教科書検定制度
教科書検定制度(きょうかしょけんていせいど)とは、教科書について政府の教育省庁が行う検定。
しばしば、出版利権の奪い合いの温床である制度とされる。
概要[編集]
文部科学省によれば、日本での制度の意義として『我が国では、学校教育法により、小・中・高等学校等の教科書について教科書検定制度が採用されている。教科書の検定とは、民間で著作・編集された図書について、文部科学大臣が教科書として適切か否かを審査し、これに合格したものを教科書として使用することを認めることである。
教科書に対する国の関与の在り方は、国によって様々であるが、教科書検定制度は、教科書の著作・編集を民間に委ねることにより、著作者の創意工夫に期待するとともに、検定を行うことにより、適切な教科書を確保することをねらいとして設けられているものである。』と主張し、同時にその必要性として『小・中・高等学校の学校教育においては、国民の教育を受ける権利を実質的に保障するため、全国的な教育水準の維持向上、教育の機会均等の保障、適正な教育内容の維持、教育の中立性の確保などが要請されている。文部科学省においては、このような要請にこたえるため、小・中・高等学校等の教育課程の基準として学習指導要領を定めるとともに、教科の主たる教材として重要な役割を果たしている教科書について検定を実施している。』と主張していて、学校設定科目以外で教科書検定を実施し、検定に合格した教科書は「文部科学省検定済教科書」と記載されている。
自然科学者による批判[編集]
一方で、子供が使っている教科書の内容の酷さに親が呆れて叛旗を翻した事例が米国と日本にそれぞれある。
自ら教科書検定に参加し、その杜撰さを自伝の中で曝露したのがノーベル物理学者のリチャード・ファインマンであり、自ら『ファインマン物理』という教科書を執筆した[注 1]。日本でも、数学者の遠山啓が、娘が使っている教科書の内容を見て、自ら『わかるさんすう』(むぎ書房から現在も復刻出版中)を著したものの教科書検定で落とされ、それでも採択したいと考えた市立小学校が採用しようとしたところ、横槍が入って訴訟沙汰になった事件がある[注 2]。
『わかるさんすう』訴訟を背景に教科書を出版している出版社と検定者との癒着が疑われ、「新しい歴史教科書をつくる会」事件という形で再燃した。
ファインマンと遠山は、ともに「自然数の扱い」と「量と数の関係の扱い」が杜撰であると指摘していたが、どちらも教科書の出版社の関係者や政治家が「わからないふり」を決めこんだためにうやむやにされた。
自然科学の学者では、他に左巻健男が理科に関する教科書検定制度廃止を主張しており、左巻自身も検定済教科書への批判をこめてブルーバックスなどで『新しい○○の教科書』を編纂している。また電気化学者の渡辺正も高校化学の教科書の誤記を多く指摘し同様に『高校で教わりたかった化学』を著している。
議論[編集]
文科省の主張は、教科書検定制度には「教科書の著作・編集を民間に委ねることにより、著作者の創意工夫に期待する」という意義があり、「国民の教育を受ける権利を実質的に保障するため、全国的な教育水準の維持向上、教育の機会均等の保障、適正な教育内容の維持、教育の中立性の確保などが要請されている」という国民の要請に応えることが必要だというものであるが、田中眞紀子が野田政権下で文部科学大臣になったのを誰もが忘れてしまったのか、それとも忌まわしいので記憶の底に封印しているのかのどちらかではないかと考えるしかない。
それともこれは子供を利用した文化的なテロなのだろうか。
その他[編集]
2013年に、大阪府立大学の4回生が出版社を通さずに著した工業高校向け「電気基礎」が教科書検定に合格したことが話題になった[1]。
関連項目[編集]
参考文献[編集]
脚注[編集]
- 注
- 出典
- ↑ 高校で学んだことを自信に思えるように 高校生新聞