無期懲役
無期懲役(むきちょうえき)とは、刑罰の一つ。よく終身刑と勘違いされているが、違うので注意を要する。日本では戦前までは無期徒刑(むきとけい)と言われていた。無期刑(むきけい)とも言われる。
死刑という最高刑の次点に当たる刑罰である[1]。ただし、死刑の執行は2022年7月の加藤智大を最後に長期間行われておらず、その後も袴田事件の再審や死刑執行への国内外からの反対意見が繰り返し取り上げられる中で、法務省が重い腰を上げて死刑の執行を再開する気配は全く無い。お隣の韓国と同様、死刑は存在しない刑罰と言っても過言ではない状況となっている。
日本においては死刑が確定してもその執行が全く無いため、死刑囚は一生拘置所で過ごすだけという状況であり、懲役の必要は無い為、基本的には無期懲役囚は死刑囚より過酷な生活を送ることとなる。
概要[編集]
よく、無期懲役は「終身刑である」「10年と少しくらいの懲役で仮釈放される」などという勘違いが日本では多い[1]。しかし、それは間違いである。正確に言うと、昔はそうだったが、現在では違うというべきか。
1960年代までは、確かに無期懲役を受けても12年ほどの受刑期間を経て仮釈放になった例は存在する。しかし、犯罪の増加や凶悪犯罪により、時代が下るにつれて仮釈放までの期間が「15年」・「20年」と延びるようになった。令和に入った現在では、無期懲役の判決が下ると、恐らく「30年」は仮釈放が認められることは無いとされている[1][2]。
仮釈放の決定権は、保護観察官のメンバーで構成された地方更生保護委員会が持っており、仮釈放を検討する場合の基準としては「受刑期間」「受刑期間内における受刑態度」「仮釈放が認められて出所した後に社会生活を送ることができるかどうか」などが判断基準として考慮される。そして、それらを明確に判断した上で仮釈放が認められるのだが、残念だが仮釈放が認められたのに再犯して凶悪犯罪に手を染めてしまった例は確かに存在する。つまり、巷でいわれる「凶悪犯を出所させたら再犯するに違いない」にはきちんと前例は存在するのである。ただ、無期を受けるほどの凶悪犯が再犯に及ぶ確率は1パーセント強であり、残りの98パーセントから99パーセントは犯罪には手を染めずに生活を送っている。つまり、わずかな凶悪犯のために、無期懲役の受刑者がある意味の誤解を受けている、というのは存在するといえるし、仮釈放しないというのは恐ろしい考えだとされている[2]。
ただ、令和に入って日本では有期刑の最長が20年から30年に延ばされた。これは刑期が長くなったことから厳罰化された、と思われているが、実は国の狙いは別にある。現在、無期懲役を受けた受刑者はほとんどが仮釈放を認められることはない。つまり無期はほとんど終身刑に等しくなっており、獄死する例も出てきている。そのため、以前なら無期刑にされていたであろう犯罪者を、25年から30年の有期刑にすることで、無期懲役判決を減少させることが目的なのだという[3]。
日本では凶悪犯罪も減少しているとされ、平成30年(2018年)の無期懲役判決はたったの15件である。有期刑が厳しくなる以前は、無期懲役は1年で100件を超えており、国の狙いは成功したと言える[4]。