法の不遡及
法の不遡及(ほうのふそきゅう)とは、法体系における理念の一つで法令の効力はその法の施行以前に遡って適用されないというものである。
概要[編集]
罪刑法定主義・大陸法に分類される法体系では一般原則として強く支持されている。この原則は人がある行為を行おうとする場合、その行為時の法令を前提としているのであるから、その行為後の法令によって予期していなかった効果を与えられたのでは法律関係を混乱させ、社会生活が不安定になるためである。
なお法の不遡及は一切認められていない訳では無い。内容によっては施行日前の過去のある時点に遡って法令を適用しても国民に直接利害関係が及ばない場合、関係者にとって利益になる場合など遡及適用が認められることがある。しかしあくまでも例外的なもので、強度の公益性が存在しない限り遡及適用は認められない。
最近この原則を知らない或いは無視する人が近年インターネット上などで多く観測されている。
刑罰法規不遡及の原則[編集]
実行時に適法であった行為を事後に定めた法令によって遡って違法として処罰すること、または実行時よりも後に定めた法令によってより厳しい罰に処すことを禁止する原則。
一例として、詐欺の法定刑が懲役または罰金だったのが、法改訂で死刑のみに一本化されても改訂前に詐欺を働いて逮捕・起訴されても改訂前の法定刑である懲役または罰金で処罰される。
また覚醒剤の使用が適法だった時期に覚醒剤を使用した人が後の法改訂で覚醒剤の使用が違法化されても、適法だった時期の覚醒剤使用で罪に問われることはない。
この原則は刑事被告人の利益のためのもので、刑事被告人にとって法の改訂が有利に働く場合(一例:行為後に法定刑が軽減されたなど)は軽くなった方の刑に処される。
こちらの原則も知らない或いは無視する人が近年インターネット上などで多く観測されている。
関連項目[編集]
- 国民情緒法 - 時には法の不遡及の原則すら超越するもの