第三軌条集電方式
第三軌条集電方式(だいさんきじょうしゅうでんほうしき)とは、電車の集電方法の一つである。
概要[編集]
電車用のレールの他に、もう一本電気を流すレールがあり、そこから電車が集電靴で電気を取る方式である。 主に戦前建設された断面積の小さいトンネル内を走る鉄道に対してこの方式が取られた。
長所と短所[編集]
- 長所
- 架線柱を建てる必要がないため、架線柱の倒壊リスクがない。
- 架線集電式に対して、景観を損なわない。
- 低断面トンネルでも無煙化が可能。
- 短所
現在[編集]
地下鉄は、世界的にも第三軌条が多数派である。
日本国内[編集]
- 軌条電圧が750V以下に制限されたため、新規路線ほど深度が深くなる地下鉄でも架線集電式が普及。深度が更に深くなる区間もある鉄輪式リニアでは第三軌条方式の採用例はない。なお、名古屋市営地下鉄東山線などは直流600Vである。
- 加えて、線路に倒れたら肉体で電流が短絡し、死亡するリスクもあり、普及はしなかった。
- 現在は主に東京メトロ銀座線、丸の内線、大阪メトロ、近鉄けいはんな線、北大阪急行電鉄線といった鉄道路線やAGT(新交通システム)に用いられる。
北大阪急行や近鉄けいはんな線が第三軌条なのは、先に開業した大阪メトロ御堂筋線・中央線に規格を合わせたからである。
国外[編集]
- イギリス
- 地上路線でも採用されている。南部、ロンドンより南側に多く分布している。
- ドイツ
- 地上路線でも採用されている。ハンブルク、ベルリンのSバーン(日本で言うと電車特定区間)で直流1200Vの第三軌条区間も存在する。
- マレーシア
- クアラルンプールの都市鉄道の1つであるラピッドKLはすべて第三軌条方式だが、うちクラナジャヤ線は日本にはない鉄輪式リニアとの併用である。
- 中国
- 上海軌道交通16号線などでは直流1500Vの第三軌条区間を採用している。
- CIS国家の一部
- 直流825Vで第三軌条電化されている地下鉄も存在する。
- インドネシア
- スマトラ島の都市パレンバンのLRTでは、狭軌の都市鉄道およびインドネシアで初めてとなる第三軌条方式の採用となった。
- アルゼンチン
- ブエノスアイレス地下鉄B線では、架線集電と第三軌条方式を併用しているが、これは当初第三軌条方式であったもののマドリード地下鉄の中古のVVVF車投入時に架線を張ったためである。
- この他、ウルキサ線の一部が直流600Vの第三軌条方式で、ミトレ線・サルミエント線が直流830Vの第三軌条方式で電化されている。
直通運転[編集]
第三軌条集電方式と架線集電式は、車両対応なしの直通が基本的に不可能で、それが第三軌条集電方式と架線集電式の直通を阻む理由とされる。更に架線電圧も異なる場合、単純な集電装置追加改造では直通不可能なことが多い。そのため、郊外の1500V電化の地上鉄道と地下鉄との相互直通運転が推進されていくにつれ、地下鉄でも架線集電式が普及する結果となっている[注 1]。
第三軌条集電方式と架線集電式が直通できた例として、かつて信越本線の横軽区間が電化された際に、その区間での電化方式が駅構内を除き、第三軌条集電式が主となったため、そこで使用された電気機関車は架線集電式と第三軌条集電方式のどちらも使えるようになっていたことが挙げられる。
現在、近鉄けいはんな線の車両が検査の際にモト75に牽引され第三軌条区間と架線区間を直通するくらいしか実例がない。
一方で、架線集電式と第三軌条集電方式どちらも使える電車も模索され、京急が銀座線と直通しようとした時、改造すれば対応可能な電車を作っており、近鉄は、けいはんな線外での運行用に収納可能な集電靴を開発し特許を出願している。阪急でも大阪メトロ四つ橋線との直通用に構想された。
片方式が集電なし自走の例では、バイモード車両により第三軌条方式と非電化区間の直通を可能にしたものが、海外では存在する。
第四軌条方式[編集]
ロンドン地下鉄の一部路線やミラノ地下鉄1号線では通常の第三軌条から電気を取り、走行用レールの間にある4本目のレールに返されている[注 2]。この方式を利用した三相交流電化も架線集電より困難ではないと思われるが、モノレールやAGT(一部は第5軌条まで設置)以外における三相交流での採用例は世界のどこを探しても存在しない[注 3]。