寮
寮(りょう)とは、学校が学生のため、企業や官公庁などで福利厚生の一環などで設置する住居である。学生向けは学生寮、企業の社員・従業員、公務員向けの寮は社員寮あるいは職員住宅・官舎と呼ぶ。
学生寮[編集]
小学校から大学まで広く設置され、学校敷地内や近隣に所在する。
設置目的は教育上のものと遠方からの在学生に対する配慮の2種類に大別され、教育上の理由で学生寮を設置している学校では在学生全員が寮に入ることを義務付けている事もある。(全寮制)
遠方からの入学者で希望すると入寮できる寮を持つ学校でも特定の部活動に所属する場合のみ、スポーツ推薦入学者のみ入寮可能という例は強豪校でよくある例だが、閉鎖的な環境につながりやすく理不尽なシゴキや暴力事案、未成年者による飲酒・喫煙などが発生しやすくなる。
教育上の理由で生徒全員に入寮を義務付けている場合、外出や門限、私物の持ち込みに関する厳しい制限や、食事・入浴・清掃・就寝時間などが厳格に決められている事が殆ど。特待生を除いて相部屋で個室がない事も珍しくない[注 1]。
寮生が自宅に帰れるのは夏休み・冬休み・春休みといった長期休暇のみのところが圧倒的だが、毎週末の帰宅が認められているケースも少ないながら存在する[注 2]。
昭和から平成初頭には中山間地域の公立中学校の多くが生徒向けの寮(寄宿舎)を用意していた。これらの寄宿舎は通学区域が広大な上、公共交通が貧弱で毎日の登下校が現実的ではない地区に住む生徒も多く、それらの地域から入学する生徒向けの設備として用意されていた。しかし少子化やコミュニティバス・スクールバスの運行開始で毎日の登下校が現実的になったなどの理由で寄宿舎を閉鎖する事例が相次ぎ、公立中学校で寄宿舎を持つ学校は激減した。
かつて、旧制高等学校が全寮制であった名残で、旧制高校が由来の一つとなっている大学の多くが敷地内に寮を持っていた。これらの寮の中には、京都大学の吉田寮の様にほとんど改修されないまま現代まで残っているものもあり、老朽化が激しい。なお東京大学の駒場寮も廃墟として有名であったが、2001年に取り壊しとなった。
特別支援学校の寄宿舎[編集]
特別支援学校の中には寄宿舎を設置しているところがある。特に聴覚・視覚障害者が入学できる特別支援学校は設置数が少なく、子供の自宅と学校の距離によっては毎日登下校することが困難になる。そのため、聴覚・視覚障害者を受け入れる特別支援学校を中心に学校敷地内に寄宿舎を併設している。寄宿舎によっては更に肢体不自由、病弱の子供を受け入れていることもある。
寄宿舎には寄宿舎指導員が置かれ、生活指導や自治活動を受け持っている。寄宿舎指導員は教員免許を必要とせず、学校事務員や学校用務員と同じように学校設置者の行う職員採用試験を受験することでなることが出来る。
近年は授業や行事のない週末・休日や夏休み・冬休み・春休みといった長期休暇を自宅療養期間として寄宿舎に入っている子供を家に帰す所も出ている。
社員寮・職員住宅・官舎[編集]
企業が社員・従業員のために用意している寮、社宅がある。ホテルの様に、寝室以外のスペースが共用となっている所は社員寮と呼ばれる。市中の賃貸物件と同じように各部屋に風呂・トイレ・キッチン完備の所は社宅と呼ばれる。(企業によっては市中の賃貸物件形であっても社員寮と呼ぶ事がある)
社宅は遠方出身者のための福利厚生として用意していることが多く、寮費は低廉或いは市中の同格の物件より割安だったり無料というケースも有る。設備や条件はピンキリで、市中の賃貸物件と同じように各部屋に風呂・トイレ・キッチン完備で食事提供なしのところもあれば、食事を提供するところもある。
社員寮は、福利厚生に加え、同期の絆を深くするために用意している場合もある。さらに会社によっては、「集団行動を学ばせる」「自社の色に染める」という前近代的な目的もあり、特に都市部以外では若手社員に全寮制を適用する会社もある。社員寮の場合、個室が用意されている所もあれば、相部屋で風呂トイレ共用という所も珍しくなく、行くところまで行くと風呂なしという例もある。
かつては企業が社宅を自己所有していることが多かったが、長引く景気低迷で不動産資産の売却などが推し進められ、自社所有の寮は少なくなりつつある。現在も寮を用意している会社の殆どは市中の賃貸物件を一括で借り上げ、従業員に貸し出している事が大半である。
公務員向けの官舎・職員住宅も企業の社宅と似たようなものだが、市中の賃貸物件を一括で借り上げるのではなく、自前で建てて自前で管理しているケースが殆ど。
即応性が求められる自衛官の場合、3曹までは駐屯地や基地の敷地内あるいは近隣に設けられた営舎への居住が原則である。ただし30歳以上で2曹以上に昇進するか、家族を介護しなければならないなど差し迫った理由があれば営舎以外への居住が認められている。
脚注[編集]
- 注
- 出典