名誉毀損罪

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
名誉毀損から転送)
ナビゲーションに移動 検索に移動

なんて不名誉なことするねぇ、名誉毀損って云うんですよ!

 - スーツ背広チャンネル

名誉毀損罪(めいよきそんざい)とは、人の名誉を棄損する犯罪である。刑法刑法230条に規定される親告罪である。

条文[編集]

  1. 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
  2. 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

構成要件[編集]

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損することである。

公然とは、不特定多数のものが、認識しうる状態にすることである。実際に認識したかどうかは、問わない。

棄損とは、その人の社会的評価が低下する危険があることである。実際に低下したかどうかは、問わない。

事実の摘示とは、適示した内容に事実が含まれていることが必要である。事実の適示方法に特段の制約はない。

公表しても名誉棄損罪にならないものがあることに留意する。公共性がある場合、公共目的である場合、真実であることの証明がある場合は、名誉棄損罪にならない。

解説[編集]

「○○は高校二年生まで夜尿症寝小便)の癖が抜けなかった」「○○は車の運転が下手でよく事故を起こしていた」など○○を公然と(不特定多数が閲覧可能な公共の場で)誹謗中傷する内容を発信した場合、公共目的で発信内容が真実である場合を除いて、情報発信者は当局による懲役刑禁固刑罰金に処される責任のほか、当事者または遺族から当局への告訴により刑事罰になり得る。また民事では損害賠償責任を負う。ここで「車の運転が下手」とは、事実というより評価の問題であるから『名誉棄損』ではなく、『侮辱罪』に該当するので、誤りである。

対象者が故人の場合は真実に反する虚偽を発信し、故人の名誉を傷つけた場合に罰せられる。

社会的評価を害するおそれのある状態を発生させることで既遂に達する抽象的危険犯である。

親告罪[編集]

親告罪であるため、訴追には告訴が必要となる(刑法232条1項)。

分かりやすく説明すると[編集]

「不特定多数が参照可能な場で他人への名誉を傷付ける(社会的信用を傷つける)行為そのものが日本国刑法では犯罪行為に該当すると定められている」わけである。刑法犯罪は「(法律を)知らなかった」「大したことではないと思っていた」「みんながやっているからぼくもわたしもやった」「ぼくだけわたしだけ罪に問われるのはおかしい」などという『言い訳は通用しない』というに留意する。

適用除外の3要件[編集]

前記のように書かれているが、これでは他人に批判することがすべて名誉毀損罪になるように誤解されてしまう恐れがある。そうだとすると、新聞記事の半分以上は名誉棄損になってしまいかねない。名誉棄損に当たらない3要件があり

  • 情報開示に公共性がある。
  • 公益の目的である。
  • 真実性がある。

を満たせば、免責されるのである。

民事と刑事[編集]

繰り返すが刑法犯罪案件は取り消しても、罪を犯した事実自体は消えることはない。たとえばインターネットに書いた内容を消した場合は「証拠隠滅を行っただけ」(刑法103条-105条の2, 証拠隠滅罪と解釈され、犯罪事実が消滅するわけではない(特にここのような履歴が残るMediaWikiサイトの場合、本当の意味で完全に情報を抹消削除するにはサイト運営者権限を得てデータベースを弄るしか方法がない(記事削除されても一般閲覧者権限で見えなくなっているだけで、書き込まれた情報は全履歴含め全てそっくりそのままデータベース内に格納保存されている))。

逆に言えば告訴状によりて司法当局が動き(当然ながら自身が隠蔽可能な範囲を超えてそれを行った自分自身の個人情報が司法当局内で捜査のために共有され、自身の関連する連絡先各所へ司法当局の名を以て通達され得るので)有罪になった場合は、自身に前科がついたり会社で処罰されたり解雇されるような社会的制裁を受ける可能性が高い。さらに名誉毀損の民事賠償請求訴訟により裁判費用も含む請求賠償金を支払う義務が発生するおそれがある。

しかし、民事事件は訴訟提起が必要であり、刑事事件は警察ないし検察が告訴状または被害届を受理しないと事件化されない。不確かな犯罪では、安易に受理しないから告訴を濫用しない方がよい。

なお、この条文にある「人」は「個人」および「法人(企業、団体等)」を含むから企業等の名誉を棄損しても同じである。

時効[編集]

公訴時効[編集]

刑事訴訟法250条2項6号により犯罪事実の終了から三年まで。

告訴権[編集]

刑事訴訟法235条により犯人(発信者)を特定できてから六ヶ月以内まで。

判例[編集]

名誉毀損罪での損害賠償請求金額は罰金額の数倍から数十倍(~数千万円)に達する事例がある。外部リンクの判例も合わせて参照。

  • 2014年7月22日 - 大津市中2いじめ自殺事件に絡み、デヴィ夫人が自ブログ上に誤って無関係の一般女性の写真を掲載したことで名誉毀損に問われ損害賠償請求訴訟が発生[1]
  • 2010年3月10日 - したらば掲示板にノンフィクション作家の現在の職業を風俗嬢と偽る事実無根の情報を大阪市在住の無職女性が2009年11月1日に書き込み、書き込まれた作家が警察に被害届を提出[2]
    • 千葉県警市川署が書き込みを実施した無職女性を名誉毀損の疑いで逮捕[2]

脚注[編集]

  1. a b デヴィ夫人が謝罪 名誉毀損訴訟、高裁で和解”. スポニチ (2014年7月22日). 2017年4月9日確認。
  2. a b “<名誉棄損>ネット掲示板で作家中傷 45の女を容疑で逮捕”. 毎日新聞. (2010年3月17日 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]