山本秋

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山本 秋(やまもと あき、1904年5月12日 - 1989年11月11日)は、生協運動家。本名は秋(おさむ)[1]

戦前・戦後にわたって生協運動の発展に尽力した。日本無産者消費組合連盟書記長として1932年の「米よこせ運動」などを指導した。また日本共産党多数派」のリーダーの1人だった[2]。戦後は日本協同組合同盟の結成、生協法試案の起草、川崎生協の結成などに関わった。

経歴[編集]

戦前[編集]

石川県金沢市生まれ[3][4]。1928年東京帝国大学法学部政治学科卒業。在学中の1927年帝大セツルメント消費組合部員。1928年8月柳島消費組合の設立に参加、常務理事・組合長[3]。同年関東消費組合連盟常任中央執行委員[2][3]。1931年1月日本共産党に入党[2]。同年3月日本無産者消費組合連盟準備会を結成、書記長[3]。1932年3月日本無産者消費組合連盟(1933年日本消費組合連盟と改称、略称:日消連)を結成、書記長[3][5]。日消連中央フラクションの責任者[2]。1932年7〜8月の「米よこせ運動」などを指導して活躍[1][3]。同年9月に検挙されたが、1933年3月に釈放された[2]。日消連は1934年末時点で1万2500人を組織していた[6]

「多数派」の結成[編集]

1933年末の共産党中央委員会のスパイ査問事件後、ただ一人検挙を免れた袴田里見中央委員がスパイ摘発のため指示した「党員再登録」をめぐり、全農全会派フラクションと党中央が対立。1934年3月中旬に全農全会派フラクにいる知人の宮内勇が会いに来て、宮内が執筆した党中央のセクト的極左主義・官僚主義を批判する論文を読まされた。袴田とはつい最近まで10ヶ月間も連絡をとりあっており、党員再登録にも応じていたが、袴田が疑わしい目で見てきたことがあったため、宮内論文に全面的に賛同した。3月下旬に宮内らとともに「日本共産党△△××細胞会議の声明」(宮内執筆)を発表し、党中央を批判した[7]。5月1日付の第2次声明では袴田をスパイと断定、5月25日には△△××細胞会議、関西地方委員会、江東地区細胞会議、全協関東地協フラク、全農全会フラク、日消連フラク、中国地方オルグ団有志の7者連名で日本共産党中央奪還全国代表者会議準備委員会(いわゆる「多数派」、「多数派分派」)を正式に結成した[2][7]。これに対し党中央は6月10日付で全農全会フラク、山本秋、江東地区細胞の3者を「スパイ挑発者」として一括除名した。1934年10月初めに検挙[2]。1937年結核の悪化のため執行猶予で出所。1939年厚生省嘱託。のち川崎工場隣組連合会事務局長[7]

戦後[編集]

戦後、消費(生活協同)組合運動の再建に従事[2]。1945年11月日本協同組合同盟(日協同盟)の結成に参加、常任中央委員(初代会長は賀川豊彦)。1946年7月川崎生協を結成、書記長[3]。1947年に日本協同組合同盟常任中央委員として「消費組合」を「生活協同組合」と変えた生協法試案を起草し、これが1948年に制定された消費生活協同組合法の原型となった[1][8]。1948~1956年協同組合研究所の設立・運営に従事し[3]、常任幹事を務めた[1]。1949年共産党に復党したが、1958年に離党[2]。1964年生協研究会の創立で会長、1967年生活問題研究所への改組で理事[3]戸山ハイツ生協などにも関わり、1976年時点で財団法人消費生活研究所顧問、生協運動久友会副会長を務めていた[9]

著書[編集]

  • 『消費者運動と生協運動――歴史的・理論的解明と相互関連性の追求』(生活問題研究所、1971年)
  • 『昭和米よこせ運動の記録』(白石書店[昭和史の発掘]、1976年)
  • 『日本生活協同組合運動史』(日本評論社、1982年)

脚注[編集]

  1. a b c d 久保田裕子「山本秋」、朝日新聞社編『「現代日本」朝日人物事典』朝日新聞社、1990年、1708頁
  2. a b c d e f g h i 寺出道雄「戦前期日本共産党に関する聞き取り稿本」『三田学会雑誌』103巻3号、2010年10月
  3. a b c d e f g h i 塩田庄兵衛編集代表『日本社会運動人名辞典』青木書店、1979年、600-601頁
  4. 『「現代日本」朝日人物事典』(1990年)では鳥取県生まれ。
  5. 日本生活協同組合連合会、生活協同組合運動史編集委員会編『現代日本生活協同組合運動史』日本生活協同組合連合会、1964年
  6. 立花隆『日本共産党の研究(三)』講談社文庫、1983年、141頁
  7. a b c 立花隆『日本共産党の研究(三)』講談社文庫、1983年、163-170頁
  8. 日本放送出版協会編『日本の消費者運動』日本放送出版協会、1980年
  9. 山本秋『昭和米よこせ運動の記録』白石書店、1976年

関連文献[編集]

関連項目[編集]