『ツェッペリン飛行船と黙想』事件

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親族中心になってもええで
この記事はその主題が上林暁の親族に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性がありますが、ノートでの議論の必要はありません。(2023年4月)

『ツェッペリン飛行船と黙想』事件上林暁の著書『ツェッペリン飛行船と黙想』の編集著作権をめぐり、故上林の遺族と版元の株式会社幻戯書房の間で争われた裁判の総称である。暁の孫が提起した第1事件と暁の長女(故上林の著作権継承者代表)が提起した第2事件に大別される。[1]いずれにおいても幻戯書房が勝訴した。この事件の最大の特徴は裁判所が著作物性を否定する盗作者を著作者に仕立て上げるために、創作者に対して詐欺を働いたことにある。裁判所はその他に人格否定・名誉毀損誹謗中傷、矛盾挙動、主張の隠蔽・捏造、通説に反する法解釈の適用、手数料の過大請求などさまざまなやり方で遺族に攻撃を加えた。その多くが独自攻撃であるため裁判官の品性と人格がよく分かる事案である。

第1事件の基本事件[編集]

裁判所の目的と手段[編集]

裁判所は『ツェッペリン飛行船と黙想』の編集が孫の研究業績にならないようにした上、他社から再版できないようにしたいと思っていた。しかし幻戯書房は孫が編集した事実を認めた上で創作性を否定していたため、同社の主張を認めて勝訴させたとしても孫の名前を編者として表示した書籍が他社から再版されることを妨げることができない。[2]そこで裁判所は次のような手順を用いて同社に編集著作権を与えた。

  1. 孫が編集(素材の選択と配列)した事実は電子メールを証拠としており争いようがないので、編者である孫に編集著作物性を証明する義務を負わせる。幻戯書房がありふれた選択・配列さえできない者であることが自動的に確定する。編集著作物性を証明しさえすれば編集著作者と認められると孫が錯誤する。そのまま結審させる。
  2. 判決書で孫の主張通り、素材の配列に編集著作物性を認める。孫が編集著作者であること及び幻戯書房が盗作者であることが確定する。
  3. 「孫が編集した」という争いのない事実を取り消し、「誰が編集したか」という問題を蒸し返す。編集の定義を創作とは無関係の行為にすり替える。
  4. 幻戯書房が編集した事実を認めて、編集著作権は孫に帰属しないとの結論を出す。

証拠偽造疑惑を喧伝して信用を傷つけること、単なる“著作権者の代理人”に過ぎない存在であるとして貶めること、研究者としての人格を全否定すること、著作物性を証明したことを後悔させることの4点は嗜虐趣味を満足させる。要するに、争いのない事実を不意打ち的に蒸し返す手口は、幻戯書房よりも裁判官たちにとってメリットが多かった。

1審[編集]

請求棄却判決[3](東京地裁平成25年(ワ)第22541号)東京地方裁判所第47部(高野輝久、三井大有、藤田壮)
孫は「素材の選択・配列の大部分は自分がした、それには創作性がある」と主張したが、幻戯書房は「ありふれていて創作性は皆無」と扱き下ろした。[4]創作性の有無が争点だが、裁判所は「孫が編集したか否か」が争点であるとした(争点すり替え判決=手順2を省略したもの)。そして編集を「ゲラの作成」と定義し、「編集したのは孫でなく幻戯書房」との事実認定により同社を勝訴させた。[5]ゲラの作成者が編集著作者であるならば、出版社があらゆる出版編集著作物の著作者である。

2審[編集]

