佐伯陽介
佐伯 陽介(さえき ようすけ、1919年4月5日 - ?)は、著述家、政治評論家[1]。専門は歴史[2]。本名、佐伯嶺南(さえきれいなん)。1936年迄の旧名は高木嶺南。筆名、佐伯嶺三。元『民主評論』編集長[1]。イラン人民に連帯する会世話人[2]。現代史研究会に所属[2]。
来歴・人物[編集]
東京都豊島区生まれ。1939年、東京高等学校高等科文科卒業。在学中、左翼R・Sグループに参加。佐伯の参加により、読書会グループは革命家の養成を目指す極左的方向に転換したという。1939年4月、東京帝国大学経済学部入学。その直後の6月、唯研事件に関連して各学校の左翼学生グループが弾圧された「インター・カレッヂ」事件で検挙、杉並署に留置された。ここで哲学者の戸坂潤と出会い、多くの事を教えられたという。1940年5月起訴、10月、東京地裁で執行猶予2年懲役5年の判決を受ける。1943年5月、学徒動員による繰り上げで東京帝大経済学部卒業。応召され[1]、陸軍に入隊。フィリピン行きを拒否して脱走を企て[3]、1944年、陸軍刑法違反により5年の刑を受け[1]、陸軍刑務所に投獄された[3]。1945年、敗戦により解放され、年末に日本共産党に入党した。同年から佐伯嶺三(1952年迄)、佐伯陽介の筆名で執筆活動を行う。1946年から1949年、『民主評論』編集長を務めた。1948年、共産党を離脱、以後はノンセクトで活動する[1]。
戦後日本のマルクス主義について、理論の無い実践と、実践から断絶した理論、または党派にもたれかかった理論との両極への乖離が見られるとし、コミンテルン系列と断絶・対抗して生まれた理論的達成成果として、「宇野学派の理論」(宇野弘蔵)、「大塚史学」(大塚久雄)、「丸山理論」(丸山眞男)、「非党的文化人の業績」を挙げている[1]。太田竜によれば、佐伯は20世紀のマルクス主義者について、「マルクス死後に、脳科学、及びフロイトの精神分析学が発達したので、社会科学は脳科学と結びついた脳社会科学でなければならない」のにそれをやっていないと主張している[4]。
1999年7月4日に東京で開催された「土師政雄さんを偲ぶ会」に出席している[5]。
所属団体[編集]
- 東京高校内共産主義グループ(特高の命名)
- 再構築グループ
- 現代革命論研究会 - 1977年12月発足。その直後の1978年1月に佐伯は太田竜と出会い、同研究会で討論を続ける。太田は佐伯の世界史理論を評価しつつも、マルクス主義から脱出できていないとしてその自然観・自然科学観を批判している[4]。太田は2007年の著書『地球の支配者は爬虫類人的異星人である』で「ゼカリア・シッチン=地球年代記、デーヴィッド・アイク=レプティリアン襲来説、そして山本健造=飛騨王朝説、佐伯陽介=多軸重層世界史を援用し、爬虫類人的異星人の実在の真偽に」挑んだという[6]。
- 現代史研究会
- 日本史研究会[1]
著書[編集]
単著[編集]
- 『解説版・共産主義左翼小児病』(民主評論社、1948年)[1]
- 『毛沢東評伝』(民主評論社、1948年)[1]
- 『マルクス主義戦略戦術入門』(佐伯嶺三著、三一書房、1949年)
- 『マルクス主義の再構』(洋陽社、発売:田園書房、1969年)
- 『世界革命の論理』(洋陽社、発売:田園書房、1969年)
- 『世界史テーゼ』(再構築セミナー、洋陽社、1972年)
- 『現代革命と大崩壊――世界史の基礎理論』(新泉社、1979年)
- 『古代共同体史論――非西欧世界と大崩壊』(新泉社、1981年)
- 『マルクス敗れたり――日本史テーゼのために』(新泉社、1982年)
- 『ルソー物語――対話篇』(彩流社、1985年)
- 『紅い銀杏並木――ある小伝』(彩流社、1987年)
共著[編集]
- 『革命理論の革命――マルクス=レーニン主義批判』(太田竜共著、新泉社、1979年)
編著[編集]
- 『世界民主革命年表――対照註解』(田宮滋、芝寛、佐伯嶺三編、松本慎一、古在由重監修、民主評論社、1948年)
- 『共産主義の「左翼」小児病』(レーニン著、佐伯嶺三編、社会書房[マルクス・レーニン主義選書]、1950年)
- 『こんみゅん――日本インタナショナル協会準備号 no.1』(洋陽社、1977年)
- 『こんみゅん――日本インタナショナル協会準備号 no.2』(洋陽社、1977年)
- 『こんみゅん――日本インタナショナル協会準備号 no.3』(洋陽社、1978年)
訳書[編集]
- 『十月革命への道』 (スターリン著、佐伯嶺三訳、民主評論社、1946年)
分担執筆[編集]
- 佐伯嶺三「留置場にて」『回想の戸坂潤』(三一書房編集部編、三一書房、1948年)/佐伯陽介「留置場にて」『回想の戸坂潤』(田辺元ほか著、勁草書房、1976年)
出典[編集]
関連文献[編集]
- 日外アソシエーツ編『市民・社会運動人名事典』(日外アソシエーツ、1990年、185頁)
- 保坂展人『カオスの海を渡るには――世紀末の時代を読む』(群羊社、1994年)