小林彌六
小林 彌六(こばやし やろく、1933年12月13日[1] - 2024年)は、経済学者。筑波大学名誉教授。専門は現代資本主義論、現代社会主義論、新従属理論[2]。政治学者の小林正弥は息子[3]。
経歴[編集]
長野県生まれ[4]。長野県諏訪清陵高等学校卒業[5]。1956年東京大学経済学部卒業。1961年同大学大学院社会科学研究科博士課程修了[4]。学部で鈴木鴻一郎の演習、大学院で宇野弘蔵の演習に参加[6]。宇野の定年退官後は鈴木鴻一郎の演習に参加。博士課程在籍中に鈴木鴻一郎編『経済学原理論(上・下)』(東京大学出版会、1960-1962年)の執筆に参加。
1961年立正大学経済学部講師[7]、助教授を経て[8]、1969年教授[4]。1972年「流通形態論の研究」で経済学博士(東京大学)[9]。この間、東京教育大学非常勤講師(1966-74年)、法政大学経済学部非常勤講師(1969-72年)も務めた[7]。1974年筑波大学社会科学系助教授[4]、1976年教授[10]。1997年退官[11]、名誉教授[12]。筑波大学退官後、明海大学経済学部教授、国際地球環境大学客員教授、和光大学講師[2]、秀明大学講師[13]。
人物[編集]
もともとは宇野学派[15][16]のマルクス経済学者であったが[17][3]、労働価値説や史的唯物論に疑問を感じるようになり、新しい経済学として「友愛」を根本的な経済的理念とし、資本主義と社会主義に代わる理想社会の実現を目指す「友愛経済学」(ユートピア経済学)を提起した。また聖徳太子の平和主義と徳義の思想を評価した[3]。息子の小林正弥は「私は若年次に父と議論して、マルクス経済学の誤謬を明示するように激励し、父はそれを受けて新しい経済学を提起した」「この「友愛」の理論は、私自身の「友愛世界」の議論(『友愛革命は可能か』平凡社新書、2010年)と呼応している」と述べている[3]。
『朝日ジャーナル』『国会月報』『経済評論』などに時局・政策に関する論考を執筆。村松祐羽編『アクエリアス革命 #004 黄金時代を迎える地球の新生』(たま出版、1988年)にも執筆しており、版元は同書を「新党ブーム・政界再編の起爆剤となった新理論欲望経済の終焉。ニューエイジワールドの本格的社会科学理論。」と紹介している[18]。著書『新生日本への道――政界再編成に提言する』(御茶の水書房、1992年)では「既成政党の枠を超えた新党結成」「ハト派の保革大連合による民主・平和政権獲得」を呼びかけた。同書のはしがきで「最後にまた本書の第一章をはじめ、本書が成立するまでにさまざまな形で甚大かつ真摯な助言と協力を頂いた理念哲学協会(ないし研究会アカデメイア)主宰、大泉瑞鳳氏にこの機会に厚く感謝したい。とりわけ氏の哲学的ないし政治学的な示唆に負う処は大きい」と述べている。
著書[編集]
単著[編集]
- 『経済学批判体系の生成』(御茶の水書房、1967年、改装版1978年)
- 『流通形態論の研究』(青木書店、1969年)
- 『価値論と転形論争』(御茶の水書房、1977年)
- 『経済原論』(御茶の水書房、1978年)
- 『現代資本主義分析(上・下)』(御茶の水書房、1979-80年)
- 『資本主義と社会主義――停滞と苦悩』(御茶の水書房、1981年)
- 『新生日本への道――政界再編成に提言する』(御茶の水書房、1992年)
- 『大連・旅順・203高地――瀋陽の観想 その現在と過去のはざまで』(文明・文化研究所、1992年)
- 『新ユートピア経済学――友愛世界への道標』(たま[New paradigm series]、1993年)
- 『友愛主義宣言――『共産党宣言』はこう書くべきだった 友愛世界実現への道』(たま[New paradigm series]、1995年)
- 『聖徳太子に学べ』(ごま書房、1999年)
- 『二十一世紀の新経済学――スミス・マルクス・ケインズを超える新時代ポスト・モダンの経済学 友愛世界への道標』(文芸社、1999年)
- 『新しい経済学と世界観』(春風社、2001年)
- 『いま、聖徳太子の知恵が未曾有の国難を救う』(ごま書房[Goma books]、2002年)
共著[編集]
- 『経済原論(2)』(三輪春樹、佐藤公俊、松崎昇、宮嵜晃臣、長谷部孝司共著、学文社[シリーズエコノミックスQ&A]、1987年)
出典[編集]
- ↑ 総合大学問題研究所編『日本大学大鑑 1977年版』日本学術通信社、1977年、750頁
- ↑ a b 新しい経済学と世界観 紀伊國屋書店
- ↑ a b c d 小林正弥「利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(89)2ページ」佼成新聞、2024年9月5日
- ↑ a b c d 小林彌六『価値論と転形論争』御茶の水書房、1977年
- ↑ 『東大人名録 官公庁編 昭和44年度』東大卒業生名簿編纂委員会、1968年、647頁
- ↑ 小林彌六『経済原論』御茶の水書房、1978年
- ↑ a b researchmap
- ↑ 小林彌六『経済学批判体系の生成』御茶の水書房、1967年
- ↑ CiNii 博士論文
- ↑ 筑波大学企画調査室編『筑波大学年次報告書 昭和51年度版』筑波大学、1979年、74頁
- ↑ 『筑波大学名誉教授の会会報』第8号(PDF)2001年12月
- ↑ 筑波大学名誉教授(2024年6月26日現在)(PDF)筑波大学
- ↑ いま、聖徳太子の知恵が未曽有の国難を救う 紀伊國屋書店
- ↑ 小林正弥「利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(89)1ページ」佼成新聞、2024年9月5日
- ↑ 関根猪一郎「戦後価値論論争の展開――宇野・久留間論争の系譜を軸として」『経済科学通信』第34号、1982年3月
- ↑ 福富正実「現代社会主義論争の展開と宇野経済学の自己破綻について(1)宇野弘蔵氏の取得様式論抜きの経済学原理論と《社会主義》学説」『阪南論集 社会科学編』第19巻第3巻、1984年1月
- ↑ 新しい経済学と世界観 春秋社
- ↑ アクエリアス革命 版元ドットコム