控訴棄却判決[6](知財高裁平成27年(ネ)第10022号)知的財産高等裁判所第4部(高部眞規子、柵木澄子、鈴木わかな)
両当事者によって創作性の有無が争点であることが再確認され、それ以外の事実は議論されなかった。裁判所は素材の選択には創作性がないとしたが、配列に創作性を認めた。孫が編集著作者になったが、裁判所は「孫が編集著作者であるか否か」として蒸し返した。裁判所は創作性を認めたばかりの配列行為を「希望や意見を述べただけ」と言い換えて創作性を否定した。そして「他人の希望や意見を聞いただけ」を「決定」と言い換えて、創作性を認めた。
また、自由詩「ツエペリン飛行船と默想」について、「幻戯書房の担当者が戦意高揚の詩だと言っていたので、[7]戦争を危惧する詩であるとの説明を解題に入れた」と孫が主張していたが、[8]裁判所はこの主張を隠蔽した上、同社が戦意高揚の詩だと言った事実のみを切り取って公然と摘示・認定し、故上林と孫の名誉を毀損した。そしてさらに「孫は単なる“著作権者の代理人”に過ぎないから編集著作者ではない」という同社の主張を認めて、孫の研究者としての人格を否定した。
幻戯書房は選択・配列を行う以前に故上林の作品を理解していなかった。従って決定したのではなく訳も分からず従っていただけである。同社が実際にしたことは作品収集の手伝い、[9]叩き台となる構成案の作成、途中案の文書化とゲラの作成であり、同社の主張通りそれらに創作性はまったくなかった。要するに、裁判所は創作者の人格と行為を貶め、盗作者を持ち上げることにより「ありふれた配列さえ案出できなかった者だけが創作した」という論理的にありえない事実をでっち上げて判断の根拠としたのである。[10]

3審[編集]

上告棄却決定(最高裁平成28年(オ)第645号)最高裁判所第1小法廷(櫻井龍子山浦善樹池上政幸大谷直人小池裕
裁判所は「詐欺は単なる法令違反であるから合憲」、「人格否定は単なる事実誤認であるから合憲」として上告を棄却した。

第1事件の再審事件[編集]

第1次再審[編集]

共同訴訟参加申出却下判決(知財高平成28年(ム)第10003号)知的財産高等裁判所第4部(高部眞規子、柵木澄子、片瀬亮)
編集の一部をした長女が共同訴訟参加を申し出た事件。複数の裁判で異なる人が同一著作物の著作者と認められても問題ない、として裁判所は認定事実の合一確定の必要を否定し、申出を却下した。[11]
再審請求棄却・再審提起却下決定(知財高平成28年(ム)第10002号)知的財産高等裁判所第4部(高部眞規子、柵木澄子、片瀬亮)
孫が再審を請求し、長女が再審を提起した事件。基本事件において孫は「「ツエペリン飛行船と默想」が巻頭に配置されたのは自分の専門が西洋史だからであり、[12]大山・升田三番勝負の観戦記が巻末に配置されたのは自分の趣味が将棋だからである。すなわち個性が配列に表れている」と主張していたが裁判所はこの主張を隠蔽して判断を示さなかった。裁判所はその行為は「判断の遺脱」ではなく「事実認定等」に過ぎないとして、適法な再審事由と認めず再審請求を棄却した。また、長女は他社から再版する権利を明らかにするため再審を提起していたが、裁判所は訴訟参加を認めず、再審提起を却下した。

第2次再審[編集]

補正命令 知的財産高等裁判所第4部(高部眞規子)
独立当事者参加の手数料は本来1,500円であるところ、裁判所は定額制であると偽って長女に4,000円支払わせた。その後長女が請求を拡張すると裁判長裁判官は突如従量制に変更して21,000円の追加納付を命じた。[13]また、裁判長裁判官は独立当事者参加人・補助参加人の長女に対して、再審事由を記載した書面の提出を命じた。
忌避申立て却下決定(知財高平成29年(ウ)第10050~10052号)知的財産高等裁判所第1部(清水節、中島基至、岡田慎吾)
基本事件及び再審事件での違法行為を理由に、長女が高部眞規子の忌避を申し立てたが、裁判所は詐欺と名誉毀損を犯したくらいでは公平性が期待できない裁判官とは認められないとして申立てを却下した。
再審訴状却下命令(知財高平成29年(ム)第10001号・第10002号)知的財産高等裁判所第4部(高部眞規子、山門優、片瀬亮)
長女が再審事由を記載した書面を期限までに提出する見込みがないとして、裁判所は期限切れを待たずに再審訴状を却下した。
独立当事者参加申出却下判決[14](知財高裁平成29年(ネ)第10067号)知的財産高等裁判所第4部(高部眞規子、山門優、片瀬亮)
特別抗告棄却決定(最高裁平成29年(ク)第979号)最高裁判所第2小法廷(菅野博之小貫芳信鬼丸かおる山本庸幸
訴状却下命令(独立当事者参加関連)を不服とした長女の特別抗告。「独立当事者参加申出により代理権欠缺は自明、そもそも初審者に再審事由を要求するのは裁判を受ける権利(終局判決を受ける権利)の侵害である」と主張したが、裁判所は単なる法令違反として退けた。

