徴兵制度
徴兵制度(ちょうへいせいど)とは、国家が憲法や法律で国民に兵役の義務を課す制度である。対義語は志願制度である。
概要[編集]
古代国家で行われた兵役制度 (日本では平安時代)も一種の徴兵制であるが、現代に於ける徴兵とは、国民を強制的に兵士として、兵役の義務を課すこと。そして憲法や法律で「一定の年令に達した国民」に対して「一定の期間兵役を課す」ための組織化した制度である。軍隊に安定的な人材を長期間にわたって供給することが可能だが、国民には大きな負担を強いることになる。なお兵役期間満了後も引き続き軍隊に入隊し、職業軍人として定年まで在籍することも可能ではある。現代も徴兵制度を行っている国の内、約45%の国家で良心的兵役拒否権が認められ、介護・医療・救急などに従事する事で義務を果たしたと見做す事が制度化されている。[1]
徴兵制度は殆どの場合において、徴兵に適した概ね18歳~20歳代の成人男性が対象となり、その中でも適格性を調べる徴兵検査を経て、それに合格した人材からさらに選考を経て徴兵されるようになっている。時代・国家によっては徴兵検査に合格することが名誉で、不合格は不名誉であるという考えが一般化していることがある。
歴史[編集]
古代国家の兵役制度は人民に武器や食料を自弁させるもので、士気は低く、使い物にならなかった。一方、有力な豪族は配下の者に武装させ、君主との契約によってこれらの軍隊を動かした。封建制度の始まりである。しかし、この軍隊も官僚化して士気が低下したのでフランス革命の時に再び人民から徴兵した。武器や食料は国家が負担した。
現代における徴兵制度の意義[編集]
かつての戦争は兵士の人数が勝敗を決すると言っても過言ではなかった。特に陸軍では実際に戦闘を行う兵士だけでなく輸送や調理といったことにも人員を割く必要があった。一方、海軍は専門知識が必要で、長期間に渡る教育を施すことから、すぐに除隊する徴兵制には不向きであった[2]。第一次世界大戦の頃から軍用機、戦車、潜水艦といった技術の進展による兵器の機械化・精密化・ハイテク化は少人数でも十分な性能を発揮でき、徴兵制度で大量の兵士を確保する必要が薄れた。それに兵器のハイテク化は運用技術の高度化・専門化を招き、徴兵した大勢の新兵にこれらの運用訓練の費用が大きな負担になっていった。これらの兵器の運用は専門知識を持った下士官以上の武官が行った。
徴兵された兵士が軍隊にいる期間は長くても10年程度、多くの実施国は2年前後を徴兵期間として定めている。そんな短期間で高度にシステム化された兵器を事故なく動かせるようにすることは難しく、当然敵に安定したダメージを与えられるようにするには1年では到底足りず、足手まといになるだけである。第二次世界大戦では引き続き徴兵による兵士の大量動員が行われ、この矛盾点が明らかになった。そもそも有事が起きた後徴兵制を敷かないと兵力が確保出来ないという時点で戦況がひっくり返ることなど絶望的で、さっさと講和条約に調印すべきという状態なのである。