日産・スカイラインGT-R
スカイラインGT-Rとは、日産自動車が生産していた乗用車であるスカイラインに設定されていたグレード名である。S20エンジンを搭載するPGC10とKPGC110を第1世代、RB26エンジンを搭載するR32、R33、R34を第2世代と分類することがある。本稿でもこの分類に倣う。なお、GT-R以外のスカイラインについては日産・スカイラインを参照のこと。
概要[編集]
日産のモータースポーツ史を語るうえで欠かせない存在である。スカイラインを基にレースを前提とした開発がされており、吊るし状態[注 1]でも優れた性能を持つ。特に2世代GT-Rと呼ばれるR32型からR34型まではちょっとしたチューニングでパワーを得やすい車だったため、合法・非合法[注 2]問わずにスピードを求められるステージで重宝されていた。レースで活躍したこともあり知名度が高い車である。そのためアニメや漫画などでも登場することも多く、中古市場の高騰に拍車をかけている。
第1世代[編集]
PGC10・KPGC10型[編集]
ベースグレードのスカイラインと合わせ、ハコスカの愛称を持つ。1969年に発売され、翌年には2ドアクーペをベースとしたKPGC10型が追加された。2ドアクーペモデルはハードトップスタイルのため、Bピラーがないことによる剛性低下が懸念されていた。しかし、ホイールベースを短縮することでボディ剛性を担保しつつ、運動性を高めることに成功している。モータースポーツにおいても1969年の大会において1~3位を独占するなど、その強さを見せつけている。クラス有償も含めた連勝数は46~49連勝であるとされており[注 3]、このスカイラインの強さを語る代名詞ともなっている。
KPGC110型[編集]
スカイラインのモデルチェンジに伴い(C110型)開発されたGT-Rである。通称ケンメリ。ベースグレードにも「GT」の名を冠するグレードがあるものの、GT-Rは専用グリルやオーバーフェンダー、リアスポイラーなどにより差別化を図っている。レース活動をすることなく生産終了を迎えたため、先代と比べると華々しいイメージはないものの、スカイラインやGT-Rの特徴的な丸型4灯テールランプはこのケンメリから搭載されたものである。
第2世代[編集]
BNR32型[編集]
先代のKPGC110の生産終了後、16年後に復活したGT-Rである。今なお「スカイラインGT-R」といえばこのBNR32型、通称R32を推す人が多いほどの人気を誇る。専用設計のエンジンであるRB26DETTを搭載し、自主規制馬力上限の280PSを発揮するエンジンである。四輪アクティブ操舵システムであるスーパーHICASやアクティブトルクスプリット型四輪駆動システムであるアテーサET-S[注 4]など、最強の名に違わない装備が標準装備されている。一方、新開発されたエンジンが鋳鉄製で重く、その他の装備もあるため車重バランスがフロントヘビーになってしまっている。このため、アンダーステアが出やすくブレーキに強い負荷がかかってしまう欠点があった。 なお、モータースポーツにおいては欠点も改善され、デビュー戦となるJTCでワンツーフィニッシュを飾るだけでなく、3番手以降を周回遅れにするなど圧倒的な強さを見せつけた。余りの強さに参加者がこぞってR32を使い、ワンメイクレースのようになってしまうこともあったという。海外のレースでも暴れまくったため、レースのレギュレーションを変えてしまう[注 5]などの実力を見せつけている。
BCNR33型[編集]
──その時、その領域を共にした者だけが 33R、この本質を知るんだ──
R32の後継として開発された新しいスカイラインGT-Rである。R33からニュルブルクリンクサーキットでの入念なテストが行われており、先代のR32と比べてタイムが21秒も上回っている。先代より大きくなったボディと増えた重量、日産・ローレルとのシャーシ共有などのため、R32ユーザーからは不評を買った。当時のカー雑誌などに酷評され、R33を売ってR32を買い戻すユーザーが居るとまことしやかに噂されるほどである。しかし、重くなったボディは高出力に負けない剛性を、長いホイールベースは高速域での優れた安全性を発揮する。大きいボディは空力は空力を優先し、200km/hからキク──など、ピュアスポーツカーとして高い潜在能力を持つマシンであることに変わりはない。このモデルは4ドアもあり、グランドツーリングカーでありながらピュアスポーツカーとしての側面も持つ優れたマシンである。NISMOがコンプリートカーとして発売したNISMO 400Rもこの4ドアをベースにした車も作成されている。なお、このNISMO400Rに搭載されているのはRB-XというRB26DETTをベースにチューニングした専用エンジンを搭載している。一方でこの4ドアモデルがル・マン参戦の足かせとなり[注 6]、ホモロゲーション獲得のため、公認車両として1台のみ制作したのがNISMO GT-R LMである。制作にあたり、トレッド幅もさらに拡大され排気量も2.8Lまで拡大されている。駆動方式も後輪駆動になっている。また、イギリスで登録したため、現地の法律に合わせてテールライトが変更されている[注 7]。モータースポーツにも参戦し、全日本GT選手権などでタイトル獲得などの記録を残すものの、歴代GT-Rと比べると控えめな戦績である。一方、パイクスピークに参戦し(400R)、クラスチャンピオンを獲得しているなどの成果もあげている。また、非公式ではあるがストリートでの最高速チャレンジで使用されることも多かったとか。
BNR34[編集]
先代のR33で不評であった車体寸法を縮減し、ホイールベースは55mm、全長は75mm縮減している。一方で全幅は5mm増、前高は据え置き、重量は30kg増となっている。スカイラインGT-Rとしては最後のモデルであり、当時の日産の技術を惜しみなく注がれている。エクステリアもダイナミックなデザインとなっており、R33の印象を残しつつもより精悍な顔つきに、伝統の4灯テールランプも外側と内側でサイズが変わっている。モータースポーツにおいて、当時のJGTC(GT500)でR34と競っていた車はトヨタ・スープラやホンダ・NSXなど、各メーカーのフラッグシップ車などであり、かつてのR32のような圧倒する戦績ではないものの、クラス優勝やチーム優勝を成し遂げている。
関連項目[編集]
注釈[編集]
- ↑ 納車時そのままの状態から弄っていない状態という意味
- ↑ 合法はサーキットや公道を閉鎖してのラリーなど、非合法は峠や高速道路など
- ↑ 出典によってばらつきがある
- ↑ 通常の四輪駆動制御とは違い、前:後のトルク配分が0:100から50:50までの制御となる。悪路脱出というよりは強大なエンジンパワーを余すことなく路面に伝えつつ、FRの操作性を持たせた四輪駆動システムである。
- ↑ オーストラリアのレースで2連覇達成後、ターボと四輪駆動車が禁止された
- ↑ 当時の規定により、同一車種で4ドアモデルが存在する場合はエントリー不可であったため
- ↑ もともとの丸型テールランプを除去し、角型のテールランプを配置している。なお、ボディに加工していないため、丸い穴の向こうに角型テールランプが存在するような形になっている