第3次再審[編集]

再審提起却下決定(知財高平成30年(ム)第10022号)知的財産高等裁判所第4部(高部眞規子、山門優、片瀬亮)
長女が再審事由を記載した再審訴状を提出したのに対し、裁判所は第三者再審制度を頭から否定して、再審提起を却下した。
独立当事者参加申出却下判決[15](知財高裁平成30年(ネ)第10008号)知的財産高等裁判所第4部(高部眞規子、山門優、片瀬亮)

第2事件[編集]

1審[編集]

補助参加申出却下決定 横浜地方裁判所川崎支部民事部合議B係(飯塚宏、武田美和子、北島睦大)
孫が「前訴で自身が編集した事実を前提として判決が言い渡されたが、本訴で幻戯書房はそれを否定して研究業績を奪おうとしている」、「審理の充実が図れる」として長女側への補助参加を申し出たが、裁判所は法的利害関係がないとして却下した。
請求棄却判決(横浜地裁川崎支部平成30年(ワ)第476号)横浜地方裁判所川崎支部民事部合議B係(飯塚宏、武田美和子、北島睦大)
「前訴で編集著作物性を否定していた幻戯書房は編集著作者ではない、創作者である孫の被代理人である自分が編集著作者である」と長女が主張したのに対し、幻戯書房は反論できなかった。そして「長女は孫の被代理人に過ぎないから編集著作者ではない」とした上で俄かに「自身が編集著作者である」と主張し始めた。長女は「禁反言の法理により、自身が編集著作者であると主張することは同社に禁じられている」と主張した。
判決書で裁判所は長女の禁反言の主張を隠蔽し、代理人である孫が編集したとしか主張していないかのように偽装した。そして自身が素材の選択・配列を行ったという幻戯書房の主張事実を捏造した上、[16]同社が創作したとして長女を敗訴させた。

2審[編集]

補助参加申出却下命令 知的財産高等裁判所第3部(鶴岡稔彦
第1回口頭弁論で孫が補助参加を申し出たが、裁判長裁判官鶴岡稔彦は2名の陪席裁判官に諮ることなく、独断で申出を却下した。[17]
控訴棄却判決[18](知財高裁平成31年(ネ)第10026号)知的財産高等裁判所第3部(鶴岡稔彦、高橋彩、菅洋輝)
長女は1審判決書で隠蔽された自身の主張を繰り返した上で、幻戯書房が本訴で自身が編集著作者だと主張するのは時機に遅れた攻撃・防御であるという主張を追加した。同社は自身が編集著作者であることを否定したことはないと主張したが、前訴で自身が編集著作者であると主張した証拠を提出しなかった。裁判所は「著作物性を否定しつつ、自身が著作者であると主張することに矛盾はない」とし、時期に遅れた攻撃・防御の主張については隠蔽して判断を示さず、幻戯書房が配列を決定したという事実を追認して勝訴させた。[19]

瑕疵の逆用と誹謗中傷[編集]

孫と接触する前、幻戯書房は「上林曉の文学資料を公開し保存する会」の代表の一人を勝手に著作権者の代理人と見なしていた。そして同人から故上林の日記のコピーを受け取り、著作権者の承諾を得ないまま出版しようとした。それを知った孫がやめさせた。このときに同社の担当者は孫を著作権者の代理人と認識したと語っている。[20]同社は自身のこの瑕疵を逆手に取って「孫は単なる“著作権者の代理人”に過ぎない存在だから編集著作者ではない」と誹謗した。[21]これに長女が不快感を表明し、選択と配列に個性がよく表れているとして孫を支持すると、[22]幻戯書房の訴訟代理人が代わった。[23]

