罪刑法定主義

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罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ)とは法理の一種であり、ある行為犯罪とし、実行者を犯罪者として処罰するためにはあらかじめ制定された法律によって犯罪と刑罰を規定している必要があるという原則のことである。

概要[編集]

罪刑法定主義の淵源は1215年イギリスで規定されたマグナ・カルタにあるといわれており、1764年チェーザレ・ベッカリーアによる「犯罪と刑罰」により改めて主張された。教育をすることで犯罪の抑止につながるというものであるが、その中で「犯罪を犯す人間はその犯罪によって受ける刑罰をよく知らないか全く知らないからである」とし、刑罰が不確実であることと併せて罪を犯すのだと主張している。当時の時代思潮に逆らうような内容であり[注 1]、その発表には困難を極めたという。その後、ドイツの刑法学者であるアンゼルム・フォイエルバッハが理論として完成させたといわれている。

国家の憲法としては1787年合衆国憲法1791年フランスの憲法に成文化されており、このことが各国へ影響を及ぼし罪刑法定主義が欧州各国に浸透していったとされている。そのため、罪刑法定主義は近代刑法の大原則とまで言われている。

日本においては罪刑法定主義を明確に規定していないものの、日本国憲法31条と39条により罪刑法定主義も規定していると解釈されている。また、大日本帝国憲法においては23条において同様に規定されていたものである。

派生原則[編集]

罪刑法定主義においては以下のような派生原則が存在する。

慣習刑法の禁止
犯罪とその処罰を定めた刑法は法律として規定する者であり、慣習法を基にした刑罰は無効であるとした原則。
類推解釈の禁止
ある事柄について直接規定する条文などがない場合、似たような規定をその事柄に対して適用することを禁止するという原則。[注 2]
遡及処罰の禁止
その時点で刑罰が定められていなかった行為については遡及して罪に問われることがないという原則。
絶対的不確定刑の禁止
刑の種類だけを決め、その量を定めないような刑を定めてはならないという原則[注 3]
刑罰法規適正の原則
単に犯罪を規定する法律の存在だけではなく、その内容が適正なものでなければならないとする原則。その行為を犯罪とする合理的根拠とその犯罪に見合った刑罰が定められていなければならないとされている。

弱点[編集]

罪刑法定主義は法があって初めて犯罪となるものであり、その時点で犯罪として定義されていない行為やより悪質な行為に対して処罰できないという弱点がある。そのため、法律制定時に想定されていないような犯罪が発生した場合、定められている刑罰とその行為の均衡がとられているとはいいがたいようなケースが出ており、法改正のきっかけになることが多い。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 当時はヨーロッパの支配層による封建的な勢力が主流であり、それらを否定するこの書を発表することは比喩や過剰な表現でなく、文字通りにベッカリーアの命が始末されかねないものであった
  2. なお、より広く解釈するとされる拡張解釈は認められている
  3. なお、無期懲役はその刑の量が「無期」であることから不確定刑ではないとされる