巴御前
巴御前(ともえごぜん、生没年不詳)とは、平安時代末期の信濃国の女性武将である。『平家物語』に登場する女性で、強弓を引き、太刀や長刀を振るって戦場を駆けた美女であったと言われている。
概要[編集]
木曽義仲の愛妾として有名な女性である。『平家物語』では木曽義仲が最期を迎えることになる「木曽殿最期」の段において登場する。
伝えられるところによると、巴御前は信濃国木曽谷の豪族・中原兼遠の娘で、木曽で育ったという。義仲とは3歳ほど年下であったとする説がある。兄に義仲の重臣となった樋口兼光・今井兼平らがいる。義仲が大蔵合戦で父の源義賢を失い、畠山重能・斎藤実盛らの計らいで中原兼遠のもとに預けられた際に巴は義仲や兄らと共に木曽で育った。
以仁王の令旨を受けて義仲が平氏打倒のために挙兵すると、巴は兄らと共に義仲に従って挙兵に参加。倶利伽羅峠の戦いで平氏の大軍を壊滅させて義仲は上洛を果たす。しかし、義仲は後白河法皇と良好な関係を構築できなかった上、都落ちした平氏軍を追討できず、さらに京都において乱暴狼藉の限りを尽くしたので評判を落とし、後白河法皇は鎌倉にいた源頼朝に義仲追討の綸旨を発し、頼朝は弟の源義経・源範頼らの軍勢を派遣した。寿永3年(1184年)1月、義仲の軍勢は義経・範頼らの鎌倉軍に敗れ、義仲は京都の粟田口から落ちて琵琶湖畔の打出浜にたどり着いた際に主従はわずか5騎だった。義仲はここで己の最期を悟ると、巴に対して「お前は女なのだから、早く逃げよ。木曽義仲が最期まで女を連れて行ったとは言われたくない」と述べて逃げることを勧めた。巴は義仲と共に死ぬことを希望したが、義仲は許さずに落ち延びるように勧めた。そこに、鎌倉軍の勇将として知られた御田師重(八郎)が現れて、木曽義仲に切りかかろうとした。これを見た巴は義仲に「それでは私の最後の働きをお見せいたします」と述べると馬を走らせ、御田と組みあって遂にその首をねじ切り、捨ててしまったという。そして、巴は鎧を脱ぎ捨ててそのまま落ち延びていった、といわれている。
その後の巴は伝説などによると、義仲や兄の兼平の菩提を弔うために尼となって越中国に移り住んだ、鎌倉軍に捕縛されて鎌倉に送られた、といわれている。後者の捕縛にはさらに伝説が続いており、捕縛された巴は頼朝から死罪を命じられたが、有力御家人の和田義盛が巴のような身体や心の強い女性が欲しいと頼朝に助命と自らの妻にすることを嘆願し、頼朝の許しを得て義盛の妻となり、その間に朝比奈義秀を生んだといわれている。しかし、和田氏は頼朝の死後、北条義時との権力闘争(和田合戦)に敗れて滅亡し、巴は義盛・義秀に義仲の菩提を弔いながら91歳という長寿を全うした、といわれている。ただし、巴が義秀の生母であるという説はあくまで伝説的なものにすぎず、そもそも義秀の生年と巴の捕縛された年自体が全く整合性が無いので、あくまで伝説でしかない。
人物像[編集]
巴御前は「女性ながら武勇に優れた男勝りの美女」とするイメージが現在では色濃い。「いろしろく髪ながく容顔まことにすぐれ」ていた女性であると伝えられており、日本では初めての戦場を駆け抜けた女性武将でもあった。
巴御前が登場する作品[編集]
- 映画
- TVドラマ
- 『新・平家物語』(1972年NHK大河ドラマ 演:古城都)
- 『武蔵坊弁慶』(1986年NHK新大型時代劇 演:大地真央)
- 『源義経』(1990年TBS 演:加納みゆき)
- 『義経』(2005年NHK大河ドラマ 演:小池栄子)
- 古典
- 歌謡曲
- 巴ヶ丘幻想 (三波春夫)
- 小説
- 巴御前(松本利昭)
- 巴御前 (鈴木輝一郎)
- 巴御前 (富田常雄)
- 君の名残を(浅倉卓弥)
- Tomoe Gozen(ジェシカ・アマンダ・サーモンソン) - 巴御前を主人公とする異世界を舞台としたヒロイック・ファンタジー。続編にThe Golden NaginataとThousand Shrine Warriorがある。いずれも日本未訳。
- 漫画