この誹謗は争点整理の中で消え去り、実質上取り下げられていたが、知財高裁第4部が掘り出してきて有効な主張として扱い、第1事件2審判決書で不意打ち的に認定した。陳述書を無視された長女は「孫は自身の代理人であると同時に共同著作者である」と主張して再三再審を提起したが、すべて却下された。

そのため仕方なく「孫は自身の単なる代理人に過ぎない」という認定事実を受け入れ、「自身のみが編集著作権者である」という新たな主張事実を掲げて第2事件を提起した。幻戯書房は「長女は孫の被代理人に過ぎないから編集著作者ではない」という循環論法を使って長女を貶めたが、孫が長女の代理人だったことに関し、両当事者の間に争いはなかった。ところが知財高裁第3部は以下のように言った。

長女による本件訴訟は、前件訴訟において孫が敗訴したことを受けて、原告を控訴人とするとともに、孫は控訴人の代理人であったなどとして、実質的には前件訴訟と同様の事実関係の主張を繰り返すものに過ぎず、前件訴訟の蒸し返しであるといわざるを得ない。 --第2事件2審判決書

「同様の事実関係の主張を繰り返している」というのは誤りであるが、それにも増して問題なのは裁判所が「孫の被代理人を僣称している」として長女を中傷したことである。[24]

脚注[編集]

  1. 第1事件の記録は東京地方裁判所に、第2事件の記録は横浜地方裁判所川崎支部にある。
  2. 出版権が設定されていないため。
  3. 第1事件1審判決
  4. 第1事件1審被告第1準備書面。
  5. 但し幻戯書房はゲラを証拠として提出していない。提出したのは初校ゲラの目次に相当するもの(乙19号証)のみである。
  6. 第1事件2審判決。その要旨。
  7. 甲9号証。
  8. 原告1審第2準備書面。
  9. それについて孫が解題で謝辞を述べている。
  10. 幻戯書房が創作したと誤解した専門家は複数いる。例えば中山一郎「表現の創作者」及び金子敏哉「編集著作物の著作者」(いずれも『著作権判例百選』第6版、有斐閣、2019年)。
  11. 著作権関連事件の判決には対世効があるから合一確定の必要を認めるのが通例であり、『地のさざめごと』事件でも共同訴訟参加は認められた。
  12. 以前孫は國學院大学で非常勤講師をしていた。
  13. 長女が請求の一部を取り下げたため、最終的に手数料は1,500円に訂正された。
  14. 独立当事者参加申出却下判決。
  15. 独立当事者参加申出却下判決。
  16. 第2事件1審判決書、5頁。同判決書は終局判決のうち唯一ネットで公開されていない。
  17. 第1回口頭弁論調書、作成者は書記官池田隆。民事訴訟法第44条は決定によって、すなわち合議によって裁判しなければならないと規定している。
  18. 第2事件2審判決。
  19. 1審判決書を数ヶ所訂正しているが、捏造された幻戯書房の主張事実はそのままにしている。
  20. 第1事件乙2号証陳述書。
  21. 第1事件1審答弁書。
  22. 第1事件甲31号証陳述書。
  23. 古畑恒雄(元最高検察庁公判部長)と金田泰洋(いずれもヤエス第一法律事務所所属)が辞任し、北村行夫と雪丸真吾が後を継いだ(但し虎ノ門総合法律事務所所属の同僚弁護士のほとんどが名義を貸して協力した)。
  24. あたかも長女は提訴・控訴するよう孫に洗脳されていて自ら判断をする能力がないかのように示唆して侮辱している、とも解釈できる。いずれにしても判決を言い渡した裁判官たちは懲戒を受けていない。また、意図は不明であるが日本ユニ著作権センター(JUCC)も同じ箇所を引用している。裁判の記録2019下