司法取引 (日本)

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司法取引(しほうとりひき)とは、他者の犯罪の解明に協力する見返りに、自分の刑事処分を軽くしてもらう制度のことである。日本では平成30年(2018年6月1日から導入された。対象犯罪は薬物・銃器関連や贈収賄などであり、捜査手法が大きく変わり組織犯罪捜査への効果が期待される一方、虚偽の供述で冤罪を生む危険性も懸念されている。

概要[編集]

対象犯罪[編集]

贈収賄、詐欺、薬物、銃器犯罪、政令で定める財政経済犯罪(独占禁止法違反、金融商品取引法違反、破産法違反、特許法違反、商標法違反、著作権法違反など)が司法取引の対象となる。

殺人や強盗などの凶悪犯罪は対象にされていない。

取引には容疑者らの弁護士が関与し、検察との合意書面に署名する。法人が処罰対象となるケースでは、企業でも取引は可能である。

取引について[編集]

逮捕された容疑者や起訴された被告が、共犯者らの犯罪を解明するため供述や証拠提出などの協力をすれば、検察官は「起訴の見送り」「起訴の取り消し」「より軽い罪での起訴」「より軽い求刑」などができる。

取引には弁護人の同意が必要で、協議の全過程に弁護人が立ち会うことになる。合意後に容疑者、被告と弁護人、検察官の3者が署名した書面の作成が必要となる。経済的な理由で容疑者に国が弁護人を付ける国選弁護制度も改められ、死刑無期懲役、3年を超える懲役などに当たる事件に限られていた対象を、拘留状が出されていた全ての容疑者に広げている。

刑事司法改革[編集]

大阪地検特捜部の証拠改竄事件などをきっかけに発足した検察の在り方検討会議が、冤罪を無くすために密室での取り調べや供述調書への過度の依存を見直すように提言があり、法制審議会は平成23年(2011年6月厚生労働省文書偽造事件で無罪が確定した村木厚子元局長らが参加する特別部会を設置し、捜査・公判の見直しを議論した。これを受け、改正刑事訴訟法と捜査で電話メールのやり取りを傍受できる対象犯罪を拡大した改正通信傍受法が平成28年(2016年5月に成立した。

経過[編集]

  • 2010年
  • 2011年
    • 3月 - 検察の在り方検討会議が密室での取り調べを見直すよう提言する。
    • 6月 - 法制審議会に特別部会を設置する。
  • 2013年
    • 1月 - 特別部会が取り調べの録音・録画(可視化)の制度化や通信傍受の対象犯罪拡大を提言する基本構想を公表する。
  • 2014年
    • 9月 - 法制審議会が司法取引の導入を含む改正要綱を法務大臣に答申する。
  • 2016年
    • 5月 - 改正刑事訴訟法、改正通信傍受法が成立する。
  • 2018年
    • 6月1日 - 司法取引が導入される。

関連項目[編集]