。一方で駆動系にも侵入している可能性は否定できず、場合によってはミッション載せ替えやクラッチ版交換も行う必要がある。