癌の生存率
癌の生存率(がんのせいぞんりつ)とは、癌を早期発見して治療を開始した場合に治癒できる生存率の高さのことである。医療が進歩したことにより癌の早期発見と治療開始により、癌の治癒が可能なケースは徐々に増加している。特に胃癌・子宮頸癌・大腸癌は検診を受けることが早期発見につながり、早期治療で死亡する可能性を低下させることができる。
乳癌の場合、ステージ1の早期発見で治療を行なった場合、5年後に生存している割合は97パーセント、胃癌の場合はステージ1で87パーセントとなる。これに対し、発見が遅れてステージ4の場合で5年後の生存率は乳癌34パーセント、胃癌はわずか7パーセントでしかなく、治療の開始時期と生存率が大きく関係していることは明白である。
この生存率は癌と診断された人が一定期間が経過した後に生存している割合で、癌医療を評価する指標のひとつとされており、100パーセントに近いほど治療の効果が高いことを示している。癌の部位や進行度、治療法ごとに集計し、癌以外の死亡の影響を除いた「相対生存率」がよく使用されている。早期発見や治療効果の検証に役立てる目的で長期間の健康状態を見る「10年生存率」や新たな治療法の影響を短期間に探る「3年生存率」などがある。
高齢者の場合の対応[編集]
癌は遺伝子の異常が蓄積して細胞が勝手に増殖する病気のため、年齢を経るにつれて発症の危険性が高まり、癌で死亡する人は人口の高齢化と共に増え、平成27年(2015年)には30年前の2倍に当たる約37万人に増加している。うち、65歳以上が85パーセントであり、75歳以上に限っても59パーセントを占めた。
75歳以上になると手術後の抗癌剤投与を省くなど、患者が高齢になるほど積極的な治療を控える傾向がある。早期の胃癌では85歳以上の患者の2割が痛みを和らげる以外は治療なしであり、やや進行した場合では40歳から64歳までの場合は6割から8割が手術と抗癌剤を組み合わせた標準的な治療をしていたが、85歳以上では1割以下、75歳以上では薬を投与しない場合が増えている。薬の副作用や手術による体の負担を減らして痛みを取り除くなど、高齢者の体調にあった治療法を選択する場合が見られる。ただ実際の医療現場では治療の加減や方法に関しては医者の経験に任されており、医学的な根拠が乏しくて高齢の患者にあった治療指針の確立は未だに成っておらず急務となっている。なお、国立がんセンターの統計によると平成20年(2008年)に癌と診断された患者の5年後の生存率に関して、全ての癌の生存率は65.2パーセントであった。
大腸癌や肝臓癌では胃癌と似た傾向になっており、乳癌や前立腺癌では薬物治療をする傾向が伺える。また、85歳以上では癌がある程度進行してから見つかる場合も多く、多くの場合が体調が悪くなってもそれを癌以外の原因だと錯誤して気づいたときに手遅れの場合が多かったとみられている。
癌の5年生存率[編集]
国立がんセンターにおける平成20年度に癌と診断されて5年後に生存していた人の生存率の統計である。
思春期・若年世代の癌について[編集]
15歳から39歳の思春期・若年世代で診断される癌には、血液癌のほか、脳腫瘍や精巣癌、卵巣癌など比較的患者の少ない癌が多い。治療法の研究や医療体制の整備が進んできた小児や中年と違って、この世代は生存率の向上が思うように進まず、「忘れられた世代」とも呼ばれている。他にも後遺症や副作用の様子を長期的に見守る体制が確立していないなど問題が山積している。