山崎謙
山崎 謙(やまざき けん、1903年3月2日 - 1990年6月14日)は、日本の哲学者。本名は染谷謙[1]。日本における弁証法論理学研究の先駆者[2]。平易な言葉で哲学を解説して啓蒙的役割も果たした[3]。
経歴[編集]
千葉県生まれ。中学校卒業後、病気療養中にヘーゲル、マルクスの研究に取り組み、尾崎秀実、松本慎一らと知り合う[4]。1930年、早稲田大学文学部哲学科卒業。1932年、早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻終了[1]。学生時代は学生社会科学連合会(学連)の活動に参加し、卒業後は日本労働組合評議会(評議会)系の下部組織で活動する。また唯物論研究会(唯研)に所属し、弁証法論理学の論文を発表する[4]。1938年、日本大学教授に就任。1941年に退職してからは在野の研究者として著述・講演活動を続ける[2]。敗戦直前、治安維持法で検挙された高倉テルが警視庁から脱走した事件により三木清と共に検挙された[4]。
戦後、日本共産党に入党し、居住細胞に所属。民主主義科学者協会(民科)会員、労働者教育協会講師。1961年に訪ソ、1962年に訪中[4]。毛沢東思想の立場をとり、1967年に細胞として日本共産党(左派)埼玉県庄和町細胞名義で造反声明を発表して除名された[4][1]。1976年に山田坂仁らと再度訪中[5]。晩年、「論理を社会変革の武器だとする立場」から三里塚闘争にも参加した[3]。アジア太平洋日本平和連絡会常任理事などを歴任[3]。
著書に『人間変革の論理』(1952年)、『矛盾の論理学』(1954年)、『弁証法入門』(1955年)、『弁証法的な見方と考え方』(1960年)、『弁証法の学び方』(1963年)、『反逆の理論』(1968年)、『弁証法の論理』(1975年)などがある。『矛盾の論理学』『弁証法的な見方と考え方』『弁証法の学び方』などは中国・ソ連などで翻訳されている[4]。自伝として『紅き道への標べ』(1975年)、『変革と反逆の77年』(1979年)がある。
先祖が平将門と関わりがあり、その資料を保存していたことから、将門に関する書籍も執筆している。
著書[編集]
単著[編集]
- 『哲学読本』 厚生閣、1933年/新紀元社、1947年/育生社、1949年
- 『解釈学概論』 東宛書房、1935年
- 『表現学概論』 東宛書房、1935年
- 『国民精神新論――日本観念形態の研究』 東宛書房、1936年/大空社(叢書日本人論)、1997年
- 『次代の理念』 育生社(新世代叢書)、1940年
- 『科学者のための哲学』 育生社弘道閣、1944年
- 『哲学方法論』 岩崎書店(眞理叢書)、1947年
- 『哲学の啓蒙――京都学派批判』 大月書店、1947年
- 『百万人の哲学』 第一出版(建設者文庫)、1948年
- 『日本哲学界の根本性格』 育生社弘道閣、1949年
- 『いかに哲学すべきか』 第一出版、1949年
- 『生きるための哲学』 毎日新聞社(毎日選書)、1949年
- 『新哲学読本』 中央公論社、1949年
- 『人間論』 青木書店(青木文庫)、1951年
- 『現代哲学の解明――その実践的立脚点』 理論社(解明双書)、1952年
- 『人間変革の論理』 青木書店(青木文庫)、1952年
- 『弁証法的唯物論――生きるための智慧』 新科学社(新科学の基礎知識)、1953年
- 『新しい人生知――混迷期の矛盾をさばくために』 新興出版社、1954年
- 『矛盾の論理学――矛盾論の解明』 青木書店(青木新書)、1954年
- 『これからの文章作法』 春秋社(現代の生活技術新書)、1955年
- 『弁証法入門――生きるための哲学の探究』 青木書店(青木新書)、1955年
- 『人生と自然』 新興出版社、1955年
- 『現代をいかに生きるか――新しい人生哲学』 河出書房(河出新書)、1956年
- 『現代社会の発展法則――革命の哲学』 理論社(私の大学)、1956年
- 『人生の発見』 文昭社、1956年
- 『現代を生きる心』 青木書店(青木新書)、1957年
- 『日本現代哲学の基本性格』 文昭社、1957年
- 『新しい考え方』 三一書房(三一新書)、1959年
- 『弁証法的な見方と考え方――予見の論理学』 三一書房(三一新書)、1960年
- 『転換期の人間』 青木書店(青木新書)、1961年
- 『正しい見かたと考えかた』 青木書店(青木新書)、1963年
- 『弁証法の学び方』 三一書房(三一新書)、1963年
- 『思想の構造』 青木書店(青木新書)、1966年
- 『哲学とはなにか』 青木書店(青木新書)、1967年
- 『歴史とはなにか』 法政大学出版局、1968年
- 『平将門――東国の反逆児 日本古代史の発掘』 三省堂(Sanseido books)、1971年
- 『平将門――東国の反逆児』 三省堂、1975年
- 『霞ケ浦湖賊――古代東国のゲリラたち』 新人物往来社、1972年
- 『霞ケ浦湖賊――まつろわぬ人びとの系譜』 改訂版、鹿砦社、1983年
- 『平将門正史――その生涯を讃えて』 三一書房、1975年
- 『紅き道への標べ――わが心の生い立ち』 たいまつ社、1975年
- 『弁証法の論理――変革の武器としての理論』 三一書房(三一新書)、1975年
- 『歴史とはなにか――歴史の本質を探求する』 三一書房(三一新書)、1975年
- 『変革と反逆の77年――山崎謙自伝』 第三書館、1979年
- 『山崎謙哲学著作選集 第1巻 哲学とはなにか・思想の構造』 谷沢書房、1987年
共編著[編集]
- 『人物日本の歴史 4 武士の挑戦』 日本アート・センター編集、高橋富雄、高野澄、山田宗睦、今東光、檀一雄共著、小学館、1975年
- 『反逆の理論』 編著、青年出版社、1968年
- 『予見と実践――入門弁証法論理』 八木晃介共著、たいまつ社(たいまつ新書)、1977年
脚注[編集]
関連文献[編集]
- 佃實夫ほか編 『現代日本執筆者大事典 第4巻 (人名 ひ~わ)』 日外アソシエーツ、1978年
- 戦後革命運動事典編集委員会編 『戦後革命運動事典』 新泉社、1985年
- 平凡社教育産業センター編 『現代人名情報事典』 平凡社、1987年
- デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説